装(36)第1982号 令和4年11月29日(火)発行 第3種郵便物認可BX進展への提言体制整備ピール【筆者略歴】1974年3月、東京大学工学部都市工学科卒業。同年4月、建設省入省。都市局下水道部下水道事業課配属。1987年西ドイツカールスルーエ大学客員研究員、1991年京都府下水道課長、その後、建設省下水道事業課建設専門官(予算総括)、同下水道事業調整官、東北地方整備局企画部長、国交省下水道事業課長、国交省下水道部長、日本下水道事業団理事、日本下水道事業団理事長(公募による選任)、㈱NJS取締役技師長兼開発本部長等を歴任。2022年3月より㈱NJSエグゼクティブ・アドバイザー(常任特別顧問)。2022年5月より一般社団法人日本下水サーベイランス協会副会長。著書に「21世紀の水インフラ戦略(理工図書 書き下ろし)」がある。 yoshihiko_yato@njs.co.jp 微生物は、何万種かが既に発見されていますが、地球上に存在する微生物の0.1%が発見されているに過ぎないと言われています。安全性の観点からは、ゲノム解析技術等を使いながら、まずは、素晴らしい効能を発揮する新たな微生物を探索・発見し、その後、ゲノム編集を考えるという手順が良いでしょう。4.下水道インフラ界における 上記、下水道インフラ界におけるBXの進展により、下水道インフラは大きく変わると考えられます。その実現に向けての施策・道筋として、以下の三点を提言したいと思います。①異業種メンバーとの連携 従来は交流のなかった素材メーカーとしての化学メーカー、石油化学メーカー、食品メーカー、バイオ技術では最も進んでいる医薬品メーカー、化学界・医学界等と、技術開発、製品開発、製品流通、製品消費等について、連携が必須です。大学、民間だけでなく、国等官との連携・官の支援も必要です。② 下水道界挙げての技術開発支援、 技術開発、実用化に向けての人的面・費用面の支援が必須です。また、組織体制の整備も必要でしょう。具体的には、かつて、建設省下水道部が主導して大きなプロジェクトを組んだ「バイオフォーカスWT」(バイオテクノロジーを活用した新排水処理システムの開発プロジェクト/1985~1989年/民間企業22社参画)、「SPIRIT21」いと考えます。究極には、それを目指すべきではないでしょうか。人間の体を通ってきたものから製造されるからこそ「安全で最適な効用を発揮する医薬品」、将来、きっと見つかるのではないでしょうか。(2) 水処理・汚泥処理(汚水・汚泥の生物処理)の最適化に向けてのパラダイムシフト BXの活用により、活性汚泥微生物相の確認と最適化が可能となると考えます。ゲノム解析・編集等を活用すれば、従来の10倍の効率で水処理が可能となることも夢ではないと思います。汚泥の消化プロセスの最適化も可能でしょう。(3)微生物燃料電池の実用化 現在は、まだ、実証実験レベルの微生物燃料電池ですが、ゲノム解析・編集等により、従来とオーダーの違う発電量を達成することが可能と考えています。脱炭素にも大きく貢献する素晴らしい技術となる可能性があります。(4) 下水サーベイランスの社会実 BXの一環としての「下水サーベイランス」を活用して、ウイルス・細菌等による感染症に対する都市の危機度・安全度の把握と、危機情報の発信を受けての素早い的確な対応が可能となると考えられます。こうした「下水サーベイランス」の社会実装が進むことが期待されます。(5)下水汚泥の肥料化の促進 合成生物学等により、下水汚泥の肥料価値の最適化が今後図られると考えられます。それにより、下水汚泥の有機肥料としての活用促進が期待されます。(下水道最先端技術開発プロジェクト/2002年~)のような国主導で異業種を巻き込んだ学官民連携の大規模技術開発プロジェクトの立ち上げが望まれます。③ 国民の理解へ向けての幅広いア 下水道の素晴らしいポテンシャル、技術の進化と安全性等について、国民へのアピールが必要であると思います。こうしたことにより、下水道への理解が深まり、また、下水道の地位向上に繋がると思います。5.おわりに 上で述べましたように、「カーボンニュートラル」そして、「バイオによる第5次産業革命」に向けての世界の大きな潮流の中、下水道インフラは、今後益々、その役割を拡大し、レゾンデートル(存在意義)を高めていくことになるでしょう。11月初旬に、下水サーベイランス業務の関係で、札幌市役所下水道河川局にお伺いしたとき、荻田葉一局長さんが、「下水道は本当に奥深くて、おもしろいですね。局長で4月に就任するまで下水道の仕事を直接担当したことがありませんでしたが、多様な役割・ポテンシャルに驚きました」とおっしゃっていたのが、強く印象に残っています。また、荻田局長さんから「全国の政令市の方々等、下水道関係者の皆さんは、新参者の私をすぐに優しく受け入れてくださいました。下水道界は、つながりが強く、暖かくアットホームな世界ですね」とおっしゃっていただいたのは、下水道古参の私にとって本当に嬉しい言葉でした。
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