第3種郵便物認可 第1977号 令和4年9月20日(火)発行(35)3.「ジョブ・クラフティング」 「エンゲージメント」を高めるための重要な取組として、「ジョブ・クラフティング(Job Crafting)」が注目されています。どのような状況下でも、やる気を高めるためには、「自分が主体となって、この仕事に取り組んでいる」との意識が必要です。そのような意識を高く持って仕事にのめり込む(エンゲージメント)ためには、仕事の中に、自分で考え、作り上げる部分が必要となります。これが、「ジョブ・クラフティング」です。「ジョブ・クラフティング」とは、従業員一人一人が仕事の捉え方や業務上の行動を自分自身の意思で修正・再定義することで、やらされ感のある仕事を、働き甲斐のある仕事に変容させることです。その変化により、「エンゲージメント」が高まり、従業員は、仕事の有意義感や満足感を得られ、企業は生産性の向上や従業員の定着率向上を期待できます。 「ジョブ・クラフティング」には、次の三つの視点があります。①作業クラフティング 仕事のやり方を工夫して、仕事4. 下水道界の発展に向けて―6つの重点検討課題への対応を5.おわりに 私事で恐縮ですが、2022年4月29日、令和4年春の叙勲で、日本国天皇名で、「瑞宝中綬章」という勲章をいただきました。大変、光栄なことですが、何より私自身最も驚いていることは、叙勲を受けて数ヵ月、自分自身の考え方が大きく変化したことです。「感謝」と「謙虚さ」の気持ちが自分の中で大きく拡がりました。 歳をとって、今頃になって、気付くとは、我ながら情けない感じですが、叙勲に全く関心のなかった中で、受章して、友人・知人・先輩・後輩等、産学政官ほか幅広い分野のびっくりするほど多くの方々から、祝電・お祝いの言葉等をいただき、私自身の考え方が大きく変化しました。「今までどれだけ多くの方にお世話になったことか」「今まで自分で政策を立案し、施策・成果を実現してきたと、うぬぼれていたが、皆様の助けがなかったら、何一つできなかった」と痛感したのです。そして、「本当に、皆様に感謝、感謝しかない」と気付いたのです。 多くの方から、お祝いの言葉等をいただきましたが、私自身は「叙勲」で、お上(天皇・政府)からすでに「お祝い」されているわけで、「皆様には、逆に、私から感謝の言葉をお伝えするのが筋だなあ。逆だなあ」と思いました。現在、時間をかけて少しずつ、感謝を申し上げたり、感謝の手紙等を出したりしているところです。 私自身、建設省、国土交通省、㈱NJS等で長い期間、仕事に携わってきましたが、まさに、組織と私の間の相互の信頼・期待感をベースとした、「エンゲージメント」の高い関係で、ずっと仕事をさせていただくことができたことが、叙勲に繋がったと思います。その間、一緒に仕事をさせていただいた、また、現在も共に仕事に携わらせていただいている国土交通省・㈱NJSの皆様をはじめとした、産学政官の多くの方々に心から感謝を申し上げます。の内容の充実を目指します。②人間関係クラフティング 仕事上での人への接し方、コミュニケーションを工夫して、良好な人間関係を築き、仕事に対する充実感を高めます。③認知クラフティング 仕事の意義等に関する捉え方や考え方を再認識・再構築し、仕事にやりがいを持てるようにします。 こうした「ジョブ・クラフティング」を進めるポイントとしては、以下があります。ⅰ. 「周囲の空気を読む」といった自己規制を解除する。ⅱ. 失敗に寛容となり、チャレンジ精神で臨む。ⅲ. 常に変化の余地をウォッチし、検討を加える。 「骨太の方針2022」で提示されている政府の重要対応課題は、①新型コロナウイルス対策、②物価高騰対策、③防災・減災・国土強靭化、④PPP等官民連携、⑤人への投資、⑥科学技術・イノベーションへの投資、⑦スタートアップへの投資、⑧GXへの投資、⑨DXへの投資―の9点です。その他、大きく打ち出していませんが、防衛力強化があります。 この10テーマに下水道インフラは、大きく関わっています。10テーマを受けて、下水道インフラ行政は、今後、以下の6つの重点検討課題に積極的に取り組んでいくべきと考えます。(1) 新型コロナウイルス対策では、下水サーベイランスの社会実装(2) 物価高騰対策では、肥料の高騰に対する下水道からのリン回収の促進と農林水産省と連携しての農協等販路の恒久的確保(3) 国土強靭化では、都市浸水対策の強化と大規模地震・噴火対策への対応準備(4) 官民連携では、下水道コンセッションの先行事例の横展開、官民連携の促進に繋がる交付金制度の改革、提案者へのインセンティブを付与した民間提案制度の拡充等(5) GX関連では、ⅰ.下水処理場の放流口の落差を活用した全国の下水処理場の放流口での小水力発電の義務化、ⅱ.活性汚泥法等水処理プロセス及びコンポスト化等を含む水・汚泥処理トータルプロセスの抜本的見直し検討(6) DX関連では、ドローン等ロボティクスやセンサーを活用しての次世代メンテナンスへの転換 こうした新たな方向に向けての技術開発・イノベーションの促進、下水道中長期ビジョンの改訂、法制度の改正、施設設計・施設維持管理の基準見直し等に国・自治体・学会・産業界挙げて、チャレンジすべきと考えます。その際、「ジョブ・クラフティング」により、各組織での「エンゲージメント」を高めて、産学官一丸となって、ポジティブに対応していきたいものです。
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