下水道の散歩道 第34-63回
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しています。 今回の社会資本整備審議会の「インフラマネジメントの展開」という打ち出しの中で、私が注目するのは次の3点です。ア .従来の「整備」に重点をおいた姿勢から「管理の最適化」・「経営的管理」と「マネジメント」に視点・力点を移したこと。イ .メンテナンス分野を中心に新技術への期待、デジタル化によるブレークスルー(デジタルトランスフォーメーション)への期待を大きく打ち出したこと。ウ .インフラのストック効果を最大化するため、インフラの多面的・複合的利活用(マルチユース)を打ち出したこと。下水道の散歩道㈱NJS 取締役 技師長 兼 開発本部長(公社)全国上下水道コンサルタント協会 企画委員長谷戸 善彦1.社会資本整備審議会の動き 8月21日、国土交通省の社会資本整備の将来の方向性を決める最も重要な会議である「社会資本整備審議会」の計画部会が、交通政策審議会の交通体系分科会計画部会と合同で開催されました。この中で、国土交通省は、持続可能で質の高い社会資本整備を実現するため、2021年度から、「インフラマネジメント」を展開する方針を打ち出しました。 インフラにマネジメントの視点を取り入れ、「管理の最適化」と「経営的管理」を推進するとしています。具体的には、「管理の最適化」では、①予防保全への本格的な転換、②メンテナンス分野の新技術活用、③既存インフラの集約・再編、を挙げています。また、「経営的管理」では、①情報技術・新技術の活用、②インフラ空間の多面的・複合的な利活用、を打ち出しています。 インフラに「マネジメント」の視点を取り入れて、管理の最適化と利活用の徹底を進めることで、将来の利用を見据えた質の高い整備を可能にし、それによってさらに管理の最適化と利活用が進むという「正のスパイラル」を生み出そうというものです(図参照)。  背景には、ⅰ 国民の安全・環境・暮らしを守るインフラ機能のサステイナブルな維持、ⅱ 今後急速な増加が見込まれるインフラメンテナンスコストの低減、ⅲ インフラを活用した新たな社会的価値の創出、があります。 この考え方を、策定作業中の第5次社会資本整備重点計画に位置付け、2021年春の閣議決定を目指[第36回](34)第1927号 令和2年9月22日(火)発行 図:新たな時代を築く持続可能で質の高い社会資本整備(正のスパイラル)(出所:国土交通省「社会資本整備審議会」第45回計画部会の資料より作成) 第3種郵便物認可イラスト:PIXTA 下水道インフラは、道路・河川・砂防・都市公園等の他の社会インフラにない「経営的視点」を従来有しているため、「インフラマネジメント」について、一歩も二歩も先行しています。今回、新型コロナウイルスパンデミックによる今後の財政状況の不確実性や、一方で災害の多発・激甚化への対応の重要性に鑑み、「賢く投資・賢く使う」のスローガンの下、他の社会インフラにおいても、「マネジメント」の必要性・重要性が打ち出されました。前記アについては、下水道インフラは、以前より強く意識していましたが、イの「メンテナンス分野を中心とした新技術開発」・「デジタルトランスフォーメーション」と、ウの「インフラのマルチユース」は、下水道インフラ関係者にとっても、今後、注視すべき視点です。 社会資本整備審議会は、国土交通行政にとって、最も重みのある審議会です。下水道インフラ行政にとっても、頂点に位置付けられる「今後の行政の方向を決定づける会議」です。下水道法の改正や大きな政策転換の時など、重要な方針決定時には、社会資本整備審議会の中に下水道小委員会を設置して、答申を受けて行政を進めてきました。最近では、平成19年の「新しい時代における下水道のあり方について(安全・環境の重視、管理・経営の重視)」の答申、平成27年の「新しい時代の下水道政策のあり方について(クライシスマネジメント、下水道の潜在力発揮)」の答申があります。コロナ禍と災害の激甚化の中、「下水道インフラマネジメント」を取り巻く環境は大きく変わりました。このタイミングで、国には、来春まで議論される「社会資本整備審議会計画部会」の動きに的確にコミットするとともに、下水道政策研究委員会「インフラマネジメント」の時代と下水道インフラ―第5次社会資本整備重点計画策定に向けて―

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