下水道の散歩道 第34-63回
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⑤ ヨーロッパ等の下水道インフラの脱炭素化の先進例に学ぶ。② 都市水害から人命・国家中枢機能・経済活動を守るための施策展開。ハード・ソフトを活用した幅広い下水道都市水害対策の推進。③ 下水疫学(WBE)調査の継続的・定期的実施により、都市・国の疫学的危機管理・健全度把握をサステナブルに実行。(42)第1960号 令和4年1月25日(火)発行 (1)第一にやるべきことは、脱炭素に向けての下水道施策のパラダイムチェンジ 第3種郵便物認可(3)以上の施策展開の実装・実行は、国主導で。国直轄調査・国直轄事業の創設へ高度処理の見直し、能動的運転管理の推進、単体ディスポーザの設置の推進等も考慮されるべきでしょう。放流水質基準も、日最大から日平均とする等も考えられるかもしれません。もちろん、脱炭素のみの観点から判断すべきではありませんが、一度、ゼロベースで再考するプロセスを踏むべきと考えます。③ 2050年に向けては、下水道インフラのあらゆる分野でのイノベーティブな技術開発を産学官挙げて、即、スタートし、推進する。 前述の設計思想の大幅変更も是とすれば、技術開発の幅は、大きく広がると思います。④ 2030年に向けて、中間目標を設定し、実行可能性のある積極的な政策・プログラムを策定し、即、スタートし、実行する。既開発技術の評価を確立し、その採用・活用を自治体のプログラムに義務付け、交付金の採択要件とする。 現時点で、カーボンニュートラル、カーボンマイナスにすでになっている下水処理施設が、ヨーロッパを中心に数多く存在します。これらの先進例のレビューと導入検討が、まず、必要です。(2)第二は、「都市・国の危機管理・安全確保」という下水道インフラのレゾンデートル(存在意義)の再確認とそのミッション(使命)を果たすための施策展開 以下の施策展開を目指すべきと考えます。① 衛生インフラとしての下水道インフラ機能のサステナブルな確保のための老朽化対策等の施策実行。と国が関与すべきと思います。平時においても、緊急時に備えて対応すべき事項については、国が主導権を持って対応すべきと考えます。5.今後の下水道インフラ骨太施策推進に向けてのパラダイムチェンジ 脱炭素に向けての下水道施策のパラダイムチェンジとして、以下の対応をスタートすべきと考えます。① 「脱炭素」に、正面から向き合って、今後の下水道インフラ施策を立案する。下水道インフラが道路・河川等社会インフラの最前線に立って、脱炭素化を推進する。その気概を持つ。 下水道インフラは、他の社会インフラと比べ、①社会インフラの中で温暖化ガス排出量が大きい、②省エネ、創エネ等の既存技術の適用余地が大きい、➂地域発生のバイオマスの受け入れによる効率的な脱炭素化に貢献できる、という特徴があります。率先して、脱炭素化に取り組むべきと考えます。② 2050年に向けては、下水道インフラの技術論・規制・基準・行政を「脱炭素」の観点でゼロから見直し、再検証し、方向性を決め、実行をスタートする。水処理・汚泥処理の考え方・処理プロセスを脱炭素の観点から一から見直し、下水道設計指針やマニュアル類も、ゼロベースで再構築する。 例えば、脱炭素化を最優先すると、最初沈殿池の代わりに、「高効率エネルギー回収型沈殿池」を導入し、処理プロセス前段における溶存成分も含めた有機物の回収率を増加させ、消化ガスの発生量を増加させる(創エネ)とともに、後段の反応タンクでの消費電力量を削減する(省エネ)プロセスに大転換すべきかもしれません。また、消化プロセスの義務付けや、 新型コロナウイルス対応の中、国の役割が、大きく見直されてきています。下水疫学(WBE)調査の国直轄調査化は、即、実行すべきでしょう。また、国家中枢機能・我が国の重要経済活動を守るための都市水害対策・大規模地震対策等は、国の直轄事業化も視野に入れるべきと考えます。(4)下水道インフラのイニシャル費用・メンテナンス費用に関する新たな負担論の確立と、新規の財源確保及び第一歩としてのメンテナンス補助制度の創設 下水道インフラは、国の関与の増大が求められる一方、企業会計適用インフラとしての整理、地域への貢献度の評価等が必須で、改めて、新型コロナパンデミックを経た今、下水道インフラのイニシャル費用・メンテナンス費用の新たな負担論の確立が必要です。国、自治体、市民の負担の考え方の確立です。 この議論の中で、例えば環境税・炭素税のような特定財源充当の在り方も議論されるべきでしょう。 また、第一歩として、すでに、道路・河川・ダム・砂防・海岸・港湾事業で始まっているメンテナンス補助事業についても、下水道事業の対象化を考えるべきと思います。 以上、2022年度以降のパラダイムチェンジ的発想のもとでの、下水道インフラの方向性・施策を述べました。下水道インフラ界の明るい未来に向けて、既存の考え方や弥縫策(びほうさく:当座の対処のみを考えた施策)にとらわれず、官民挙げて、新たな発想でチャレンジしていきたいものです。

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