下水道の散歩道㈱NJS 取締役 技師長 兼 開発本部長(公社)全国上下水道コンサルタント協会 企画委員長谷戸 善彦1.はじめに 令和3年12月24日、令和4年度当初予算の政府案が閣議決定されました。今後、国会での審議を経て、3月末までに令和4年度予算が決定されます。12月末段階で公表された「令和4年度政府当初予算」及び「令和4年度下水道事業当初予算」について、読み解くとともに、今後の下水道インフラ施策展開の方向性について、考え方を述べたいと思います。2.令和4年度政府当初予算のポイント[第52回](40)第1960号 令和4年1月25日(火)発行 第3種郵便物認可令和4年度下水道事業当初予算を読み解く―そして、今後は骨太の施策展開へ向けて 令和4年度政府全体の当初予算の考え方として、財務省は、12月24日、次のように発表しています。 「令和4年度当初予算は、令和3年度補正予算と一体として、①新型コロナ対策に万全を期しつつ、②『成長と分配の好循環』による『新しい資本主義』の実現を図るための予算とした」 これは、岸田首相の唱える「新しい資本主義」を強く意識した予算と言えます。昨年11月8日、内閣官房に設置された「新しい資本主義実現会議」から、「緊急提言~未来を切り拓く『新しい資本主義』とその起動に向けて~」が発出されました。そのポイントは、次の6点です。ⅰ 科学技術立国の推進、ⅱ スタートアップの徹底支援、ⅲ デジタル田園都市国家構想の起動、ⅳ 経済安全保障、ⅴ 民間部門における分配強化に向けた支援、ⅵ 公的部門における分配機能の強化。パラダイムチェンジを―(1)令和4年度下水道事業当初予算に関しての財務省・国交省記者発表予算についてイラスト:PIXTA 今回の令和4年度当初予算で、財務省がポイントとして、掲げているのは、以下の諸点です。ア .新型コロナ対策として、令和3年度補正予算で所要額を確保したが、変異株による感染拡大等、予期せぬ状況変化に備え、令和4年度当初予算においても、コロナ予備費5兆円を措置。で次の2点を述べています。 「公共事業関係費については、安定的に確保(6兆0575億円。前年度6兆0549億円。26億円増)。その中で、ドローン点検等を活用した老朽化対策や土地利用規制・避難計画等のソフト対策を強化した治水・地震対策など、防災・減災、国土強靭化への重点化を推進」 「単年度主義の弊害是正や建設現場の生産性向上に向け、国庫債務負担行為を新規に2.1兆円設定すること等により、施工時期の平準化・施工の効率化を図るとともに、複数年にわたる重要インフラの計画的な整備を円滑化」3.令和4年度下水道事業当初 財務省は、昨年12月24日の閣議決定後、各省担当主計官が、予算のポイントを記者発表しています。今回は、公共事業担当の北尾主計官が「令和4年度国土交通省・公共事業関係予算のポイント」を発表しています。一年前の令和3年度当初予算では、公共事業担当の藤崎主計官が記者発表で、下水道インフラに関し、「市街地浸水対策の強化」と「下水道等における維持管理情報のデジタル化、PPP/PFI活用の加速化」を特筆して発表しました。今回は、下水道インフラへの特別の言及がなかったのは少し寂しく感じましたが、「ハード・ソフトが一体となった防災・減災対策の推進」等に、下水道事業も含まれた形で、記者発表されました。 国交省全体の記者発表の中では、下水道インフラについて、グリーン化(脱炭素化)、DX化、PPP/PFIの項目で言及されています。ただ、下水道インフラのアピールポイントは、令和4年度予算において、もっと数多く存在します。下水道インフラの対外的アピールに、より力を注ぐべきと考えます(下水道関係者だけが下水道インフイ .「科学技術立国」の観点から、過去最高の科学技術振興費1兆3788億円を確保。デジタル、グリーン(脱炭素)、量子、AI、宇宙、次世代半導体等の研究開発を推進。ウ .「デジタル田園都市国家構想」の実現に向け、情報システム関係予算4720億円をデジタル庁一括計上に。また、自治体の創意によるデジタル技術の実装を支援。エ .「経済安全保障」について、量子暗号通信の研究開発の推進及び重要技術の管理体制強化。オ .公的部門の分配強化。具体的には、介護・保育等の現場で働く方の給与アップ。カ .「骨太の方針2021」で定めた取り組みの継続。具体的には、脱炭素、DX、新たな地方創生、子育て対応の推進。キ .財政健全化に向け、新規国債発行額を減額(令和3年度当初43.6兆円から令和4年度当初36.9兆円に) これらは、まさに、「新しい資本主義実現会議緊急提言」を強く意識したものです。 また、財務省は、公共事業関係予算のポイントとして、公式発表
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