下水道の散歩道 第34-63回
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応は最重要ラの最先端で取り組むの積極的コミット第3種郵便物認可 第1958号 令和3年12月14日(火)発行(35)【筆者略歴】昭和49年3月、東京大学工学部都市工学科卒業後、同年4月建設省採用。京都府下水道課長、建設省下水道部下水道事業調整官、東北地方整備局企画部長、国土交通省下水道部下水道事業課長、同下水道部長、日本下水道事業団理事長(公募による選任)等を歴任。平成29年3月より現職。平成30年6月より全国上下水道コンサルタント協会企画委員長。著書に「21世紀の水インフラ戦略」(理工図書。書き下ろし)がある。 ●「下水道の散歩道」は、月1回(各月後半発行号)の掲載です。に下水道インフラへの関心・興味を持ってもらうことが重要だと思います。下水疫学調査や最近加賀市で実施された住民によるマンホール写真提供によるマンホール老朽化調査なども、大変有効だと考えます。②防災・減災・国土強靭化への対 地球温暖化の影響による水害の頻発化・激化は、日本中、あらゆるところで今後とも起こるでしょう。その水害の防除は、国民の生命・財産に関わる極めて重要なミッションです。将来、カーボンニュートラルの達成がなされても、引き続き、緩和策は重要です。リアルタイムの管路内水位計測による内水浸水予測シミュレーションの高精度化(この面でも、今や、下水道インフラは、都市の「情報インフラ」です)等のソフト対策を含め、下水道インフラの最重要課題と考えます。③カーボンニュートラルに社会インフラの中の最前線で取り組む 資源・エネルギーを自ら生み出す社会インフラは、下水道インフラ以外には、ほとんどありません。省エネ・創エネ・再エネに加え、下水道インフラの設計・建設・維持管理・経営のすべてのステージにおけるカーボンニュートラルへの取り組みに、すべての社会インフラの先頭に立って、対応していくべきと考えます。ブレークスルーのためには、特に、この分野の技術開発・イノベーションが必須です。④ICRT(ICT+R)化に社会インフ 下水道インフラは、管路内・処理施設内等に、建設時・維持管理時に危険性のある現場があります。他の社会インフラに先行して、無人化・ロボット化を推進すべきと考えます。ICT化・DX化に加え、ロボット化(Robotics)の推進が必須です。先に述べた土木学会の緊急声明でも、「感染症流行時において、下水道インフラは、衛生的安全確保を担う重要なインフラ」と位置付けられており、一日たりとも機能を停止することができません。一方で、下水道インフラに関係する人々の安全を確保しなくてはいけません。新型コロナウイルス等は、人間の体内から出て下水道管内に入って以降、不活化により感染力はなくなりますが、人の安全には十二分に注意する必要があります。この観点からも、無人化・ロボット化の推進は重要です。⑤「デジタル田園都市国家構想」へ 今後、岸田内閣の下、「デジタル田園都市国家構想」について、具体的な議論が進むと考えられます。その際、先に述べた「下水道インフラストックの活用推進」にとどまらず、下水道インフラの資源・エネルギー創出とその地域への活用、下水道処理施設用地の利用による太陽光発電基地の建設によるエネルギー創出と地域還元を核とした「地域エネルギー拠点・地域にぎわい拠点」の建設等の提案を下水道インフラ界から出していくべきと考えます。下水道インフラを核とした「スマート・グリーン街づくり」の提案です。⑥賢い支出のためのマルチプル・エフェクト(MultipleEffects)の推進 国費等の賢い支出のためには、一つの事業の多重効果(マルチプル・エフェクト)を考えることも重要です。施設・用地の多目的活用や、すべての工事で新技術を一つは採用することを義務付けることによる「事業の推進と技術開発の推進のマルチプル効果創出」等も有効でしょう。⑦国の関与の拡大 脱炭素推進・DX推進・技術開発・海外展開等において、国の関与の増大・国の支援の強化は、必須と考えます。国の直轄事業の検討や日本下水道事業団の役割の在り方の検討(11月10日にJSが米子市と締結した「包括的パートナーシップ協定(米子モデル)」は新たな枠組みの提示として注視したいと思います)も視野に入れるべきでしょう。⑧下水疫学(WBE)調査の推進 下水疫学の有効性が明らかになった現在、全国における下水疫学調査の継続的・定期的実施を打ち出すべきと考えます。下水道インフラは、都市の健康診断ツールを有している「都市の情報インフラ」です。この特性を活用しない手はありません。⑨PPP/PFIの推進 国の財政が厳しい中、積極的に民間活用を図り、官民連携で、社会資本の整備・再構築・維持管理・経営を行うことが重要です。下水道分野でも、幅広い取り組みが求められます。⑩技術開発の重視 下水道インフラは、土木工学に加え、建築学・機械工学・電気工学・化学・生物学など多様な知識の集積で成り立っています。その分、技術開発の可能性が大変広い分野です。また、維持管理・経営コストの大きなインフラです。技術開発により、大きく下水道経営が改善する可能性があります。この点からも、技術開発の重視が望まれます。⑪海外展開の重視 技術開発を実現した下水道インフラ関連の本邦技術の海外展開も今後、重要になると考えます。また、日本で実装してきた下水道インフラの制度構築・政策実現手法等のソフト対策を含めたハード・ソフト一式の海外技術移転も、今後、下水道インフラを進めていく国々から歓迎されると思います。 以上、2022年以降の下水道インフラの方向性・政策・戦略を述べました。官民挙げて、下水道インフラ界の明るい未来に向けて、力を合わせていきたいものです。

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