下水道の散歩道 第34-63回
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連)の提言(34)第1958号 令和3年12月14日(火)発行 第3種郵便物認可動き(1)衆議院議員選挙における自民党・公明党の公約ラの方向性・戦略な役割を位置付け、下水処理場を地域の感染症流行を検知するモニタリング拠点として活用すべきである」「下水道の公共性を鑑み、下水から得られる疫学情報は公共性を有する情報として、市民や民間企業、行政機関等が利用できるように積極的に公開すべきである」 ③は、「新たな地方創生」「デジタル田園都市国家構想」の実現を今後図っていく中、普及が90%と進んできた下水道関係インフラのストック・受け入れ余裕度や既存下水道施設への接続費用等を考慮して、新たな住宅等の都市立地を考えていくべきということです。他の社会インフラと比べて、その整備コストが非常に大きい下水道インフラの費用をできるだけ抑えることが、新たな地方創生の鍵の一つとなります。また、下水道インフラ側にとっても、下水道経営の面から、下水道整備完了区域やたやすく接続できる下水道整備区域近傍に新たな街が形成されることは望ましいことです。 ④は、他の社会インフラにはない「資源エネルギーを自ら生み出す社会インフラ」として、下水道インフラへの関心が高まっています。全国に8600haあり、都市公園面積の10%に相当する下水処理施設用地、その用地内の空間・施設上部の徹底的な有効利用も、今後、重要な視点となります。 ⑤も、この2年間の下水道インフラ関連のアウトカムとして、非常に大きなものだと考えます。ここ数年、都市部の内水による被害が頻発し、工場の操業停止によるサプライチェーンの分断や、大規模マンションの大きな浸水被害等がクローズアップされました。3.政・官・民における最近の 前回の第50回で述べましたように、第49回衆議院議員総選挙において、下水道インフラ関連の公約が、与党の自民党・公明党から非常に多く提示されました。雨水対策を中心として「防災・減災・国土強靭化対策」、脱炭素化のための創エネ・省エネ・再エネ対策、老朽化対策、PPP/PFIの推進、下水疫学調査の実施等です。この実現に向け、引き続き、政・官・民の連携が重要です。(2)政府の新たな動き     ―「新しい資本主義実現会議の緊急提言」と「デジタル田園都市国家構想実現会議の立ち上げ」― 11月8日、内閣官房に設置された「新しい資本主義実現会議」から、「緊急提言~未来を切り拓く『新しい資本主義』とその起動に向けて~」が発出されました。岸田内閣の唱える「新しい資本主義」の具現化に向けての方向性を示すものです。その内容は、①科学技術立国の推進、②スタートアップの徹底支援、③地方を活性化し世界とつながる「デジタル田園都市国家構想」の起動、④経済安全保障、⑤民間部門における分配強化に向けた支援、⑥公的部門における分配機能の強化―の6点です。①~④が、成長戦略、⑤~⑥が分配戦略です。ダイレクトに、下水道インフラの記述はありませんが、①の中の「DXの推進」「クリーンエネルギー技術の開発・実装」、③の中の「地方活性化に向けた基盤づくりへの積極的投資」、⑥の「公的部門における分配機能強化」等は、注視する必要があります。特に、③の「地方活性化に向けた基盤づくりへの積極的投資」の項では、「激甚化する風水害対策や切迫する大規模地震対策の推進」「予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策の推進」「国土強靭化に関する施策を効率的に進めるためのデジタル化の推進」「PPP/PFIの活用推進」が提示されています。(3)日本経済団体連合会(経団 主要な経済団体から政府への提言等も、次々となされています。 日本経済団体連合会(経団連)は、11月11日、「新内閣に望む」として、提言を発表しました。岸田内閣の提唱する「新しい資本主義」は、経団連が従来から掲げる「サステイナブルな資本主義」と軌を一にするものだとした上で、次の7点の提言を行っています。① 新型コロナウイルス感染症対策強化。特に、病床調整・入院調整等に関する国・自治体の強い指揮権限・体制の整備、国産治療薬・ワクチンの開発支援、ワクチン・検査パッケージを活用した社会経済活動の活性化② 国のSociety5.0 for SDGsの実現をゴールに据えたWithコロナ、Postコロナのビジョン・ロードマップ・KPI(重要業績評価指標)の策定③ 科学技術立国を目指したDX・GX(※経団連も最近GXという言葉を使い始めました)・スタートアップ振興の推進④ 地方創生。特に、地方への成長投資の加速、防災・減災・国土強靭化の推進⑤ 働き方の変革と人材の育成。特に、理数系教育の充実・拡充、グリーン人材・グローバル人材の育成強化⑥ 国際社会との積極的な連携・協調。特に、自由な貿易・投資に留意した経済安全保障の確保、国境を超えるデータ流通の推進⑦ 財政健全化と持続可能な全世代型社会保障改革。特に、成長と財政健全化の両立、成長に資する賢い支出の徹底 この提言の中で、コロナ対策としての国等の強い指揮権限の整備、理数系教育の充実、グリーン人材の育成強化、国境を越えたデータ流通の推進、成長に資する賢い支出の徹底等は、要注目です。4.2022年以降の下水道インフ 以上記しました下水道インフラ界の2020~2021のアウトカム(成果・結果)、政・官・民の最近の動き等を踏まえて、2022年以降、下水道インフラ界は、どのような方向性を持って、どのような政策・戦略を取っていくべきなのか、その視点・考え方について、述べたいと思います。①国民・政治関係者への下水道インフラへの理解・関心をさらに高める 衆議院議員総選挙の公約には、下水道インフラ関連の記述が多く掲げられました。しかし、まだまだ下水道インフラへの関心は低いと思います。今後は、多くの国民

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