下水道の散歩道 第34-63回
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第3種郵便物認可 第1956号 令和3年11月16日(火)発行(35)4.下水道インフラを巡る今後の政府・与党の動き、財務省の動きを踏まえて、下水道界は、いかなるスタンスで対応していくべきかう資料が提出され、改めて日本の国家財政の危機への憂慮が示されました。10月20日には、財政制度等審議会の財政制度分科会歳出改革部会が開催され、「我が国の社会資本整備」について、次のような改革部会の基本認識・見解が示されました。① 我が国の社会資本の整備水準は大きく向上。② 我が国の社会インフラは、概成しつつある。③ 防災・減災対策はソフト対策を促進する必要がある。④ 建設業の生産性向上による事業費・コストの低減を行うべし。⑤ 災害復旧として、被災地域の原形復旧を行わず、集落などを別の地域に移動させるインセンティブを強化すべき。⑥ 老朽化対策は、今後の人口減少をベースに進めるべき。⑦ 橋梁の統廃合を進められる判定スキームを検討すべき。 以上の見解は、昨今の災害の激化・頻発化の中、災害対応に対しても、非常に厳しい歳出抑制を求めるもので、社会資本整備全般に対しても、強く歳出縮減を求めています。今後の議論を注視していく必要がありましょう。 下水道インフラに関しても、数年前から、厳しい見解が突きつけられており、今後の審議の内容に留意する必要があります。 総選挙を終えて、年末の令和4年度予算編成に向け、今後、与党の政策展開、財務省財政制度等審議会の動き等が出てきます。その動きを踏まえて、下水道インフラ界は、どのようなスタンスで来年度の予算獲得等に対処していくべきか。いくつかの視点を述べたいと思います。① 本年6月18日に閣議決定された「骨太の方針」の4本柱が、政府の来年度予算の重点配分事項であることを意識する。4本柱とは、a.脱炭素化、b.デジタルトランスフォーメーション(DX)、c.新たな地方再生、d.子供・子育て支援―です。   特に、脱炭素化に関連する下水道インフラ関係予算については、充実した新規施策、手厚い財政措置が強く望まれます。具体的には、下水道用地内の空地への再エネ施設設置・活用の促進措置、太陽光パネルの下水道用地内設置に対する下水道予算による交付措置等が望まれます(概算要求に入っていませんが、こうした対応を財政部局等と折衝することにより、事実上、対応可となれば、脱炭素対策が大きく前進すると思います。これは、一例です)。② 国の財政が非常に厳しい中、公共事業・社会資本整備においても、「民間」の力も積極的に活用する。具体的には、官民連携によるPFI/PPPの活用、PFI法第6条等による民間からの提案制度の積極活用、民間技術開発の促進と税制上の優遇措置拡充です。③ 上記4本柱以外では、下水道による「雨水対策」への徹底的対応を行う。流域治水関連法が、先の国会で可決され、施行が始まっており、絶妙のタイミングです。選挙公約でも、大きく取り上げられています。「防災・減災・加速化対策の推進」です。④ 下水道関連の「技術開発」を積極的に推進する。特に、2050年カーボンニュートラルに向けた下水道インフラの脱炭素化は、技術開発がポイントです。政府の支援策が充実すれば、下水道インフラ関連分野では、画期的な技術開発達成の可能性は、非常に大きいと考えます。特に、水処理・汚泥処理・ポンプの省エネルギー技術、消化ガス発電・焼却発電による創エネルギー技術、再エネ技術、N2O対応技術、下水道インフラから発生するCO2の活用技術のブレークスルーが期待されます。⑤ 生産性の向上・コストの縮減を目指して、下水道以外の他事業(ゴミ焼却・農業集落排水事業等)とのバンドリング・共同化、広域化を推進する。国の財政状況の厳しいこのタイミングで強く打ち出すべきと考えます。⑥ 下水疫学(WBE)調査を推進する。新型コロナ対策として、有効性が検証され、下水道の情報インフラとしての新たなミッション(使命)を確立した「下水疫学調査(WBE 下水サーベイランス)」の今後の全国における継続的・定期的実施を打ち出すべきと考えます。それと併せて、管路等の安全な点検のための技術(ドローン・ロボットの活用等)の開発の促進が必須と思います。⑦ 下水道インフラ関連技術、下水道インフラ普及の国際展開を推進する。脱炭素関連技術、ドローン等インスペクション技術には、日本が世界の最先端を走る下水道インフラ関連技術が存在しま

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