下水道の散歩道1.第49回衆議院議員総選挙の各党選挙公約における下水道インフラへの言及[第50回](34)第1956号 令和3年11月16日(火)発行 第3種郵便物認可「衆議院議員選挙における各党の下水道インフラ関連の選挙公約」そして「下水道インフラを巡る今後の動きと対応スタンス」―財務省財政制度等審議会の動きにも注目―㈱NJS 取締役 技師長 兼 開発本部長(公社)全国上下水道コンサルタント協会 企画委員長谷戸 善彦 「下水道の散歩道」の連載も、50回を迎えました。4年強、一ヵ月に一度、一回も休まず、執筆を続けてくることができました。提言等、「散歩道」という名前にふさわしくない硬い話が多い中、読者の皆様には、ご愛読いただき、感謝しています。 去る10月31日、第49回衆議院議員総選挙が行われ、自民党・公明党の連立内閣が引き続き、政権を担っていくことが決まりました。今回の総選挙における各党の選挙公約を詳細に分析しましたところ、4年前の総選挙時の公約等と比べ、特に与党を中心に、下水道インフラ関連の記述が大きく増えていることがわかりました。これは、素晴らしいことで、政治の下水道インフラへの関心が高まっている証左だと考えます。国・自治体や民間企業・民間企業団体からの幾度にわたる意見具申や意見交換会の開催、下水道展見学や下水道現場の視察に来ていただいたこと等が少しは功を奏したのかなと思います。地球温暖化による水害の多発化・激化、インフラ老朽化への懸念、エネルギー循環・脱炭素化への関心等、社会的背景の変化があっ2.自民党・公明党の選挙公約に下水道インフラはどう記述されているか3.社会資本整備等に関する政府の動き ―財務省財政制度等審議会の動きに注目―イラスト:PIXTAたこともありますが、日ごろからの「下水道インフラの現状・課題・解決方向についての政治への訴え・具申」が少しずつ、実を結んできているのだと思います。 具体的には、今年5月から7月にかけての「自民党政務調査会下水道・浄化槽対策特別委員会(山本有二委員長)」での各省庁・自治体・民間企業団体からの説明・提言、今年5月の「公明党下水道政策に関する議員懇話会(佐藤英道会長)」への民間企業団体からの要望、8月の「公明党国土交通部会」への下水疫学レク、8月の各党国会議員の下水道展の視察等が大きかったと考えます。 別表に、今回の衆議院議員選挙における自民党と公明党の選挙公約(マニフェスト)に下水道インフラ関連の公約がどう述べられているか、政策種別ごとに整理してみました。4年前と比べ、実に幅広く、濃い内容が並んでいます。特徴としては、激化・頻発化する水害への対応としての下水道雨水対策の推進、脱炭素化に向けての下水道の対応、新型コロナ対策としての下水疫学の推進、DX関連、官民連携関連の記述が目立ちます。 一方、野党の公約では、立憲民主党の「下水道・農業集落排水・合併浄化槽の適切な配置に向けての見直し」「下水道の硬直的な接続義務の見直し」、日本共産党の「防災・減災の事業、インフラの維持更新に予算の優先的配分をして、公共事業政策を大きく転換」、日本維新の会の「インフラ老朽化対策において、AI・IoTなどデジタル技術を活用して、メンテナンスの高度化・効率化を推進するとともに施設集約や不要施設の撤廃を実施」、国民民主党の「『社会資本再生法(仮称)』を制定し、公共インフラの円滑な維持管理、老朽インフラの計画的更新を推進」が目を引きました。 10月8日に発刊された文藝春秋11月号に、矢野康治財務事務次官の「このままでは国家財政は破綻する」という寄稿文が掲載されました。総選挙直前のタイミングを見計らっての寄稿です。寄稿文の中では、「コロナ対策は大事だが、人気取りのバラマキが続けばこの国は沈む」と述べています。この寄稿も注目ですが、私がさらに注目しているのは、10月に入ってからの財務省の公式の動き、特に、財政制度等審議会の動きです。 財政制度等審議会は、財務省の審議会の一つで、予算・決算等、国の財政について審議を行う財務大臣の諮問機関で、国の予算案決定にあたって、大きな影響力を持っています。この財政制度等審議会の下部組織の財政制度分科会が10月5日と11日に開催され、5日には、審議会から「財政総論」とい
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