下水道の散歩道 第34-63回
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第3種郵便物認可 第1954号 令和3年10月19日(火)発行(39)を目指してレームワークの適用▲サステナビリティー経営 模式図 (IllustratedbyYukiIshizuka)孫亀子亀親亀義」と「サステナビリティー経営」、この2つが最新の企業経営の潮流です。4.下水道インフラの「北極星」 上述のように、人類・地球のサステナビリティーが強く求められている中、下水道インフラの具体的な「北極星」として、次の点があげられると思います。① 汚した水は下水道インフラシステムで元の原水水質にして、川や海に戻す。全国のすべての川・海をSWIMMABLEに。② 下水処理場からの処理水は、①を原則としつつも、海苔漁場対策・下水再生水利用者ニーズ等に応じ、季節により、時刻により、再利用先により、自由に処理水質レベルをコントロールできるようになる。③ 管路内センサー・IoT・AIを活用し、都市全体で都市内降水の制御を行い、日本中すべての地域において、内水浸水被害が生じなくなる。④ すべての下水道インフラが「エネルギー自立型」を超え、「エネルギー創出施設」となる。CO2に関しても、すべての下水道インフラが「ネガティブエミッション施設」となる。⑤ 全国の2200の処理施設、3800のポンプ施設、48万キロの下水管路等、すべての下水道インフラ施設は一括自動で刻々と管理状況の把握が行われるとともに、地域・都市ごとの管路・処理施設の監視・メンテナンス基地で的確なフォローアップが24時間・365日行われる。⑥ 以上の対応により、下水道インフラのマネジメントコストが大幅に削減され、全国すべての下水道事業体の下水道経営が恒常的に黒字化され、下水道使用料が安定的に維持される。⑦ 下水道インフラは、地域のウイルス蔓延の予測・ウイルス終息の検知等を先行的かつ的確に行う情報インフラとなる。⑧ 下水道インフラの名称は、「水代謝インフラシステム」となり、下水道インフラ関連の官・民の仕事は、地球のサステナビリティーを守るプレミアムソーシャル経済価値社会価値環境価値理解が必要と言われています。この3つは、よく、親亀(環境)、子亀(社会)、孫亀(経済)に例えられます(図参照)。親亀(環境価値)の上に子亀(社会価値)が乗り、さらにその上に孫亀(経済価値)が乗っているイメージです。「親亀こけたら皆こける」、すなわち、環境(親亀)や社会(子亀)が傷つき破壊されたら、経済活動(孫亀)自身が成り立たなくなる。つまり、経済活動は、環境、社会を前提としていて、事業活動全体が環境・社会と両立して行かねばならないという考え方です。 こうした考え方が急速に広まっているのは、地球環境の破壊が刻々と近づいていることが科学的に証明されているからです。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、今年8月9日、7年ぶりに第6次評価報告書WG1を発表しました。その中で、「人間の影響が大気、海洋および陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と述べ、地球温暖化の要因は人間活動であると、歴史上初めて、断定しました(前回2013年の第5次評価報告書では、温暖化の要因が、人間活動である可能性は95%以上とされていました)。 地球の環境容量を示す「エコロジカル・フットプリント」という指標(人間活動が環境に与える負荷を、資源の再生産や廃棄物の浄化に必要な陸地・水域の面積として算出し、地球の実際の陸地・水域面積と比較して環境容量を示すもの)では、人間が現在の生活を維持するためには、2020年度ですでに、地球1.6個分の自然資源が必要とされており、すでに破綻しているとされています。 また、「炭素予算(カーボン・バジェット)」の考え方によれば、地球全体の累積CO2排出量は、産業革命以前からの世界の平均気温上昇を1.5度以内に抑える上限(過去の排出量と将来の排出量の合計)まで8%しか残されておらず、このままのペースが続けば、2028年には、上限に達すると言われています。 こうした認識が広まる中、菅総理の2050年カーボンニュートラル宣言が出され、日本政府の本気度が提示され、「本物のサステナビリティー経営」へと企業の動きが加速しました。 この「ステークホルダー資本主ワークとして、国民・学生・子供の憧れの職業となる。 こうした下水道インフラの「北極星」を見出し、それを究極の目標として、実現を図っていきたいものです。5.下水道経営へのビジネスフ 民間企業経営においては、世界で次々と作り出される新しいビジネスフレームワークや伝統のメジャーなビジネスフレームワークを活用して、企業のビジョン(北極星)・ミッション・長期計画・中期計画等が立案されています。地方自治体では、下水道事業の会計方式について、企業会計方式が適用されてきていますが、企業経営のフレームワークについても、研究し、生かせるものは、ぜひ、活用していくとよいのではと考えます。6.おわりに 下水道関係企業において、また、下水道事業を実施する地方公共団体において、今後、「ステークホルダー資本主義」・「サステナビリティー経営」等の根幹的考え方、経営手法が活かされると良いと思います。その結果、下水道インフラの「北極星」が達成され、私たちが目指す世界の究極の目標である「地球上の人類・生物・環境のサステナブルで健全な存続が図られ、誰もが多様な豊かさを享受できるグリーン社会が実現される」ことに繋がると素晴らしいと考えます。

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