下水道の散歩道 第34-63回
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▲下水処理場を核とした地域づくりへ(Illustrated by Yuki Ishizuka)導的・主導的脱炭素化の推進第3種郵便物認可 第1952号 令和3年9月21日(火)発行(39)の一括実施)により、経営収支の安定性・経営の柔軟性・地域への貢献度が高まると考えられます。② ICT(デジタル)を活用しての運転・管理・運営の広域化・共同化の実現と官民連携経営を 上記の一定規模以上の下水処理場を地域の核とする施策と併せ、その処理場の周辺地域の中小規模の処理場そしてポンプ場の運転・管理・運営は、核となる処理場を中心とした広域化・共同化をICTを徹底的に活用して図り、併せて、官民連携経営を志向すべきと考えます。③ 技術開発・新技術の実証事業・広域的緊急対応事業等の国直轄化 技術開発・新技術の実証事業の国主導実施に加え、広域にまたがる(または広域的対応が必要な)事業で水質保全上・浸水対策上・国家安全保障(経済・防衛)上、緊急に対応が必要と考えられる下水道インフラ事業について、国直轄事業の検討を行うべきと考えます。カーボンニュートラル対応の観点からの一部事業の国直轄事業化の検討も必要です。④ 下水道インフラ分野あげての先 今後、2050年のカーボンニュー上の処理場は、水質コントロール・エネルギーコントロール・エネルギー創出・健康情報発信のマルチコントロールステーションとなる大きな可能性があります。特に、全国の流域下水道の処理場、政令指定都市・県庁所在都市等の処理場は、敷地面積の大きいところも多く、場内に太陽光発電・風力発電基地や地域交流拠点等を建設できる余地のあるところも多く、地域の新たな地方創生拠点となる可能性があります。処理場を核とした地域づくりの推進です。 今後の技術開発の進展による資源・エネルギー創出の生産性の劇的向上がなされれば、実現可能性は高いと思います。2016年度からの電力小売自由化により、全国に現在百数十社の地域新電力会社(地域を限定して電力を販売する会社)があり、そのうち、60社は、自治体が出資する自治体新電力会社です。今後、大規模下水処理場は、自ら電力小売の事業主体(経済産業省の登録小売電気事業者)となり、それを核として、上記エネルギーコントロール等を実施し、地域の新地方創生コア拠点となることを目指すべきと考えます。この「下水道経営+地域新電力事業者」のバンドリング経営(多種の事業トラルに向け、電気等エネルギーを大量に消費しており、一方では、自らの事業の中で大きなエネルギーを生み出すポテンシャルを有している下水道インフラ分野において、加速度的に、脱炭素化対応が必要になると考えられます。今後、国による技術開発支援・新技術の実装支援・制度設計構築・徹底的な財政支援等、下水道界あげての脱炭素化に向けての先導的・主導的対応が求められます。 これらの提案は、下水道普及が全国に拡がり、日本中に下水道インフラ網が張り巡らされたこと、ICT(デジタル)化の進展、下水道インフラの省エネ・創エネ技術の進化、下水処理場の広大な土地保有等により、はじめて達成の可能性がでてきたものです。今後、下水道インフラが、地域の種々の面での核となる施設として、新たな地方創生のコア施設になっていってほしいと思います。そして、私たちが目指す世界の究極の目標である「地球上の人類・生物・環境のサステイナブルで健全な存続」に、下水道インフラが、貢献できたらと考えます。

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