下水道の散歩道 第34-63回
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(3) 下水道予算構成の将来の在り方に向けた「戦略」が読み取れる待大さらに今後、注力を(38)第1952号 令和3年9月21日(火)発行 第3種郵便物認可 「下水道脱炭素化推進事業の創設」は、「個別補助金」での要求です。下水道予算が交付金のウエイトが高い中、計画的・集中的な浸水対策等の予算は、使途が特定された「補助金」として、予算枠を拡大してきました。今回、脱炭素化対応が今後、極めて重要となる中、「下水道脱炭素化推進事業の創設」は、「個別補助金」での要求となっています。将来の下水道予算制度を俯瞰し、的確な方向性を付けた要求だと考えます。(4) 5つの新規事項は、どれも期 上で述べた5つの新規事項は、いずれも、地方公共団体のニーズが高く、民間企業にとっても、期待の大きい要求内容です。特に、「脱炭素化」に対しては、近く、下水道政策研究委員会の中に、「下水道事業の脱炭素社会への貢献のあり方を検討する小委員会」がスタートすることになっており、下水道界全体としても、大変期待の大きい分野です。「内水浸水リスクマネジメント推進事業の創設」も、先の国会で、水防法等の改正が行われ、「流域治水」を関係者あげて対応していこうとする中、大変、タイムリーな要求です。(5) コロナで厳しい状況が続く中、水ビジネス国際展開には引き続き、注力を 行政経費で、「下水道分野の水ビジネス国際展開経費」「官民連携による海外インフラ展開の推進経費」が継続要求されています。コロナ下で、海外展開について、動きが止まっていますが、我が国の将来をにらんで、ポストコロナ、場合によっては、ウィズコロナの中で、国際展開に対する国の引き続きの支援を期待します。(6) 脱炭素化等の技術開発には、 今後、脱炭素化対応が、下水道インフラ分野においても、重要になることが必定の中、技術開発がその要になると考えます。国には、今後とも、引き続き、技術開発関連の予算確保に注力いただきたいと思います。(7) 紙オムツの下水道への受入について、下水道サイドから正論を 今回の予算要求で、「紙オムツ受入による下水道施設への影響調査経費」が継続要求されています。現在、実証実験中ですが、汚物と紙オムツの分離機を使っても、紙オムツの中に含まれているマイクロプラスチックの一部が下水道インフラへ流入する懸念があり、今後、問題点が議論される可能性があります。下水道界から、是非、製紙業界に対して、マイクロプラスチックの含有のない紙オムツの開発・販売の前倒しを強く要望し、その進捗と合わせて、紙オムツから分離された汚物の下水道への受入を認め、「WIN-WIN」の関係が構築できるよう、働きかけをするべきと考えます。(8) 下水疫学(WBE)調査は、内閣官房・厚生労働省と連携の上、令和3年度補正予算等での対応の検討も 自民党の委員会でも、下水疫学調査の推進が多くの国会議員から述べられました。内閣官房と厚生労働省・国土交通省の連携でのプロジェクトの推進が望ましいと考えます。全国規模の継続的・定期的な調査の実施とその予算確保等が、各省庁の連携の中、令和3年度補正予算等で、実現されることを期待します。5.今後の「ウィズコロナ・脱炭素化・DX・新地方創生・子育て時代」における下水道インフラの新たな展開に向けての提案 8月末に財務省に提出された令和4年度予算概算要求は、財務省と各省庁の予算折衝を経て、12月に、政府原案として決まります。国土交通省下水道部の折衝に期待したいと思います。今年の「骨太の方針2021」にありますように、現下の日本政府の最重要課題は、ウィズコロナ(6月の骨太の方針閣議決定時には、まだ、ポストコロナ時代にどうするかという視点でしたが、現在は、コロナが長期戦になりそうな中、ウィズコロナ時代をどうマネジメントしていくかという考え方に変わってきていると思います)、脱炭素化、DX、新たな地方創生、子育てです。 こうした次のステップに向けての下水道インフラの新たな展開を考える中、下水道インフラの未来に向けての施策として、次の提案をしたいと思います。① 下水処理場を地域の新地方創生拠点に。処理場を核とした地域づくりの推進―流域下水道、政令市・県庁所在都市等の大規模下水処理場を地域の水質コントロール、エネルギーコントロール、エネルギー創出、健康情報発信等、「新たな地方創生」のマルチコントロール拠点(マルチコントロールステーション)に 大規模な処理場からの放流水質は、地先の河川・湖沼・海域の水質に大きな影響を与えます。現在すでに全国35ヵ所で実施されている「下水処理水の季節変動運転等能動的管理」で見る如く、処理場は、地域の水質コントロール拠点です。また、処理場は、地域の電気・水・熱・リン・水素等資源エネルギーの創出拠点で、そのコントロール拠点となる可能性があります。今後、処理場が水素発生ステーションになったり、後述する地域新電力のコントロール拠点になったりする可能性があります。処理場は、下水中のウイルス等のRNAの継続的・定期的なモニタリングにより、地域の人々の健康情報キャッチ・発信の拠点になります。今後の処理施設の脱炭素化の革新的進展により、処理場トータルでカーボンニュートラル以上の余剰エネルギー・余剰電力を産み出し(ネガティブエミッション)、処理場がその供給基地になることができます。 このように、全国の一定規模以

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