下水道の散歩道 第34-63回
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下水道の散歩道㈱NJS 取締役 技師長 兼 開発本部長(公社)全国上下水道コンサルタント協会 企画委員長谷戸 善彦1.令和4年度予算概算要求の背景― 「骨太の方針2021」を受けて[第48回](36)第1952号 令和3年9月21日(火)発行 第3種郵便物認可「令和4年度予算概算要求」と「下水道インフラの新たな展開に向けての提案」―下水処理場を地域の新地方創生拠点に 8月末、各省庁から財務省に対して「令和4年度予算概算要求」が提出されました。今回の予算概算要求は、6月18日に閣議決定された「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針2021)」に基づいて、各省庁が策定したものです。 今年の「骨太の方針2021」の柱は、「新型コロナ感染症の克服とポストコロナ時代の我が国経済社会の展望を提示したこと」と、「次なる時代をリードする新たな成長の源泉として、『4つの原動力』を明示したこと」です。4つの原動力とは、①グリーン社会(脱炭素社会)の実現、②官民挙げたデジタル化の加速、③新たな地方創生の展開と分散型国づくり、④少子化の克服、子供を産み育てやすい社会の実現―です。 また、38ページに及ぶ「骨太の方針2021」の本文の中に、「下水道インフラの整備・マネジメント」に関連する注目すべき記述として、以下があります。ア. 財政健全化の堅持:「『経済あっての財政』との考え方の下、デフレ脱却・経済再生に取り組むとともに、財政健全化に向けしっかりと取り組む。新たな成長の原動力となる分野への重点投資、民間の資金・人材の活用、ワイズスペンディングの徹底等により、経済成長を促す」イラスト:PIXTAイ. 防災・減災、国土強靭化:「流域全体を俯瞰した流域治水を推進する。防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策を推進する」ウ. 地方自治体間の補完・連携等:「デジタル技術等を活用しながら、市町村間の広域連携や都道府県による小規模市町村の補完等の対応を進める必要がある」エ. 地方財政改革:「上下水道の広域化・料金の適正化、EBPM(エビデンスに基づく政策立案)を推進する。感染収束後、早期に地方財政の歳出構造を平時に戻す」オ. 生産性を高める社会資本整備の改革:「デジタル化や脱炭素化を図りつつ、生産性向上に資する取組を進めるとともに、新技術等の導入促進や集約・再編等の広域的取組による公的ストック適正化も含め予防保全型のメンテナンスへの早期転換を図る。設計、施工、維持管理等の自動化・AI活用等による効率化などインフラDXを進める。PPP/PFIなどの官民連携手法を通じて民間の創意工夫を最大限取り入れる。特に、人口20万人未満の地方自治体への導入検討・支援」カ. 令和4年度予算編成に向けた考え方:「グリーン、デジタル、地方活性化、子供・子育てへの重点配分を行う。歳出全般について、徹底したワイズスペンディングを実行するとともに、歳入面での応能負担を強化する」 以上の「骨太の方針2021」が、年末の予算編成に向けて、「骨格となる政府の考え方」になるのは間違いありません。2.令和4年度下水道事業予算概算要求までのプロセスにおける民間企業団体等からの意見聴取とその反映について 令和4年度予算概算要求に向けての自民党の提言をまとめるにあたり、下水道事業に関する与党の公式の政策審議委員会である「自民党政務調査会下水道・浄化槽対策特別委員会(山本有二委員長)」において、地方自治体からの意見聴取と併せ、下水道関係の民間企業団体等から意見を聴取する試みが、4~5月に3回にわたり(うち1回は省庁・地方自治体からの聴取)、実施されました。下水道関係の5つの民間企業団体から、主として、強靭化と脱炭素化(グリーン化)について、意見の発表がなされ、出席された国会議員の方々との質疑が活発に行われ、大変、有意義な会議となりました。民間企業団体等からの主たる意見は、以下です。a. 下水道事業の脱炭素化に向けての多様な展開の推進。具体的には、ゼロカーボン推進スキームの構築、広域化・共同化の推進、新しい技術の積極的採用、技術開発の推進、国費による財政支援。b. 管路・処理施設の強靭化の推進。具体的には、施設の耐水化等。c. 管路・処理施設の管理体制の強靭化の推進。d. 下水中のウイルスRNA検知を行う下水疫学(WBE)調査による新型コロナウイルスリスク管理の推進。 これをベースに、自民党の政務調査会で、「提言」がまとめられ、

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