(38)第1948号 令和3年7月27日(火)発行 第3種郵便物認可4. 下水道インフラと脱炭素 ―脱炭素化推進にとって下水道インフラの役割・責任は極めて大きい―5. 下水道インフラに係る 脱炭素政策、10の提言ント縮減低炭素化技術」と、大気や排ガス中に含まれるCO2をコンクリートに直接、吸収・固定させる「CO2吸収脱炭素化技術」があります。「セメント縮減技術」は、セメント・骨材・水・混和剤等からなるコンクリートの構成成分中で、製造時に多量のCO2を発生するセメントの構成比率を減じ、コンクリート全体から発生するCO2を削減するもので、クリーンクリート、ECMコンクリート、スーパーグリーンコンクリート等があり、実用化レベルに達しています。 一方、「CO2吸収技術」は、すでに、世界で実用化が始まっている米国のソリディア・テクノロジー社の「ソリディアコンクリート」、一部実用化の始まっている日本の「CO2-SUICOM(スイコム)」がありますが、今後のさらなる技術開発が期待される分野です。我が国では、他に、大成建設の「T-eConcrete」、東京大学・清水建設・太平洋セメント他による「カルシウム・カーボネート・コンクリート(CCC)」がありますが、コスト面等本格的実用化は、これからという現状です。 この「コンクリートのCO2吸収技術」は、コンクリート原料製造時・コンクリート打設時、また、将来的には供用時期を通じてCO2を吸収してくれる可能性もあり、技術開発如何では、素晴らしい脱炭素化対策になる可能性を秘めています。空気中等からCO2を吸収する「CO2ネガティブエミッション技術」として、「ネガティブエミッションの貢献を含めた2050年CO2排出実質ゼロ」の達成において、大きな貢献が期待できます。今後、技術開発が遅れると、CO2を多量に排出する「コンクリート」への批判が出る可能性があります。セメントの製造方法の改革によるCO2排出削減・コンクリート中のセメント構成比率の縮減によるCO2削減と合わせて、CO2吸収コンクリートの開発に建設業界あげて取り組むべきと考えます。 我が国の下水道インフラは、現在、年間147億m3の下水を処理しています。その過程で多くのエネルギーを使っており、全国の下水道インフラの電力消費量は、75億kWh/年で、全国の総電力消費量の0.7%を占めています(下水1m3処理あたり、75億kWh/147億m3=0.5kWh/m3の電力を消費しています)。また、温室効果ガスの排出量で見ると、全国の総排出量の0.6%、596万トンを排出しています。これは決して小さな数字ではありません。特に下水道インフラ施設からの温室効果ガス排出量の、当該地方自治体管理施設全体の温室効果ガス排出量に占める割合では、東京都で35%、埼玉県で58%と、下水道インフラからの温室効果ガス排出量は、大きなウエイトを占めています。これは、下水処理場における曝気のためのブロワ運転、処理場・ポンプ場におけるポンプ運転における電力消費が大きいことと、汚泥焼却に伴う一酸化二窒素(N2O)の排出量が大きいことが影響しています。これらの省エネルギー化、運転の効率化は、今後の下水道インフラにおける脱炭素政策で大きなポイントです。 一方、下水道インフラは、他の社会インフラにない「資源・エネルギーを創出するインフラ」という特徴があります。具体的には、下水熱の創出、バイオガスによる発電、汚泥の固形燃料化等です。さらに、今後のポテンシャルとして、処理場の空地を活用した太陽光発電、風力発電、放流地点の段差を活用した小水力発電があります。このように、多様かつ多量なエネルギーポテンシャルを有する下水道インフラは、政府を挙げての脱炭素政策において、寄与度が高く、今後果たすべき役割と責任は極めて大きいといえます。 先ほど、下水1m3あたりの電力消費量を、0.5kWh/m3と計算しましたが、これは、ポンプ施設・雨水系統も含めた数字で、一般的に下水処理では、0.3〜0.4kWh/m3の電力消費と言われています。一方、下水が有する有機物由来のエネルギー量は、1.3kWh/m3、下水汚泥中のエネルギー含有量は0.75kWh/m3と言われており、下水道インフラにおけるエネルギー自立化のポテンシャルは十分あると思います。さらに、下水熱の持つエネルギーは、7kWh/m3あるとされており、今後の下水熱利用のさらなる技術開発・実装が期待されます。 以下、下水道インフラに係る脱炭素政策について、10の具体的提言をしたいと思います。① 国として、また、都道府県ごとに、下水道インフラ関連のCO2削減目標値を設定する。例えば、ⅰ「下水道インフラの使用電力量」を対2013年度比で2030年1/2に、2050年1/10にする。2050年には、1/10になったすべての使用電力量を製造時にCO2を発生しない電力(太陽光・風力・小水力・バイオマス等)で賄い、さらに余剰電力を生み出す。ⅱ「電力以外のCO2直接
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