下水道の散歩道㈱NJS 取締役 技師長 兼 開発本部長(公社)全国上下水道コンサルタント協会 企画委員長谷戸 善彦1. 「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」発表2. 「地域脱炭素ロードマップ(国・地方脱炭素実現会議 6月9日)」にも注目[第46回]第3種郵便物認可 第1948号 令和3年7月27日(火)発行(37)脱炭素視点からの下水道インフラ政策の推進―2050年に向けてのこれからの30年、世界は脱炭素 (GX:グリーントランスフォーメーション)で動く― 2021年6月18日、内閣官房と経済産業省・国土交通省・環境省等8省庁の連名で、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が発表されました。2020年10月26日に菅総理が国会所信表明演説で、「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言したことを受けての政府の骨格戦略をまとめたものです。内容は、「主要な政策ツール」「重要14分野を選定した上での分野ごとの実行計画・工程表」から、なっています。この「グリーン成長戦略」が今後の政府の脱炭素政策(GX:グリーントランスフォーメーション)の柱になります。 また、「グリーン成長戦略」の発表に先立ち、6月9日に、政府の「国・地方脱炭素実現会議」から、「地域脱炭素ロードマップ〜地方からはじまる、次の時代への移行戦略〜」が発出されました。昨年12月に、実現会議を内閣官房に設置して、国と地方自治体で議論してきた成果がまとまり、「グリーン成イラスト:PIXTA3. 建設業界と脱炭素 ―建設関係の脱炭素イノベーション技術では、「コンクリートのCO2吸収技術」が大きな鍵となる―長戦略」とほぼ同時のタイミングで公表されました。国と地方の協働・共創による2050年脱炭素社会の実現に向けて、地域と密接に関わる「暮らし」と「社会」分野を中心に、国民・生活者目線でロードマップをまとめたものです。「脱炭素先行地域づくり」「各地の創意工夫事例を紹介しての横展開の実現」「グリーン×デジタル」「社会全体を脱炭素に向けるルールのイノベーション」など、大変示唆に富む内容となっています。「ゼロカーボンアクション30」など、具体的な提言も豊富です。 下水道インフラ分野の提案も、「下水熱活用」「下水道インフラからのバイオガス活用」「下水道のインフラ空間の太陽光発電への活用」等、数多く取り上げられています。 上記の「グリーン成長戦略」は、産業分野ごとに、企業における戦略を中心にまとめているのに対し、「地域脱炭素ロードマップ」は、地方自治体・国民を中心に、かつ、「暮らし」・「社会」を中心にまとめたものです。 土木・建築に関わる建設業界では、今後の脱炭素化にあたり、技術開発面で、私は、コンクリートに係るCO2対策が最も重要な鍵となると考えています。 我が国の年間CO2排出量は、11億3800万トン/年(2018年)です。このうち、電力分野(主として発電)で、全体の40%の4億6000万トン/年のCO2が排出されています。他に、産業分野から25%、運輸分野から18%、民生分野他から17%のCO2が排出されています。産業分野では、そのうち40%が鉄鋼業から、13%が機械製造業から、8%がセメント・窯業から排出されています。 建設業界は、建設材料について、材料製造時・工事施工時等に素材として、建設機械・車両について、機械車両製造時また使用時の電力として、多くのCO2を発生し、我が国のCO2排出量の1/3に建設業界が何らかの形で関係していると言われています。建設構造物は、素材として、主に、鉄・コンクリート・木材で構成されています。鉄も製造時に多量のCO2を発生しますが、今後、製鉄方法がコークス(C)を使わず水素を使った「高炉水素還元技術」に置き換わると見られており、CO2が大幅に削減されると見込まれています。 こうした中、建設業界からの素材関係のCO2排出として、大きなウエイトを占めるのが、コンクリートです。コンクリートの主材料であるセメントの製造時に、原料の石灰石(CaCO3)からクリンカと呼ばれる生石灰(CaO)を作る工程(CaCO3→CaO+CO2)でCO2が発生します。現在、年間4000万トンのCO2が発生しています。我が国の年間CO2排出量の3.5%です。 コンクリートのCO2排出量削減技術には、セメント使用量を減らしてCO2排出量を削減する「セメ
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