下水道の散歩道 第34-63回
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下水道の散歩道骨太の方針2021とウィズ・ポストコロナ時代の下水道インフラ ―骨太の方針の核となる提言すべてに下水道インフラは深く関与、下水道インフラのレゾンデートル(存在価値)は大きい―㈱NJS 取締役 技師長 兼 開発本部長(公社)全国上下水道コンサルタント協会 企画委員長谷戸 善彦1.骨太の方針2021(経済財政運営と改革の基本方針2021)、発出さる[第45回](36)第1946号 令和3年6月29日(火)発行 第3種郵便物認可下水道インフライラスト:PIXTA克服とポストコロナ時代の我が国経済社会の展望を提示したこと」と「次なる時代をリードする新たな成長の源泉として『4つの原動力』を明示したこと」です。「骨太の方針2021」の柱は、次の5点です(②から⑤が「4つの原動力」です)。① 新型コロナウイルス感染症克服 2021年6月9日、令和3年度第8回経済財政諮問会議が官邸で開催され、今夏の令和4年度概算要求に繋がる「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針2021)」の原案が提示されました。経済財政諮問会議は、国家予算の重点事項・経済財政面の国の基本方向を決定する政府の最高意思決定機関で、総理大臣と主要閣僚、日銀総裁、4人の民間有識者の計10人で構成されています。その中でも、民間有識者4人(現在は、中西宏明・新浪剛史・竹森俊平・細川範之の4議員)の影響力が極めて大きいのが特徴です。かつて、2001年10月には、経済財政諮問会議民間4議員から「上下水道、工業用水道などについては、普及率が上がってきていることを勘案し、整備テンポを遅らせる」との提言を急に出されたことがあります。急遽、当時の曽小川下水道部長と下水道事業課長の私と森岡専門官(現日本下水道事業団理事長)の3人が中心となり、国土交通省として関係方面に説得に回り、その時点では、大きな傷にはなりませんでした。しかし、改めて、今日、その後の20年を振り返ってみますと、2001年時の提言がじわじわと効いているのではないかと私は日々感じています。これほど影響力の大きな「経済財政諮問会議」、その最高意思決定機関が毎年出す「骨太の方針」に、注目する必要があります。2.骨太の方針2021及び民間4委員の関連提案のポイント 「骨太の方針2021」のポイントは、「新型コロナウイルス感染症のとポストコロナ時代への展望②グリーン社会の実現③官民挙げたデジタル化の加速④ 新たな地方創生の展開と分散型国づくり⑤ 少子化の克服、子供を産み育てやすい社会の実現 また、「骨太の方針2021」発出に先立ち、5月25日の令和3年度第7回経済財政諮問会議で、民間4議員連名で、「地方行財政・社会資本整備に関する重点課題」として、次の5つの提案が出されました。ⅰ .国と地方・地方自治体間の役割分担の見直し及び広域連携の推進のためのインセンティブの強化ⅱ .感染症収束後には、早期に、地方財政の歳出構造を平時に戻していくべき(筆者注:この記述からは、今日コロナ対策歳出が大幅に増加している中、来年度以降は、自治体の一般歳出が削減され、下水道インフラへの投資が縮減される懸念を感じます)。ⅲ .二地域居住及びテレワークを活用した転職なき地方移住の推進に向けた対応促進ⅳ .防災・減災・国土強靭化、脱炭素化を見据えた社会資本整備の計画的実行ⅴ .社会資本整備の効果的推進を図るべき。そのため、予防保全型メンテナンスへの早期転換、デジタル先端技術の標準化、民間資金の利活用の強化を図り、ワイズスペンディングを徹底するとともに、毎年度その進捗管理を経済財政諮問会議に報告すべき。年内にPPP/PFI推進アクションプランを改定し、PPP/PFIにおける世界のトップランナーを目指すべき。上下水道広域化の推進・上下水道の老朽化対策におけるPPP/PFI導入を優先的に検討すべき。 この民間4議員の提案が、今後の政府の「地方行財政・社会資本整備」に関する「基本方針・重点政策の柱」となり、令和4年度の概算要求の基本的考え方になると考えます。その意味では、大変大きな提案です。 民間4議員の提案・骨太の方針2021の中に、下水道インフラの関連事項が多く、注視する必要があります。3.ウィズ・ポストコロナと  前回の下水道の散歩道第44回で「下水道インフラは都市の安全・危機情報把握発信インフラである」として、下水疫学(WBE:Wastewater Based Epidemiology)の新型コロナ感染症対策への活用を提言しました。これがきっかけの一つともなって、この1ヵ月間、「WBE」について、多くの動きがありました。 一つは、5月26日の衆議院国土交通委員会で、「下水道の散歩道第44回掲載文」が、参考資料として委員に配布され、荒井聡議員がWBE調査活用促進に向けての質問をされました。 また、6月1日には、自由民主党の「下水道・浄化槽対策特別委員会(山本有二委員長)」が、自民党本部で開催され、「WBEの新型コロナ感染症対策への活用について」、この内容に絞って、集中的に議論がなされました。席上、今年3月に国土交通省下水道部に設置された「下水道における新型コロナウイルスに関する調査検討委員会」の委員長の田中宏明京都大学名誉教授から、最新の日本及び海外の状況と、WBEの新型コロナ感染症対策への活用の可能性・今後の課題等について説明があり、引き続き、日本においてWBEの先頭に立っておられる北海道大学の北島准教授と民間企業から、最新の技術開発動向の報告があり、その

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