第3種郵便物認可 第1939号 令和3年3月23日(火)発行(43)水道インフラ4.おわりに―下水道インフラ、服従的対応施設から意思決定の重要ファクターへ― 下水道インフラは、日本においては、歴史上、常に、開発計画等が別ファクター(要素)で決定された後に、「あとを何とかしろ」という形で付け回し的に指示され、対応してきました。しかし、ストック量が増大し、かつ、下水道は企業会計として経営をしていかなくてはならない今日、大きく発想を変えていかねばなりません。「服従的対応」から「意思決定の重要ファクターとして物申す下水道インフラ」へ、意識変革をしていかねばなりません。二地域居住・地方移住への対応は、そのよい機会です。これは、下水道インフラだけのためでなく、自治体・国民のためにも理にかなったことです。今後の下水道インフラ関係者の意識改革、そして下水道インフラへの社会の見方・意識の変革を推進していきたいものです。トな経済社会の構築に向けての方向性として、「デジタル化の推進」とともに、「自然災害や感染症に対して脆弱な『大都市集中』の緩和」を提示しています。具体的には、地方のレジリエンスを向上させるため、サービスやインフラを効率的に集約する「コンパクト化」や通信・交通の「ネットワーク化」を求めています。 以上のように、都市から地方への移住・機能分散の議論が、加速しています。2.二地域居住・地方移住政策推進にあたっての留意点・進展の鍵 3月9日の全国二地域居住等推進協議会に600以上の自治体が名を連ねたように、全国の自治体は二地域居住そして地方移住に大きな期待を寄せています。しかし、コロナ禍による地方公共団体の財政逼迫等、現下の厳しい状況を見定めての施策推進が必要です。推進にあたっての留意点・進展の鍵として、以下を挙げたいと思います。① 実践者・受け入れ側ともに、財政・経済負担をできるだけ少なくする。② 実践者として、従来の別荘のように資産家しか購入・実践できないのでは、施策の拡がりは望めない。実践者の経済負担をイニシャルコスト・ランニングコストとも少なくすることが必要。会社が地方に移転する場合も同様。③ 受け入れ側の自治体は、バブル時代や一昨年までと違い、コロナ禍により、財政状況がかつてないほど厳しくなっている。その中での二地域居住・地方移住の推進であることを認識すべき。国に財政支援を頼っても、国の財務状況はさらに厳しい状況。新型コロナによるテレワークの劇的な進展は、確かに大きなチャンスだが、財政状況を、強く意識する必要がある。④ そのため、かつての日本列島改造論時代のように、都市からの住民の受け入れのために地元の社会インフラ整備に大々的に財政出動を行うといった発想はやめるべき。既存インフラストック・地域の既存資産をいかにフル活用するかに力を注ぐべき。ソフト対策・知恵が求められる。ただ、地方における仕事・余暇の充実のための通信インフラの整備だけは、充実する必要があるが、これは、民間通信事業者にかかっていると言える。⑤ 二地域居住・地方移住は、固定資産税・住民税等の税制の改革によっては、大きく進展する可能性がある。上記で述べたストック活用と、税制が鍵と考える。3.二地域居住・地方移住と下 今後、二地域居住・地方移住の推進に向けて、大きく舵が切られることとなります。その際、地方の受け入れ自治体において、受け入れ者の居住場所や開発地選択がなされることになるでしょう。その中で、下水道インフラ等、排水処理システムの対応は、大きな課題・検討要素となります。汚水処理をどうするかです。汚水処理は、都市から来る実践者にとっても、自治体にとっても、負担費用の中で大きなウエイトを占めます。汚水処理をゼロから整備すると、相当の費用負担・財政負担となります。従来ですと、交通の便等利便性・土地確保のし易さ・景観等から居住場所や立地場所を決め、汚水処理は、その決まった後に、適切に対応するという流れでした。しかし、かつてのように、下水道普及率が50%以下という時代ではありません。80%まで整備が進んできています。農業集落・漁業集落排水事業・コミプラ等を入れるともっと大きな数字です。そうした中、下水道インフラの対応・下水道インフラからの発信として、以下を提言したいと思います。① 下水道インフラのストック有効活用の観点から、現在の管路・処理施設の余裕度を見定めた上、下水道インフラの既整備地域・近く整備がなされる地域・既整備地域までの距離が近い地域に積極的に居住地・開発地を選択する。自治体の中で、下水道部局が、市長部局・開発部局・都市計画部局に強く進言する。下水道区域への流入人口増で、自治体の下水道経営に大きく寄与する可能性がある。また、離島等では、漁業者から処理水等の放流に厳しい条件を付けられることが多く、下水道既整備区域内で下水道インフラに汚水処理を任せられると段取りが早く進む可能性が強い。② 内水被害対応の観点から、下水道雨水整備済地域・近く整備がなされる地域・浸水の被害リスクの著しく低い地域に積極的に誘致する。上と同様に、自治体内部で、下水道部局が強く進言する。③ 分流式下水道地域で、管路・処理施設に余裕のある場合、単体ディスポーザの使用をこのタイミングで解禁する。都市から来る住民にとって前処理する必要がなく、単体ディスポーザを戸建て住宅で使用できるのは、大きな魅力となる。特別の「ディスポーザ使用料」の徴収があっても、利用者の利益は大きいと考える。④ こうした全国の自治体の下水道利用可能住所地番・内水被害からの安全地域住所地番・単体ディスポーザ使用可能住所地番をマップ等も使用し、各市町村・都道府県・国土交通省等で公表する。今後整備の進む「下水道共通プラットフォーム」での提供も有効。
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