下水道の散歩道 第34-63回
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(実践する側にとって)a.実践者にとって ①ゆとりある生活の享受 ②心、体、健康等の癒し ③ 趣味を生かす、それでいて充実した仕事をこなす、2倍楽しい人生を過ごす て下水道の散歩道二地域居住・地方移住の動きと下水道インフラ―下水道インフラ、服従的対応施設から㈱NJS 取締役 技師長 兼 開発本部長(公社)全国上下水道コンサルタント協会 企画委員長谷戸 善彦1.二地域居住・地方移住の動き 今月、3月9日、国土交通省国土政策局の肝いりで、「全国二地域居住等促進協議会」が設立されました。いわゆる「デュアルライフ(週日都市・週末地方の住み方や季節により都市・地方を住み分ける等種々のパターンがある)」の促進協議会です。協議会は、都市で生活しながら、地方でも暮らす新たなライフスタイルの普及に向け、600を超える地方公共団体の正会員と、関係団体・民間事業者からなる30程度の協力会員で構成されています。国土交通省・内閣官房・内閣府・総務省・農林水産省が全面的に協力するとしています。設立の背景について、国土交通省は、次のように述べています。 「近年、二地域居住は、都市で生活しながら地方での豊かな暮らしを実現できる、いわば人生を2倍楽しむライフスタイルとして提唱され、促進、実践されてきています。加えて、ウィズ/ポストコロナ社会において、テレワーク等を前提に、地方での新しい生活様式に沿った新たな二地域居住が可能となるとともに、そのニーズが高まりつつあることを踏まえ、当協議会が設立されることとなりました」 私は、真に豊かなライフスタイルとして、以前より、「二地域居住」は、魅力ある施策と考えていましたが(下水道の散歩道第20回(令和元年5月)で言及)、新型コロナを契機としたテレワークの大きな前進により、可能性・発展性は、飛躍的に高まってきたと考えています。 「二地域居住」は、実践者側・受け入れ側の双方にとって、次のメリットがあります。[第42回](42)第1939号 令和3年3月23日(火)発行 第3種郵便物認可意思決定の重要ファクターへ―イラスト:PIXTAb.企業にとって ①働き方改革実践 ②社員の福利厚生に寄与 ③ 社会貢献活動の実行に繋げる ④新たなビジネス創出機会増加(受け入れ側にとって)a.受け入れ地域の住民にとって ①コミュニティーの活性化 ②地域を支える人材不足の解消 ③ 多様な考え方の融合による地b. 受け入れる地方公共団体にとっ ① 地域に仕事が生まれる可能性 ② 十分活用されていない農地・林地・インフラ等の活用促進 ③消費増加等の経済効果 ④ 税収の増加による自治体財政状況の好転(今後の制度設計如何では大きく伸びる可能性も) このように、受け入れ自治体においても、大変魅力ある仕組みですので、協議会発足前から、北海道から沖縄まで、大阪府下の市町村を除く46都道府県の計601もの自治体が協議会に名を連ねています。 一方、新型コロナを契機に、個人および企業の「地方移住」の動きも出ており、国土政策の再検討の機運も見られています。もともと、2011年の東日本大震災、ここ数年の全国における水害の激化・頻発化を受け、リダンダンシー(代替性)・サプライチェーンの再構築機会増加域の発展機会の増加増加の検討がなされていた中、新型コロナで、急速に議論が進みました。 具体的には、官では、今年1月に国土交通省がまとめた「企業等の東京一極集中に関する懇談会」の提言、民では、2月に経団連がまとめた提言「非常事態に対してレジリエントな経済社会の構築に向けて」があります。それぞれの具体的内容は、以下のとおりです。 「企業等の東京一極集中に関する懇談会」は、新型コロナ拡大による影響や諸外国との比較も踏まえつつ、企業活動や働き方等をはじめ多角的な観点から、東京一極集中の要因と是正に向けての取り組みの方向性について、検討が行われました。東京一極集中の要因としては、①大学や企業の本社等の東京への集中、②東京の魅力や地元の不便さ・閉塞感、③人や諸機能・施設が過度に東京に集中していることのリスクへの認識の低さ―が挙げられました。一極集中緩和の可能性としては、①コロナを契機としたテレワークの進展による職場と仕事の分離に向けた動き、②コロナを境に若年層を中心とした地方移住への関心の高まり、③東京の中間層の世帯は、他地域に比べ経済的に見ても豊かであるとは言えない実態(東京都は、都道府県別で可処分所得と食・住などの基礎支出の差額では42位、費用換算した通勤時間も考慮すると最下位の47位)が示されました。今後の取り組みの方向性としては、①東京都心の仕事を地方や東京郊外で行うテレワークの普及、②地方で学び、働くことのできる環境の整備。これにより、就学・就職に伴う若者の東京圏への集中の是正、③働き方・暮らし方における都市と地方のベストミックスの実現④ライフステージに応じた地方居住も選択可能となる環境整備―が提示されました。また、提言では、「我が国の成長を牽引すべき東京の国際競争力の維持・向上とのバランスにも留意」との指摘も明示されました。 経団連提言の「非常事態に対してレジリエントな経済社会の構築に向けて」においては、新型コロナへの対応で浮き彫りになった企業や社会の課題を整理するとともに、求められる対策を取りまとめています。この中で、レジリエン

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