下水道の散歩道 第34-63回
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(38)第1937号 令和3年2月23日(火)発行 第3種郵便物認可3.「DX・GX・BX」を巡る日本政府の動き5.下水道インフラのDX・GX・BXへの貢献と対応図:DX・GX・BX+TI・MIが世界を変える92兆円とするという目標が打ち出されました。4.世界・日本におけるDX・GX・BXの推進に向けて ―縦串としてのDX・GX・BXと、横串としてのTI・MI― 上で述べたように、私は、2021年からの次の25年、世界を、また日本を変える主役は、産業分野の縦串で分類した時、「DX」「GX」「BX」だと考えています。しかし、変革のエンジンが何かを考えると、それは、技術革新(Technology Innovation:TI)とマネジメント革新(Management Innovation:MI)です。マネジメント革新とは、法律・予算制度・税制度の制定、規制改革、組織改革、標準化、リスク管理・運営管理・経営の改革等です。この技術革新とマネジメント革新は、横串ともいえるものです。この縦串と横串が機能した時、大きく世界が変わるでしょう。 近未来の、世界の、日本の針路・政策・経済活動の根幹をなすであろう「DX」「GX」「BX」。このいずれにも、下水道インフラは深く関係し、大きく貢献します。今後の世界の動きに、下水道インフラは、重要な役割を果たします。今後の下水道インフラの政策立案・施策実行にあたり、強くこのことを意識し、「DX・GX・BX」の推進に強く関わり、下水道インフラのレゾンデートル(存在意義)を発信していくことが重要です。一方で、世界の大きな動きの根幹をなす「DX・GX・BX」に下水道インフラは、技術革新面・マネジメ DXについて、私が「下水道の散歩道」で初めて言及した2年前には、下水道界では、まだまだDXは、十分認識されていませんでした。いまや、DXは、時代の寵児です。多くの提言・報告等が出ていますが、DXに関して、日本政府の最新の見解・政策方向が述べられているのは、昨年末の12月27日に経産省が発表した「DXレポート2」と今年1月8日に同じく経産省が発表した「デジタル市場に関するディスカッションペーパー」です。的確で先導的な両提言の主要内容は、以下です。① 経産省の「DXレポート1」から2年経過した現在、「DXの取組を始めている企業」と「まだ何も取り組めていない企業」に二極化。② コロナ禍でDXにより変化に対応できた(企業文化も含め)企業とそうでない企業で差がついてきている。③ コロナ禍で、人々の固定観念が変化。テレワークの拡大等デジタルを活用した社会活動に移行。この流れは元に戻らない。DXにより、ビジネスを今変化させなければ、その企業・組織は、デジタル競争の敗者に。④ 超短期に必要なアクションは、「DXの認知・理解」。短期の必要アクションは、ⅰ「DX推進体制の整備」、ⅱ「DX戦略の策定」、ⅲ「DX推進状況の定期的把握」。中長期的必要アクションは、ⅰ「内製アジャイル開発体制の確立」、ⅱ「業界内の他社と協調領域を合意形成した上での共通デジタルプラットフォームの形成」、ⅲ「DX人材の確保」。⑤ DXを加速させるポイントの一つは、データの流通。データの流通によって、あらゆるものが繋がることで、国境を越えてデータ駆動型ビジネスが実現。この際重要なのが、プライバシーデータの保護・知的財産権保護・セキュリティ。これらが担保された上でのデータの流通・ビッグデータの活用がDXを加速・進化させる。 GXに関して、政府がその政策方向を公式に示しているのは、昨年12月25日に、経産省が関係省庁と連携して策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」です。菅政権が掲げる「2050年カーボンニュートラル」への挑戦を「経済と環境の好循環」に繋げる内容の濃い産業政策提言です。 「温暖化への対応を、経済成長の制約やコスト増と捉える時代は終わり、成長の機会と捉える時代が始まる」。発想の大転換という点で極めて重要な提言です。14の重要分野ごとに、高い目標を掲げ、現状の課題と今後の取組を明記し、予算・税制・規制改革・標準化・国際連携等、あらゆる政策を盛り込んだ実行計画を策定しています。 BXに関連して、政府が方向性を公式に示し、核となっているのは、政府の「統合イノベーション戦略推進会議」で2019年6月11日に決定された「バイオ戦略2019」です。それを踏襲し、昨年6月26日には「バイオ戦略2020」が策定されました。今年1月19日には、同推進会議で「バイオ戦略2020(市場領域施策確定版)」が決定され、2030年の我が国のバイオ産業の市場規模が92兆円となる試算が発表されました。日本の国内総生産が550兆円ですから、92兆円はインパクトのある数字です。核である「バイオ戦略2019」では、我が国の全体目標として、「2030年に世界最先端のバイオエコノミー社会の実現」を掲げ、我が国の強みと世界の潮流・市場の成長性を考慮し、次の9つの重点市場領域を設定しています。①高機能バイオ素材、②バイオプラスチック、③バイオスマート農業システム、④有機廃棄物・有機排水の処理、⑤ヘルスケア・機能性食品、⑥バイオ医薬・再生医療・遺伝子治療、⑦バイオ生産システム、⑧バイオ関連分析・測定・実験システム、⑨木材活用大型建築・スマート林業。 この9分野合計で2018年には60兆円だった市場を2030年には

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