下水道の散歩道DX・GX・BX(トリプルX)が世界を変える―デジタル(DX)・グリーン(GX)・バイオ(BX)のトリプルトランスフォーメーション + 技術革新(TI)・マネジメント革新(MI)により、世界が変わる――今後、下水道インフラのDX・GX・BXへの貢献と対応が非常に重要―㈱NJS 取締役 技師長 兼 開発本部長(公社)全国上下水道コンサルタント協会 企画委員長谷戸 善彦1.はじめに 前回第40回で、「歴史のものさし」を考えるにあたり、有名な周期説として、経済の世界で景気変動の波にあてはめられる50年周期の「コンドラチェフの波動周期」と、社会学者で元東京大学副学長の吉見俊哉教授による「25年単位説」を紹介しました。吉見教授は、次の25年、即ち、2021~2045年を次のように予測しています(この予測を吉見教授は、2017年3月に発刊された書き下ろしの著書『大予言「歴史の尺度」が示す未来』(集英社新書)の中で述べています。3年後のコロナ禍を予測していたかのようです)。 「世界で様々な矛盾や困難がこれまで以上に露呈する。しかし、本当の変革は困難な時代にしか起こらない。それゆえ、世界にとって、それ以上に日本にとって、次の周期は、構造的な変革がなされる時代となる。大きな変革の機運が高まる」 私も全く同感です。今年から始まるこの25年(quarter century)の「変革(トランスフォーメーション)」が日本の将来を左右するといっても過言ではないでしょう。 世界にとって、日本にとって、今年から始まる次の25年の「針路」「政策」「経済活動」の根幹をなすものは何か。私は、トリプルXというべき次の三つ、「DX・GX・BX」、即ち「デジタルトランスフォーメーション(DX)・グリーントランスフォーメーション(GX)・バイオトランスフォーメーション(BX)」と考えています。[第41回]第3種郵便物認可 第1937号 令和3年2月23日(火)発行(37)イラスト:PIXTA(注.英語圏の国々では、transをしばしばXで表現します。それにより、デジタルトランスフォーメーションは、DXと呼ばれるようになりました。GXは、私もその用語を昨秋より考えていましたが、市場関係者等の一部が2020年末より使い始めています。BXは、私が自分で考えて、今回初めて使った言葉です。あとで出てくるTI・MIも私が考えた言葉です)2.次の25年、世界を、日本を変える根幹の変革・動きは何か 私は、2021年からスタートした次の25年において、「DX・GX・BX」が世界を変えると考えています。 DXは、すでに大きなウェイブ(波)となっています。DXとは、単なるICT化ではありません。AI・IoT・クラウド・ブロックチェーンなどの暗号化技術・センサー・超高速通信等のデジタルテクノロジーとビッグデータを活用することによって、企業の在り方・ビジネスの成り立ちを根本から変革することです。経済産業省が発表した「DX推進ガイドライン(2018年12月)」では、企業を対象としたDXについて、次のように定義しています。 「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」 DXは、いまや、企業の中だけの話ではなく、「国家」「社会」「経済」等あらゆる分野の変革の話として捉えられています。 GXは、「グリーントランスフォーメーション」です。昨年10月26日、菅総理は、就任早々の所信表明演説で、「2050年までに日本は温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」という「脱炭素化宣言」を打ち出しました。欧州の国々等ではすでに、パリ協定等に基づき、CO2削減を大きく打ち出していた中、遅れを取っていた我が国にとって、素晴らしい慧けい眼がんを持った政策提言でした。この政策提言を境に産業界も大きく動き始めました。経産省・環境省等、官の世界も動きを強めています。この脱炭素化の動きは、2050年を見据え、次の25年の最も大きな政策テーマの一つとなるでしょう。CO2削減を進めなければ、地球の温暖化はますます進行し、地球のサステイナブルな発展が不可能となることは必至です。昨今の水害・雪害等、災害の頻発化・激化は、地球温暖化によることは、明らかです。その点からは、「防災・減災・国土強靭化」への対応は、このGXの中で考えるべきでしょう。 BXは、「バイオトランスフォーメーション」です。ゲノム編集等のバイオテクノロジーを活用したバイオ医薬品の開発・再生医療の推進、バイオ素材の開発、バイオテクノロジーを使っての廃棄物処理・排水処理・スマート農業・ヘルスケア、バイオ関連分析・測定・実験システム等バイオ分野は、極めて有望な基幹的産業が目白押しです。私は、この分野は日本が得意な分野でもあり、次の25年の鍵となる政策・経済活動の根幹分野と考えています。特に、コロナ禍を受け、ワクチン製造・コロナ対応医薬品開発・コロナ分析測定等におけるバイオテクノロジーの果たすべきミッションが急拡大し、この一年で、一躍、BXの重要性は高まり、大きな期待がかけられるようになりました。
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