(34)第1935号 令和3年1月26日(火)発行 第3種郵便物認可【筆者略歴】1974年3月、東京大学工学部都市工学科卒業後、同年4月、建設省入省。1987年西ドイツカールスルーエ大学客員研究員、1991年京都府下水道課長、その後、建設省下水道事業課建設専門官(予算総括)、同下水道事業調整官、東北地方整備局企画部長、国交省下水道事業課長、国交省下水道部長、日本下水道事業団理事、日本下水道事業団理事長(公募による選任)等を歴任。2017年3月より現職。2018年6月より、全国上下水道コンサルタント協会企画委員長。公益財団法人河川財団評議員、日本非開削技術協会(JSTT)理事等も務める。著書に「21世紀の水インフラ戦略(理工図書 書き下ろし)」がある。 ●「下水道の散歩道」は、月1回(各月後半発行号)の掲載です。か。まさに、今、将来を俯瞰したサステナビリティを意識したビジョンと骨太の政策が求められています。4.下水道インフラのサステナブルな将来を俯瞰するとき、今、求められている真に国民に寄り添った、国民のための「骨太の政策」は何か 私は、中長期周期説の初年度である2021年を、この「国民のための真に骨太の政策は何か」をじっくり、議論する年にすべきと考えています。私が、サステナブルな下水道インフラマネジメントを実行していくために、今考えている「骨太の政策」の一例は、次のようなものです。(1)ヒト関連①都道府県の立ち位置 小規模市町村は、ヒト・執行体制の面より、今後、サステナブルな下水道インフラマネジメントは難しいでしょう。市町村の下水道インフラの財産権は市町村に残したうえで、都道府県が全面的に県下全域の下水道インフラマネジメントを行うことを検討すべき。②日本下水道事業団の立ち位置 都道府県が対応できない場合、市町村の改築更新・維持管理・経営等のマネジメントを直接日本下水道事業団が実施することを検討すべき。また、都道府県が市町村のマネジメントを実施し、一部または全部を事業団に委託する仕組みも検討すべき。③民間企業によるマネジメント 従来からのコンセッション等によるマネジメントの実施の他、都道府県経由での全面委託・日本下水道事業団からの委託がありうる。その制度設計を検討すべき。④国の直轄事業 複数の都道府県にまたがる事業、首都機能確保等国策的事業、革新的な技術開発事業等で、国の直轄事業を検討すべき。(2)モノ関連①広域化・共同化・一括化 サステナブルな下水道インフラマネジメントのためには必須。NTTが世界の最先端に位置して技術開発を進めているIOWN構想(アイオン:Innovative Optical and Wireless Network すべての通信を光(フォトニクス)ベースで繋ぐ革新的ネットワーク技術。現状よりはるかに高品質・大容量・低遅延・低消費電力の通信が可能となる。2030年実現を目指している。これにより、GAFAを日本が逆転する可能性があると言われている)の実現により、下水道インフラの維持管理等のマネジメントが激変する可能性がある。②技術開発 サステナブルな下水道インフラマネジメントを実行するためのイノベイティブ(革新的)な技術開発の推進、IoT・AI・ドローン・ロボティクス・センサー等DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進、2050年のCO2ゼロに向けてのGX(グリーントランスフォーメーション)の推進が重要。その中で特に下水道のIM(インフラメンテナンス)の高効率・安全・高精度・コストスリム化の推進、下水道インフラ分野でのバイオテクノロジーの進化(次世代シーケンサーを活用した活性汚泥の劇的進化、ゲノム編集の活用等による微生物燃料電池の進化等)には注力すべき。国が主導的に実施すべき。技術開発等は、国が直轄事業として新技術を活用した実プラントを設置・管理・運営することを検討すべき。③組織論 下水道インフラを担う国の組織の在り方等も検討すべき。(3)カネ関連①新しい特定財源 今後、国の一般会計予算は、間違いなく厳しくなる。「環境・エネルギー創造税」のような新税を創案し、下水道インフラの特定財源を確保することを検討すべき。5.おわりに 4.で述べた検討事項は、いずれも、大変大きなものです。数年前までであれば、私も、すぐ、断念していたでしょう。しかし、国民のニーズ、地方公共団体の状況、民間等の意識・力、技術開発状況、そして何より大きい現在の政治状況、官邸の状況、財務省・総務省・農水省・環境省等各省庁の状況は大きく変わってきています。今は、真に、国民のためになる施策であれば、決して実現が不可能ではないと考えています。2021年、中長期周期のスタートの年にあたり、下水道インフラ界あげて、具体的に「真に骨太の政策は何か」を議論し、実現への道筋をつけていきたいものです。
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