下水道の散歩道 第34-63回
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第3種郵便物認可 第1935号 令和3年1月26日(火)発行(33)3.2021年、日本そして下水道インフラは新しい周期・新しいステージへ資本整備総合交付金)の支援対象に追加。 このことから、財務省が、令和3年度の下水道インフラ予算に関連し、内水氾濫対策、維持管理情報のデジタル化・統合化、PPP/PFI、農業・漁業集落排水との連携を含めた広域化・共同化に強い関心を示していることがわかります。(4)令和3年度下水道事業予算の注目点 私は、令和3年度下水道事業当初予算について、以下の諸点に注目しています。① 水害の激甚化・頻発化のなか、外水対策だけでなく、内水氾濫対策に対しても、財務省の理解が得られ、大きな成果があったと思います。具体的には、「下水道浸水被害軽減総合事業の拡充」「雨水管の交付対象範囲の拡充」「官民連携浸水対策下水道事業の創設」「浸水被害対策のための雨水貯留浸透施設の整備に係る固定資産税特例措置の新設」の新規事項すべてが認められたことと、何より個別補助金である「下水道防災事業費補助」の1.57倍という大幅増です。個別補助金は、まだ、事業費規模が大きくありませんが、今後を考えるとき、極めて大きな成果です。② 新型コロナ感染症対策として、下水道総合地震対策事業について、感染症拠点病院等に係る管渠等の耐震化事業が交付対象に追加されたことは注目です。大規模地震の発生により、感染症との複合災害が懸念される中、人の命を衛る「衛生インフラ」である下水道インフラの災害対策は急務であり、時宜を得た施策です。これにより、新たに交付対象となる管渠は相当量あると思います。③ 「改良復旧事業の創設」も注目です。下水道施設が被災した場合の災害復旧事業は、今まで、原形復旧が基本で、再度災害の恐れがあるケースが多くありました。今回、再度災害防止のための機能増強等を行う「改良復旧」が認められたことは、非常に大きな成果です。④ その他、「先に述べた財務省肝いりの下水道地域活力向上計画策定事業の拡充」「紙オムツ受入による下水道施設への影響調査経費が引き続き認められたこと」「地方単独事業を行う際に起債条件が非常に良い『緊急自然災害防止対策事業債』の起債対象に下水道(流域治水対策)が認められたこと」も大きな成果です。⑤ 以上のように、令和3年度下水道事業当初予算は、幅広く拡充が認められ、内容の濃い予算です。次年度以降に向けては、ⅰ. 5か年加速対策の下水道関係は、現在、流域治水対策・地震対策・老朽化対策の3点が政府全体の合計123施策の中に入っていますが、加速対策の見直しがあった場合、その範囲の拡充、内容・目標の見直しの検討が重要です。ⅱ.また、道路・河川・海岸・港湾ですでに令和2年度より認められている地方公共団体に対する「メンテナンス補助制度」の創設要求―を行うべきです。 新型コロナに世界が翻弄された2020年は、世界の歴史の中で、将来、振り返った際に、間違いなく大きな変曲点になる年でしょう。「歴史のものさし」を考えるとき、有名な周期説の一つには、経済の世界で景気変動の波にあてはめられる50年周期の「コンドラチェフの波動周期」があります。また、周期説として、最近では、社会学者である東京大学大学院情報学環の吉見俊哉教授の「25年単位説」があります。吉見教授によると、日本の戦後史を振り返ると、1945~1970年は「復興と成長の時代」、1970~1995年は「豊かさと安定の時代」、1995~2020年は「衰退と不安の時代」となります。私は、わが国の下水道インフラの世界も、まさに、この25年・50年の周期で動いていると考えます。 日本の下水道インフラ行政が大転換を遂げたのは、戦後25年が経った1970年です。この年、公害国会が開催され、下水道法の大改正が行われました。下水処理場の設置が法律上ようやく義務付けられ、下水道インフラが公共用水域の水質を改善する「環境保全インフラ」として認められ、国民の税金が下水道インフラの整備に大手を振って導入されるようになりました。翌1971年には建設省下水道部が、1972年には日本下水道事業団の前身である下水道事業センターが設立されました。1970年以降、下水道インフラは、劇的に発展を遂げました。 そして、25年後の1995年前後は、下水道事業予算のピーク時で、その間の25年は、「下水道インフラの整備拡大・成長」の時代でした。この1995年には、阪神・淡路大震災があり、下水道インフラの計画・整備・管理・経営に関する考え方の大変化・パラダイムシフトがありました。下水道インフラシステム全体の耐震性・リダンダンシーの確保、大地震後の復旧復興マネジメントの手法が下水道インフラ界に根付きました。 その後の1995~2020年の25年間は、下水道インフラは「従来の汚水普及整備一辺倒」から、「浸水対策、合流式下水道改善、資源エネルギー創出、地震・津波対策、改築更新、経営マネジメント、技術革新といった多様なニーズに対応する時代」となり、建設予算は減少の一途を辿りましたが、「量の拡大から質の向上」を目指し、着実に進化してきました。下水道インフラの世界にも、ずばり、25年周期説はあてはまると考えます。 2021年は、次の25年・50年の周期のスタートの年です。次の25年50年をどのようにもっていく

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