下水道の散歩道㈱NJS 取締役 技師長 兼 開発本部長(公社)全国上下水道コンサルタント協会 企画委員長谷戸 善彦1.はじめに 2021年が明けました。新型コロナと自然災害のダブルパンチに見舞われた歴史に残る2020年が過ぎ、新しい年がスタートしました。2020年末からの新型コロナの第三波は、感染爆発状態を引き起こし、1月7日には、2回目の非常事態宣言が発出されました。2021年は、波乱のスタートとなりましたが、私は、2021年は、下水道インフラ界にとって、将来を考えるうえで、非常に重要な節目の年になると考えています。「下水道の散歩道」も、読者の皆様のおかげで、今回、40回目の節目を迎えました。この節目のタイミングで、「下水道インフラの将来に向けての真の『骨太の政策』として、今求められているものは何か」について、議論のきっかけを提起したいと思います。その前段で、まず、新しいステージのスタートを切る令和3年度下水道事業予算について、読み解きます。2.令和3年度下水道事業予算を読み解く。注目点は(1)政府予算全体のポイント 2020年12月21日に、令和3年度当初政府予算案が閣議決定されました。それに先立って12月15日に、「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化戦略」が盛り込まれた令和2年度第三次補正予算案が閣議決定されており、公共事業等は、両者を合わせて、15ヵ月予算として、執行されることに[第40回](32)第1935号 令和3年1月26日(火)発行 第3種郵便物認可2021年、下水道インフラの新しい周期・新しいステージ始まる―令和3年度下水道事業予算を読み解く――そして、「今、求められている下水道インフラの真の『骨太の政策』は何か」の議論のスタートを―イラスト:PIXTAなりました。令和3年度当初政府予算のポイントとして、財務省は、12月21日、次のように発表しています。 「第三次補正予算と合わせ、感染拡大防止に万全を期しつつ、中長期的な重要課題即ち①デジタル社会、②グリーン社会、③活力ある地方(地方への移住支援等)、④少子化対策等全世代型社会保障―に対応した予算とした」 引き続きのコロナ対策以外では、日本政府全体として、上記4点を最重要としています。この4点は、いずれも、下水道インフラの将来を考えるとき、非常に重要な項目です。下水道インフラ界のDX化、2050年のCO2ゼロに向けての下水道インフラの貢献と対応、地方部への移住を支援する下水道インフラの整備、人口減少下での下水道インフラのサステナビリティの確保―の観点からです。コロナ対策における衛生インフラとしての下水道インフラの重要性、下水中の新型コロナウイルス測定による流行・終息の予測・判断等、コロナ対策としても、下水道インフラは重要な役割を果たしています。下水道インフラは、令和3年度当初の政府予算の最重要項目のいずれにも深く関わっています。(2)公共事業関係予算全体のポイント 財務省は、公共事業関係予算のポイントとして、公式発表で次のように述べています。 「当初予算として、公共事業関係は安定的に確保した(国費6兆695億円、対前年度比1.00倍)。流域全体での治水対策や新技術を活用した老朽化対策など、防災・減災、国土強靭化への重点化を図った。その中で、インフラの人口一人当たり維持更新コストの増加抑制を求めたい」 公共事業関係の当初予算は、平成27年度当初予算以降、7年間、特殊要因を除き、ほぼ対前年度比1.0倍で推移しており、財務省は、今回の「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」の1年目も当初予算として計上するのではなく、補正予算での対応としました。ここに、国土強靭化対応もあくまで、特例であり、公共事業関係予算は、伸ばさないという財務省の決意を強く感じます。下水道インフラにおいても、新技術を活用した老朽化対策、維持更新コスト抑制が重要課題として、突き付けられています。(3)財務省発表の下水道事業予算についてのポイント 財務省は、12月末の公共事業担当藤﨑主計官の記者発表で、下水道インフラについて、以下の2点を特筆しています。①市街地浸水対策の強化 集中豪雨等による内水氾濫等の被害軽減に向け、地方公共団体や民間事業者への雨水貯留浸透施設の整備補助を拡充するとともに、内水浸水に対処する雨水管等の雨水処理施設の整備の加速化のため、雨水に係る下水道の個別補助(下水道防災事業費補助)を、前年度の244億円から384億円と1.57倍に拡充。② 下水道等における維持管理情報のデジタル化。PPP/PFI活用の加速化 下水道事業が、農業集落排水等とも連携し、維持管理情報のデジタル化・統合化を進め、PPP/PFI、運営の広域化を加速するため、下水道施設及び農業・漁業集落排水等の施設において一体的に実施される計画の策定経費等を、下水道地域活力向上計画策定事業(社会
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