下水道の散歩道 第34-63回
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イラスト:PIXTA1.8~3倍であったのが、現在は、3.1%まで下がりましたが、まだ、主要先進国の1.2倍~1.6倍で、引き続き高い水準だと主張しています。国土交通省は、従来、「わが国は国土の形状が細長く、海峡と脊梁山脈、河川により分断され、地震等自然災害多発国であり、国土形状や自然環境に恵まれた国と比べれば当然、多くの投資が必要となる」と反論してきましたが、「かつての整備期はそうであったとしても、一定程度整備が進んだ現在は、状況は違う」が財務省の見解です。 社会資本整備について、財務省は、上記提出資料の中で、「今後の社会資本整備の基本的方向性」として、以下の5点を提示しています。ⅰ.今後、人口減少等により、社会資本における人口一人当たりの維持管理コストの増加が見込まれる。社会資本が概成しつつある中で、新規投資や老朽化の進展に伴う維持更新コストの更なる増加を避ける必要。下水道の散歩道1.財務省財政制度等審議会財政制度分科会歳出改革部会の議論[第39回](38)第1933号 令和2年12月15日(火)発行 令和3年度予算編成における財務省の視点―中長期的には、社会資本整備への国費抑制基調を強く感じる――今後は、社会インフラ間で予算確保競争に。その中で、下水道インフラの多重効果(超マルチエフェクト)を前面に打ち出した差別化戦略を。そして、新財源検討へ―㈱NJS 取締役技師長兼開発本部長(公社)全国上下水道コンサルタント協会企画委員長谷戸 善彦 第3種郵便物認可2.行政改革推進会議「秋の行政事業レビュー」での下水道インフラに関する議論3.下水道インフラの財源確保に向けて 令和3年度政府予算原案が12月の末に、発表されます。各省庁は、例年より1ヵ月遅れで締め切られた9月末の概算要求提出のあと、現在、財務省と折衝を重ねています。こうした中、10月、11月に、財務省では、財政制度等審議会の部会等が開催され、令和3年度予算編成の基本方針等が議論されています。財務省から部会への提出資料の中に、財務省の考え方を読み取れます。災害多発の中、3年間継続されてきた「防災・減災、国土強靭化」の予算上乗せは、あと5年間延長されると報道されています。しかし、私は、ここ1、2年の災害の激甚化・頻発化を考慮しても、5年後から先の中長期的には、社会資本整備に国費がより重点的に配分されることは難しく、社会資本整備について、財務省は、非常に厳しい見方を取っていると感じます。更新・維持管理の必要性は認めながらも、国の財政難の中、財政規律の遵守が最重要であり、国費の増大は認められないという姿勢です。 10月19日に開催された財務省の財政制度等審議会の歳出改革部会で、財務省から、「社会資本整備」について、「社会資本整備を取り巻く状況」と「令和3年度予算における主な重点政策」という資料が提出されました。「社会資本整備を取り巻く状況」の資料の中では、「一般政府総固定資本形成(IG公共投資額と類似)の対GDP比」の推移が米・英・独・仏との比較で示されています。1993年のピーク時には、6.3%で、主要先進国のⅱ.足元で建設労働需給がひっ迫し、今後労働力人口が減少する中で、建設業の労働力確保がさらに困難になると見込まれるため、建設業における生産性向上が必要。ⅲ.国際的に見て、我が国は小さな政府(政府総支出の対GDP比は主要32ヵ国中24位)である中で、公共投資に関する財政支出は相対的に高い水準。ⅳ.こうした点と厳しい財政事情を踏まえれば、予算規模の量的拡大よりも優先順位を付けて配分の重点化をしっかりと推進することが重要。ⅴ.今後の社会資本整備に当たっては、ストックの集約・長寿命化や新規整備の重点化による人口一人当たり維持更新コストの増加抑制に留意しつつ、 ア.ハザードエリア等での居住を抑制する「土地利用コントロール」や金融インセンティブなどのソフト対策と一体となった防災・減災対策 イ.「交通需要マネジメント」とあわせたコンパクト・プラス・ネットワークの推進 ウ.民間資金・ノウハウを活用した生産性向上に向けた投資 に、国費を重点化していくべき。 以上の言葉の中に、ずばり、財務省の基本的考え方が示されています。 11月14日土曜日、河野太郎大臣が主催する政府の行政改革推進会議の「秋の行政事業レビュー」が開催され、その模様がネット等で、全国に生放送されました。行政改革の一環として、2015年から定例化されているもので、毎年、各省庁の施策の中から、選定され、下水道は、2年ぶりに議論対象となりました。今回、「最適化・広域化・PFI」のテーマで議論されましたが、行政改革推進会議の狙いは、今後の維持更新等へのコスト増加の抑制、住民を巻き込んでの適切な下水道使用料負担への改革、民間資金の活用促進の議論を踏まえての、まさに財務省と同じ、「国費の支出抑制」だと感じました。 前記2つの時を同じくした動きは、社会インフラ・下水道インフラの現在置かれている位置の厳しさを物語っています。 社会資本整備に関し、財務省に限らず、学者・評論家等、識者の中にも先に述べた厳しい見方をする人は決して少なくありません。11月14日の「秋の行政事業レビュー」においても、下水道の次に登場した地方の道路について、

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