下水道の散歩道 第1-33回
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第3種郵便物認可 第1866号 平成30年4月24日(火)発行(43)全額下水道料金負担とすべきではないか。国費の投入はすべきではないのではないか」という議論がありました。それを、根幹的に変えたのが、昭和45年の下水道法改正による「下水処理の義務付け」でした。「収集してきた汚水を下水処理場で全量処理し、きれいな水にして、川・海に放流することにより、水質汚濁の激しい公共用水域(川・海・湖)をきれいにする。国民全員が享受できる美しく快適な水環境を作るために下水道インフラを整備する。それなら、国民の税金を投入する大義(意味)がある」ということで、本格的に国費(補助金)が導入されることになったのです。この昭和45年が下水道行政にとって、大きな変曲点となりました。2.「公共用水域の水質保全」の  役割認知、投資額も伸びる 昭和42年度から46年度までの第二次下水道整備五箇年計画の5ヵ年間の計画投資額が0.93兆円だったものが、第三次(昭和46年度~50年度)では、2.6兆円、第四次(昭和51年度~55年度)では、7.5兆円、第五次(昭和56年度~60年度)では、11.8兆円と大きく投資額が伸びました(表参照)。補助率も、昭和49年度から大幅にアップされ(流域下水道では1/2から2/3・3/4に、公共下水道では4/10から6/10・2/3に引き上げ)、自治体の負担が大きく軽減されることとなりました。これは、すべて下水道法改正により、下水道インフラが公共用水域の水質保全という大きな役割を果たすインフラであることが認められたこと、また、その費用効果・寄与度の高さが認められたことによるものでした。この時期、大蔵省・自治省と一緒になって政府一丸で議論され、結論がまとめられた「下水道財政研究委員会提言(財研提言)」も大きな影響力を持ちました。 この下水道インフラの最も大きなミッション(使命・役割)である「公共用水域の水質保全」、このことを下水道インフラ関係者は常に肝に銘じないといけないと思います。日本の川・海等の水質がこれだけ劇的に改善したのは、間違いなく、下水道インフラ整備の効果です。今でも、下水道インフラのこのミッションは、下水道インフラの多くの使命・役割の中でも、最も重要です。3.おむつ投入の検討は後追い  行政から卒業するチャンス 下水道インフラに紙おむつを粉砕して投入することが検討されています。紙おむつには、吸水材として、マイクロプラスチックが多く使用されています。いま、世界の環境学者の間で、マイクロプラスチックによる海洋汚染・魚介類への影響の懸念が強く表明されています。今のタイミングでは、紙おむつ問題は、非常に慎重に考える必要があります。しかし、「それじゃあ下水道インフラへの紙おむつ投入はやめよう」、との結論は決【筆者略歴】昭和49年3月東京大学工学部卒業後、同年4月建設省採用。京都府下水道課長、東北地方整備局企画部長、国土交通省下水道部下水道事業課長、同下水道部長、日本下水道事業団理事長などを歴任。平成29年3月より現職。昭和27年1月生まれ。●「下水道の散歩道」は月1回(各月後半発行号)の掲載です。して前向きではありません。 今日までの我が国の下水道行政は、常に後追い・後始末行政で対応してきました。都市計画が先に存在し、「居住地計画をこう決めたからそれに合わせて下水道インフラを作ってくれ。雨水計画も都市計画に合わせて考えてくれ」という具合でした。紙おむつ対応について、「現在のマイクロプラスチックが大量に入った紙おむつは駄目だが、マイクロプラスチックの入っていない紙おむつを製紙業界挙げて開発してください。今後の介護を考えるとおむつ問題は大変大きな問題です。一緒になって対応を考えましょう。マイクロプラスチックの問題は決していつまでも放っておけないでしょう。この際、別の材質の紙おむつを開発していただき、連携して、下水道インフラへの投入を考えましょう」と、介護関係者・製紙関係者・環境関係者・下水道関係者を中心に我が国全体で最適解を考えるように持っていく。こうしたチャンスだと思います。いままでの後追い的な下水道行政から卒業するチャンスでもあります。ただ、マイクロプラスチック問題は現在、世界中の水環境関連学会の大問題になっています。慎重に検討を進めることが重要です。下水道インフラの最大のミッション、「公共用水域の水質保全」を我々は、決して忘れてはなりません。

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