下水道の散歩道1.世界幸福度ランキング 2012年より、毎年3月下旬に、国連が「世界幸福度ランキング」を公表しています。直近の3年間、2017年から2019年までのベスト10の国は下表のとおりです。北欧諸国が、圧倒的に上位を独占しています。「人口当たりGDP」「社会的支援」「健康寿命」「人生の選択の自由度」「寛容さ」「腐敗の認識」の6つの観点を踏まえ、当該国民へのアンケートと客観データによって決定されています。評価方法にはいろんな意見があるかと思いますが、なんといっても、国連の評価です。日本の順位は、2017年51位、2018年54位、2019年58位と、徐々に下がっています。今年も、もうすぐ発表ですが、おそらく、北欧の優位は、揺るがないでしょう。2.なぜ北欧の人々は幸福なのか 私は、以前から、なぜ北欧諸国が幸福度ランキング1位を独占す[第30回]2019年フィンランドデンマークノルウェーアイスランドオランダスイススウェーデンニュージーランドカナダオーストリア58位156ヵ国(36)第1914号 令和2年3月24日(火)発行 2017年ノルウェーデンマークアイスランドスイスフィンランドオランダカナダニュージーランドオーストラリアスウェーデン51位1位2位3位4位5位6位7位8位9位10位日本対象国数155ヵ国2018年フィンランドノルウェーデンマークアイスランドスイスオランダカナダニュージーランドスウェーデンオーストラリア54位156ヵ国第3種郵便物認可デンマークのHyggeと フィンランドのSISUが 幸福度上位の鍵イラスト:PIXTAるのだろうか、なぜすべての北欧諸国が毎年10位以内に入るのだろうか、なぜ北欧は幸福なのだろうかと考えていました。よく言われるように、福祉・社会保障や教育がしっかりしているからかなと、思っていました。しかし、いろんな人の話を聞き、私の経験から分析する中で、「国民個人の『ワークライフバランス』が見事にとれていること」と「人と人の関係性の深さ」が大きいのではないかと気付きました。我が国でもやっと注目されてきた「ワークライフバランス」と「人間関係」です。「仕事(公)と個人生活(私)の切り替えの素晴らしさ」、そして、公の場と私の場における「人間関係の深さ」です。そのための「休息タイム・コーヒーブレイク」、また、「リラックスできる環境・空間・時間」「しかし、頑張るときには頑張るという精神」、これらが、北欧の各国に根付いており、これが幸福感に結びついているのだと気付きました。すなわち、幸福感とは、「公私両方フィーカ(fika)とヒュッゲ(Hygge)とシス(SISU)―北欧の素晴らしいワークライフバランスと高い幸福度――日本の働き方改革への示唆―㈱NJS 取締役 開発本部長(公社)全国上下水道コンサルタント協会 企画委員長谷戸 善彦の充実と切り替え」と「公私における人間関係の深さ・充実」にあると教えられた気がします。 2019年10月の下水道の散歩道第25回にも書きましたが、私が30年前、ドイツに半年間滞在して仕事をしているとき、ドイツ人の公私の切り替えの素晴らしさ、相手をリスペクトする中で生まれる深い人間関係には、強く打たれました。国としても豊かなドイツでは、みんなが、幸せ感を持って、暮らしているなと感じました。夏のバカンスのため、8月1ヵ月休業する街のパン屋さんやショップ等には驚きましたが、その割り切りが素晴らしいなと感じました。「Stammtisch」という「パブのお気に入りの指定席」や「お気に入りの場所」を皆さんが楽しんでいるのにも感銘を受けました。3.スウェーデンのfikaと 昨年秋に、東京大学特任准教授の渋尾欣弘さんから、スウェーデンのフィーカの話を聞きました。渋尾さんは、数年前まで、スウェーデンのストックホルム大学に勤務していましたが、そこでは、毎日、午後3時になると、研究室の全員がオープンスペースに集まり、「お茶」をするそうです。コーヒーブレークです。そこで、研究の延長の話が出ることもあれば、自由闊達にいろんな話をするそうです。その中で、人間関係が自然に深まり、また、公私の時間の切り替えがうまくできるそうです。この「お茶タイム」をスウェーデンでは「フィーカ(fika)」と呼びます。フィーカは、スウェーデンのあらゆる場所で文化として、定着しています。 デンマークには、「ヒュッゲ(Hygge)」という言葉があります。デンマーク語で、「人と人とのふれあいから生まれる、温かな居心地のよい雰囲気」という意味の、他の国の言語では置き換えられないデンマークの個性を形成している言葉です。2、3年前、欧米で
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