下水道の散歩道1.はじめに AI・IoTなど革新的なデジタル技術の加速度的進展により、世界が大きく変わろうとしています。平成の時代を通じて、世界における位置が、相対的に大きく地盤沈下した日本が、令和時代を通じ、起死回生を図れるかは、官民あげての、このデジタル革新(デジタルトランスフォーメーション:DX)にかかっているといっても過言ではありません。世界中の経営者・政府首脳の間でも、SDGs・CSV(Creating Shared Value:共通価値の創造 ハーバード大学のポーター教授の提唱する「経済価値を創造しながら、社会的ニーズに対応することで社会価値をも創造する」という考え方)・サステナビリティに関する対応と、第4次産業革命に向けたデジタルトランスフォーメーション(DX)への対応が、現下の2大テーマとなっています。このデジタルトランスフォーメーション(DX:英語圏ではTransをXと略することが多いため、Digital TransformationはDXと表記されることが多い)は、待っていてやってくるものではなく、自ら創り上げていくものであります。ここが従来の流れと大きく異なるところです。 今まで、下水道インフラ界は、社会の変化があれば、それを受けて、どう対応するかというアプローチで政策実現や技術開発をやってきました。しかし、今回はそのアプローチでは、一歩も二歩も出遅れ、取り返しのつかないことになります。下水道インフラの世界においても、DXに対してどう対応していくかではなく、下水道インフラ界において、どう下水道界のDXを作り上げていくかというアプ[第29回](46)第1912号 令和2年2月25日(火)発行 第3種郵便物認可「Society5.0forSDGs」ジョン」ランイラスト:PIXTASociety5.0・デジタルトランスフォーメーション(DX)と下水道インフラ―「DX」と「データ」で下水道インフラの世界が変わる、下水道インフラの世界を変える―㈱NJS 取締役 開発本部長(公社)全国上下水道コンサルタント協会 企画委員長谷戸 善彦ローチが大切なのです。 日本全体として、DXをどう図っていくか、その「道筋・提言」を見事に示した公式のすばらしい提言書が、3つあります。それは、2016年1月、閣議決定された日本政府の「Society5.0」、2018年11月に経団連から出された「Society5.0―ともに創造する未来―」、2019年3月経済同友会から提言された「真のデジタル革命を勝ち抜く-二つの潮流に対応するために企業のデジタル変革は待ったなし-」の3つです。その3つを紹介し、そのあと、下水道界のDXへの挑戦について、述べたいと思います。3つのビジョンは、いずれも、卓越したすばらしいものです。読者の皆さんには、インターネットですぐ検索できますので、全文を読むことをお勧めします。2.「Society5.0」そして Society5.0とは、狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(Society2.0)、工業社会(Society3.0)、情報社会(Society4.0)に続く新たな社会という意味で、日本政府の第5期科学技術基本計画(2016年1月)において、初めて提唱された考え方です。当初は、我が国の科学技術政策の中で生み出された考えでしたが、現在では、日本そして世界が目指すべき社会の未来像として、世界中に広まりつつあるコンセプトであり、非常にポジティブな攻めの考え方で、とてもよくまとまっていると思います。現在は、政府のみならず、産業界や学術界も一緒になって、取り組みを進めています。ちなみに、昨年6月21日に政府が発表した「骨太の方針2019」の副題は、「『令和』新時代:『Society5.0』への挑戦」でした。 現在、AI・IoT・ブロックチェーンなどの革新的なデジタル技術が進展するとともにビッグデータが徐々に蓄積され、社会の在り方が大きく変わろうとしています。このDXの動きは止まることなく、人類社会が次のステージへ向かうきっかけになると考えられます。科学技術基本計画では、Society5.0を経済発展と社会的課題の解決を両立させることのできる人間中心の「超スマート社会」と位置付けています。科学技術基本計画が策定されたときには、意識されていませんでしたが、このSociety5.0は、2015年9月に国連決議された2030年目標のSDGsの進展に大きく資するものと私は考えています。「Society5.0 for SDGs」です。3.経団連の「Society5.0ビ 日本政府の打ち出した「Society5.0」に、経団連(日本経済団体連合会)が大きな関心を寄せ、基本的な考え方に賛同するとともに一部修正して経団連のビジョンを作成し、日本の産業界あげて、Society5.0を推進し、日本のこれ以上の地盤沈下を食い止めようとしています。 経団連の「Society5.0ビジョン(Society5.0-ともに創造する未来-)」の内容は、以下です。(1)基本的考え方 技術的変化、経済・地政学的変化、マインドセットの変化など、急激な変化の波が世界に迫っている。大きく変化する時代には、変化をチャンスと捉えて、想像力によって未来を切り拓く視点が欠かせない。Society5.0は、訪れる未来の予測ではなく、創りたい未来を語る日本発のコンセプト。(2)Society5.0の目指す社会とは Society5.0とは、創造社会であり、「デジタル革新と多様な人々の想像・創造力の融合によって、社会の課題を解決し、価値を創造する社会」。また、Society5.0は、国連が採択したSDGsの達成に貢献できる。(3)日本を解き放つアクションプ 日本が目指すべき姿は、デジタル革新を先導し、多様性を内包した成功のプラットフォーム。多様な背景を持つ人々が日本で成功の
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