下水道の散歩道 第1-33回
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(3)破壊的イノベーション活用の視点 DisruptiveInnovation 水害列島克服には、従来の延長線にない「破壊的イノベーション技術」の活用の視点が重要と考えます。今後の技術開発の推進のため、国を挙げての抜本的支援・官民連携が鍵と思います。3.克服への具体的施策 これだけの災害多発は、技術進化・イノベーション・制度進化の大きなチャンスです。上記、三つの視点を踏まえ、克服への具体的施策の例を以下、提案したいと思います。①「世界災害対策会議」・「世界災害対策技術会議&メッセ」の開催 従来から、災害対応を議論する国際会議は、存在しましたが、政府主催で、東日本大震災からの復旧・復興も含め、大規模な国際会議を、早めに、日本で開催することを提唱します。また、技術開発・技術活用に特化した会議と国際展示会も有用でしょう。②官邸に「総合的・包括的災害対策会議」を設置。幅広い人材による議論を展開術革新を徹底的に推進の開発・採用ギーの活用活用ト技術の活用第3種郵便物認可 第1906号 令和元年11月19日(火)発行(41)した。しかし、台風がこれほど連続的に日本を襲来する中、私は、「優しいジオエンジニアリング」の開発・採用は今後、必須ではないかと考えています。具体的には、南海上で上昇している海水温により、上空の台風が異常に発達するなか、海面直上の広い範囲に霧状の膜層を短時間で形成する技術等が考えられると思います。⑤洪水エネルギー・台風エネル 洪水発生時・台風来襲時に、エネルギーを取り込み、蓄えるのは、不謹慎だとの声も聞こえそうですが、河川内に自動的に稼働する発電装置を組み込んでおいたり、自動的に運転される高潮のエネルギーによる発電装置を海岸に設置したりすることは、不可能ではないと考えます。⑥AI・IoT・量子コンピュータの活用 災害予測・災害危険性の把握・最適対策の提案・既存施策の評価等において、AI・IoTの活躍する分野は非常に多いと思います。今後、量子コンピュータの活用により、大量のデータの処理が可能となり、予測・評価等の精度が劇的に向上し、避難の指示発出に、大きく寄与すると考えます。⑦劇的に進化する無線通信技術の Wi-Fiに続く省エネルギーで効果の高い技術として、Wi-SUN・Wi-RANの技術が日本発で急速に進化しています。Wi-RANは、数十キロの長距離を無線で飛ばす技術で、今後、災害対応技術として、極めて有望な技術です。⑧進化したドローン・無人ロボッ 予測等の災害発生事前対応、リアルタイム観測、災害発生直後の対応等において、ドローンと無人ロボットは、今以上の活躍が期待されます。技術のさらなる進化が望まれます。 以上、水害列島克服の視点を述べました。下水道インフラ関係者・災害対応関係者挙げて、自然災害の抑止・軽減に向け、一歩一歩、連携しつつ対応していけたらと思います。の気象予測及び被害予測技術の向上。④ ハード計画の立案に当たり、自然景観配慮・消費エネルギー最小化・コスト最小化等、総合的に評価して、最適計画を提案。⑤ 地域特性に応じた適材適所の施策提示。全国一律の原形復旧は決して望ましくありません。地域の特性に応じた施策が望まれます。⑥ ジオエンジニアリングも本気で考える時期に。気象など自然現象を人工的に改変するジオエンジニアリングも「優しいジオエンジニアリング」から開発・活用すべき時期に来たと考えます。 こうしたComprehensiveな視点が重要です。(2)多重効果を生み出す視点   MultipleEffect 前述のように総合的施策展開を図るにしろ、ハード対策に膨大な予算が投下されます。これは、人命・財産を守るために、必須です。しかし、水害列島克服・自然災害抑止の効果だけに目を向けての財政出動は、もったいないとも考えます。貴重な国民の税金を使った支出に関し、「マルチ」なそれも我が国の将来にとって非常に重要な「効果」をもたらす支出としたいものです。具体的な例は、以下です。① 経済効果・イノベーション創出効果。世界に誇れる技術革新・技術開発に繋げる支出とする。この危機をチャンスと捉え、災害対応関連技術を次々と開発・実用化。世界輸出に繋げ、我が国の得意分野の一つとする。② 災害復旧に当たり、単純な原形復旧はしない。新技術の積極的活用を行い、かつ、レベルの上がった改良復旧を行う。重要地域を中心に、災害耐性を全国的に飛躍的に高める。③ 教育の場とする。今回の連続的な水害の原因究明・評価・今後の対策・今後開発が望まれる災害防止対応技術等について、小中学校等の義務教育機関・高校大学等の高等教育機関において、教育の材料として議論し、個人の防災知識・リスク管理力向上に繋げる。④ 洪水や台風そのもののエネルギー活用。洪水時の水の流れのエネルギー・台風のエネルギーを捕捉し、エネルギーを蓄える技術の開発を推進する。 前述のような幅広い議論を進めるため、災害の専門家だけではなく、経済・教育・歴史学・先端工学・医学等の専門家と国民代表からなる表記会議を設置する。③災害対応にかかる技術開発・技 基礎科学も含め、破壊的イノベーション技術、また、超省エネルギー型技術を官民挙げて開発する。技術開発予算を積極的に導入するとともに、開発された最先端技術の積極的採用が図られるよう、国が支援する。④優しい「ジオエンジニアリング」 人工的に雨を降らす等、気象等の自然を改変する「ジオエンジニアリング」は、人間が自然を改変するという極めて大きな行為故、抵抗をもって受け止められてきま

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