下水道の散歩道 第1-33回
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2.いよいよ令和時代本格スタート、令和時代の下水道インフラの未来に向けて―世界を視野に入れた未来戦略を 今回の令和時代初の下水道予算概算要求を皮きりに、国土交通省・地方公共団体等を中心に、令和時代の下水道行財政の舵取りがスタートします。下水道インフラ界のサステイナブルな発展のために、下水道界官民挙げて、いかなる意識を持ってどの方向に向かって進んでいくべきか。下水道インフラの未来戦略について、以下、いくつかの提案を述べたいと思います。(1)世界ナンバーワンに向けて、技術開発の促進への力強い継続的な対応を 前回述べましたように、世界一・世界初等「世界ナンバーワン」の下水道インフラ技術(制度、ビジネス手法も含め)を、我が国で創出し、世界各国・世界の先進国(42)第1902号 令和元年9月24日(火)発行 第3種郵便物認可の新規の技術開発とこの「デジタルトランスフォーメーション」の組み合わせで、10倍の生産性・10分の1のコスト・10倍の品質といった「オーダー(桁)の違う生産性・コスト・品質」を実現できる可能性を秘めています。 第四の特徴は、「海外展開への対応の充実」です。行政経費の中で、「下水道分野の水ビジネス国際展開経費の拡充」「官民連携による海外インフラ展開の推進の拡充」を打ち出しています。特に、海外において、パッケージ案件の検討対象国を拡大するとともに、本邦技術の実証実験を行い、対象国における基準・指針等の整備支援まで行う施策は、従来より一歩踏み込んだ的確な対応であると考えます。 第五の特徴は、「ソフト施策への支援の充実」です。具体的には、「リノベーション推進計画の策定への支援」「情報システム整備への支援」「PPP/PFI導入検討への支援」「自助共助の促進による減災対応方策マニュアルの作成経費への支援」等で、ソフト施策への支援が大変厚いと思います。 第六の特徴は、概算要求額の伸び率です。概算要求時では、まだ何とも言えず、年末の政府原案決定時に決まることですが、国土交通省の他の公共事業と比べ、わずかですが、対前年度予算の伸び率が高くなっているのは、大きいことだと考えます (国費ベースで治水1.19、道路1.19、港湾空港鉄道1.17、住宅1.19、公園1.197に対し、下水道の補助金は1.203。事業費ではもっと差が大きく、下水道の伸び率が高い)。下水道予算の大部分は交付金で、補助金は額が小さいことは考慮しなくてはなりませんが、今後の補助金の拡充施策が打ち出されている中、このことは、大きいことであると考えます。 下水道インフラと政府・官邸・国会・国民との距離の遠さからの脱却を真剣に考える必要のある中、政府の骨太の方針を踏まえ、見事にシンクロした今回の「下水道予算概算要求」は、的確なものであると思います。 この原稿案を書いた直後に国土交通省の植松部長と1時間ほど、個別に話す機会がありました。その際、今回の概算要求のポイントを聞いたところ、「下水道施設情報システム緊急整備事業の創設は目玉の一つです。また、概算要求では『防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策』の3年目分が未計上ですが、その分が予算編成過程で、検討されることとなるでしょう」との話でした。(注)「令和2年度下水道事業予算概算要求」の詳細は下水道情報の前号(1901号)等を参照ください。に展開していくことを目指すべきと考えます。我が国には、その萌芽となる技術が数多くあります。また、それだけでなく、新たに、発想の転換やデジタルトランスフォーメーションにより、「生産性・コスト・品質」において、オーダー(桁)のかわるイノベーション技術を開発すべきと思います。その際、国の力強い継続的な支援が必須と思います。また、大学や下水道インフラ以外の異分野との協働・連携が重要でしょう。具体的な技術としては、ⅰ 下水・下水汚泥やゴミ・食物残渣等からのクリーンでサステイナブルな循環型エネルギーの超高効率超低コスト創出技術、ⅱ 管路内処理技術、ⅲ ゲノム編集等の活用による超効率的な水処理技術・汚泥処理技術、ⅳ 微生物電池技術、ⅴ 夢の管路施工技術、ⅵ マンホールの下水道デジタルステーション化技術、ⅶ 下水道インフラマネジメントへのブロックチェーンの活用―等があると考えます。特に、ブロックチェーンは、「障害耐性が強く、改ざん耐性が強く、従来のデータ中央一元管理と比べ低コスト」という3つの大きな利点があり、下水道インフラの情報管理や、今後の下水道インフラデータベース構築等において、その特性を発揮できるかもしれません。(2)下水道インフラ事業の国の一部直轄化も視野に 日本を挙げて「世界ナンバーワン」の下水道インフラ関連技術を創出しようというとき、国は、財政的支援をするだけでなく、自らがプレーヤーとなって、牽引することも視野に入れる必要があると考えます。非常に難しい課題ですが、世界に誇る本邦技術の開発という点では、国の直轄対応の大義が立つと思います。技術開発のみに特化した直轄化や都道府県にま

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