イラスト:PIXTAの政府の基本方針(9課題と基本認識)を受けた施策が幅広く打ち出されている」点が私が評価する一点目の特徴です。具体的には、新規事項一点目の「下水道広域化推進総合事業の拡充」は上記政府9課題の①⑥⑨、そして基本認識を踏まえたものです。新規事項二点目の「下水道リノベーション推進総合事業の創設」は、上記政府課題の①②③⑥⑦を踏まえた施策です。新規事項三点目の「下水道施設情報システム緊急整備事業の創設」は、上記政府課題の①②③④⑥⑨を踏まえています。B-DASHプロジェクトの新規テーマの「クラウドやAIを活用した効率的なマンホールポンプ管理技術」「過疎地域の人口減少時や災害時に移設可能な水処理技術」「中小規模処理場同士の広域化に資する低コスト汚泥減量化技術」の3つも、すべて、上記①②③④⑥⑦⑧⑨の課題解決に資するものです。こうした政府全体の目指すべき方向と下水道インフラの目指すべき方向の一致(シンクロ)は、下水道インフラの推進・展開のためには、非常に重要な視点です。 私が評価する第二の特徴は、「国民目線の施策の打ち出し」です。具体的には、新規事項の「下水道リノベーション推進総合事業」の中で、処理場等を地域のにぎわい拠点や防災拠点・農業生産拠点・地域エネルギー創出拠点など魅力下水道の散歩道㈱NJS 取締役 開発本部長(公社)全国上下水道コンサルタント協会 企画委員長谷戸 善彦1.「令和2年度下水道事業予算概算要求」発表さる[第24回]第3種郵便物認可 第1902号 令和元年9月24日(火)発行(41) 8月28日、国土交通省より、令和2年度下水道事業予算概算要求が発表されました。 令和になって初めての財務省への予算概算要求です。私は、時宜を得た的確な要求内容で、新たなチャレンジも含んだポジティブな中身の濃い要求であると思います。新しい植松新下水道部長体制の意欲を感じました。今回の概算要求は、6月21日に閣議決定された政府の「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針2019)を受けて、策定されました。前々回にも述べましたが、本年の「骨太の方針」は、副題が「『令和』新時代:『Society5.0』への挑戦」でその中で特記している我が国の現下の課題は以下の9点です。①人口減少・少子高齢化の進行、②第4次産業革命の到来、③生産性と成長力の伸び悩み、④世界的なデジタル化の流れ、⑤通商問題・保護主義の台頭、⑥エネルギー・環境制約の高まり、⑦地方経済の活性化、⑧大規模自然災害の頻発、⑨社会保障と財政の持続可能性―。また、経済財政運営の基本認識としては、「持続的かつ包摂的な経済成長の実現と財政健全化の達成の両立」が我が国経済の目指すべき「最重要目標」としています。 今回の下水道予算概算要求で「こあふれる地域の拠点に再生する事業を支援することが打ち出されていることです。この「下水道リノベーション推進総合事業」は、国民と下水道インフラの距離を近くし、下水道インフラの知名度を上げ、下水道インフラのイメージを大きく変える素晴らしい可能性を秘めていると思います。「国民目線」という点では、行政経費の「紙オムツ受入による下水道施設への影響調査経費」を新規に要求することも注目です。「紙オムツ素材の中のマイクロプラスチック問題」の懸念もある中、オムツと汚物の分離装置を活用してのスタートや、将来的には、下水道インフラサイドからの紙オムツの素材改良への提案等、幅広い議論が進むことが期待されます。 第三の特徴は、「デジタル化への対応」です。新規事項の「下水道施設情報システム緊急整備事業の創設」やB-DASHのテーマの「クラウドやAIを活用した効率的なマンホールポンプ管理技術」が打ち出されています。国を挙げて、「Society5.0への挑戦」を謳っている中、今後、「下水道インフラ界のデジタル化」「下水道界の官民挙げてのデジタルトランスフォーメーション」が求められます。その推進のスタートになればと考えます。「デジタルトランスフォーメーション」は、既存の仕組み(例えば、「レガシー(遺産)と呼ばれる金融機関の基幹システムのような既存システム」)や従来のビジネスモデルの下でAIやIoT等のICTを活用するという発想ではなく、「抜本的に一からデジタル化社会を作り、デジタルによる破壊的イノベーションを起こす」という変革であり、これにより、「高速(高生産性)、低コスト、高品質」のイノベーションを目指すものです。日本が強いフィジカル(実体)分野「令和2年度下水道予算概算要求」と「令和時代の下水道インフラ未来戦略」
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