(34)第1900号 令和元年8月27日(火)発行 第3種郵便物認可4. 「世界ナンバーワンの下水道インフラ技術の創出と海外展開」の戦略・方策道・大規模公共下水道など、全国で数ヵ所の下水道を「直轄下水道」とし、そのフィールドで、徹底した技術開発促進のための試みを行うのです。民間発案の技術に対し、適切な対価を支払った上で、国が、構想・計画・設計・施設建設・維持管理・経営・評価を直轄で行い、世界ナンバーワン技術を創出し、長期的評価も行い、海外展開も企業とともに、国を挙げて支援するのです。現在進めている広域化・共同化やICTの徹底活用と併せて、この直轄化を進めることも有効です。この試みは、B-DASH制度をさらに進化させた「スーパーB-DASHプロジェクト(技術開発支援のための直轄下水道事業)」と呼びたいと思います。直轄化にあたっては、施設は事業体の財産のまま、技術開発の行為・権限・責任を国にという選択肢もあり、オール直轄化と併行して進めるのも良いかと思います。 このような直轄事例やフィールド提供に対する事業体の協力は必須です。また、最先端研究を進めている大学とくに下水道以外の分野の研究室との連携も必須でしょう。また、民間同士の連携も重要です。その中で、業界の再編成も視野に入れる必要があるかもしれません。(3)下水道インフラ以外の分野との連携、日本が世界一の分野との連携 下水道インフラ関連以外の最先端技術分野との連携が重要でしょう。特に、日本が世界一を誇っている分野との連携が期待されます。(4)ハード技術以外にソフト技術、制度、ビジネス手法も対象に ハード技術・ソフト技術以外にも、制度・ビジネス手法を、世界に売り込んでいくことも考えられると思います。「下水道インフラ関連データ基盤プラットフォーム」の世界的構築を日本発でという考え方も良いと思います。(5)バイオテクノロジー、ゲノム編集等下水道インフラの得意な技術分野に注力 世界一・世界初等「世界ナンバーワン」の下水道インフラ技術(制度、ビジネス手法も含め)を、我が国で創出し、世界各国・世界の先進国に展開していくための戦略・方策について以下、述べたいと思います。(1)世界ナンバーワン技術創出・海外展開への気概・意識、戦略手法の把握 我が国では、下水道インフラ関連分野で素晴らしい技術が多々あるものの、海外リスク等への懸念から、技術の海外展開に消極的でした。先進国は、カントリーリスクは少ないものの、先進国には先端的技術があるからと、積極的に売り込む気概がありませんでした。この気概・意識の転換が、まず重要です。先ほど述べたように、価格が半分、効率が倍となれば、十分、競争力が確保できると考えます。また、本連載の第1回で述べた「BHAG」のような目標設定や「SWOT分析」「ロジャースのイノベーター理論・ムーアのキャズム理論」など、「フレームワーク・戦略手法」の会得・把握が必要です。また、日本では、「海外ではこのようになっている。海外はこんな制度で成り立っている」等、海外の動向を気にしすぎるきらいがあります。海外の動向等の知識を把握することは必要ですが、拘らないことが大切です。我が国が、世界をリードしていこうとしているのですから。(2)国の支援(技術開発に特化した直轄下水道事業)・事業体の協力・大学との連携・民民の連携 国の支援は、重要です。「世界ナンバーワン」の技術創出のためには、技術開発の大きな進捗のための国の新たな支援制度が是非必要です。国家挙げての技術開発支援に特化した「国の直轄下水道事業」も有効です。広域的な水質保全に大きく寄与する地域の流域下水 世界ナンバーワン技術の創出にあたっては、下水道インフラの得意な分野・下水道インフラに身近な分野である「バイオテクノロジー」「ゲノム編集による水・汚泥処理の劇的効率化」等に、特に、注力することが大事だと思います。(6)AI・IoT等ICTの徹底活用 今後、AI(人工知能)が、人間社会のあらゆるステージで、大きな影響を持つことは間違いないことと思います。世界ナンバーワン技術の海外展開にあたっては、当該技術におけるAI活用等、常にAIを意識する必要があると考えます。(7)海外展開にあたっての商社等との連携・企業群挙げての連携 海外展開にあたっては、日本の誇る世界展開のプロフェッショナルである「総合商社」との連携は極めて有効と考えます。総合商社の他にも、我が国の企業群挙げての民間を主体とした連携も望まれるところです。5.おわりに 下水道インフラは、公共インフラの中でも、とりわけ、技術分野が幅広く、技術の塊のような分野です。道路・河川・港湾・公園等の公共インフラと比べ、管路施設・ポンプ施設・一大工場のような下水処理施設と工種が広く、技術の内容が本当に幅広いです。また、関連している企業は、世界を代表する企業が目白押しです。「世界ナンバーワン」の技術を創出し、世界展開しようとするとき、下水道インフラほど、ふさわしい公共インフラはありません。日本が再び、昭和時代の輝きを取り戻すか、現在よりさらに衰退するか、今が大きな境目であると心から思います。 「下水道インフラよ、今こそ、世界ナンバーワンを目指せ」 下水道界から日本の成長戦略の一角を提示し、実現させようではありませんか。それにより、再び、輝ける日本を取り戻そうではありませんか。
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