下水道の散歩道 第1-33回
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イラスト:PIXTA重要性が語られることはほとんどありませんでしたが、昨今の災害の多発化・甚大化や環境面・SDGsへの関心の中で、少しでも公約の中に聞くことがあればと期待しましたが、全く、語られませんでした。各党の主要公約は、「外交・安全保障」「経済」「社会保障・年金」「教育・子育て」「働き方改革」「災害対応・復興」「環境・SDGs」「地方創生」「憲法改正」等ですが、それぞれの中に、下水道インフラと関係のある部分があるものの、下水道の言葉は出てきませんでした。 3つ目のイベントは、「下水道展’19横浜」です。開会式に、石井国土交通大臣が出席され、4日間の来場者数も4万6659人と目標を突破しました。展示会場も大変活気があり、同時に開催された下水道研究発表会も内容の充実した発表が多く盛況で、下水道展は大成功だったと思います。日本下水道協会・横浜市さんのご尽力の結果だと思います。我が国の下水道インフラ関連の技術の裾野の広さ・レベルの高さ・研究発表の内容の濃さが印象に残りました。ただ、欲を言えば、やや日本の内側の下水道関係者への発信が中心で、下水道以外の分野への発信・海外への発信という将来方向があればと感じました。 この1ヵ月の間に行われた以上の3つのイベントを見て、「下水道インフラの将来」について、考えさせられました。 官邸・国会・マスコミ・国民の下水道インフラへの関心が薄いな下水道の散歩道㈱NJS 取締役 開発本部長(公社)全国上下水道コンサルタント協会 企画委員長谷戸 善彦1. この1ヵ月の3つのイベントから感じたこと……  「日本の下水道インフラよ、世界ナンバーワンを目指せ」 英国現地時間8月4日、渋野日向子選手が、42年ぶりにゴルフの世界メジャーを制覇しました。全英女子オープン優勝です。彼女の素敵な「笑顔」とともに、世界中にその素晴らしい結果が発信され、日本中が沸きました。日本人に希望と誇りを与えました。「世界一」、それは素晴らしいことです。どんなにニッチな分野(ゴルフは全くニッチではありませんが)であれ、「世界ナンバーワン」は、日本国民に大きなインパクトを与え、日本の自信に繋がります。技術・経済・ビジネス分野で、かつて、「世界一」「世界初」を数多く持っていた日本では、バブル崩壊に伴う衰退とともに、平成時代を通して、「世界ナンバーワン」は減少し、最近は、皆、「世界一」を初めから、目指さなくなっている気がします(10年前の「次世代スーパーコンピュータの事業仕分け」での某国会議員の「世界で二番じゃダメなんでしょうか」の発言が思い出されます。特に技術分野では、一番と二番は全く違うと思います)。 第25回参議院議員通常選挙が過日、実施されました。7月4日公示、7月21日投開票の17日間の選挙戦でしたが、公共インフラ、特に「下水道インフラ」については、「影が薄いなあ」という印象だけが残りました。もともと、国の選挙において、下水道インフラの[第23回](32)第1900号 令和元年8月27日(火)発行 第3種郵便物認可か、どのようにして関心を持ってもらったらよいのか、ずっと考え続けてきました。一生懸命、下水道インフラの役割・効果・重要性・ポテンシャルの大きさ等を話しても、ほとんど聞いてもらえません。関心を持ってもらえません。「下水道はもうほとんど全国に行きわたりましたね。もう終わりですね」というのが多くのマスコミ・国民の声です。 このように、ずっと考え続けていた私に対して、全英女子オープンと下水道展は、「目からウロコ」の大きなヒントを与えてくれました。その結論は次の通りです。 「下水道インフラの世界から、下水道界挙げて、『世界ナンバーワン』の技術等を、次々と創出しようではありませんか。『世界一』『世界初』の技術を生みだし、世界各国に、先進国に売り込もうではありませんか。技術以外でも、『制度』『ビジネス手法』等も含め、『ジャパンasナンバーワンin下水道インフラ』を創出し、確立しようではありませんか。下水道展に見られるように、我が国の水インフラ関連の技術は、素晴らしいポテンシャルを持っています。官民または民民(連携の意)挙げて、その技術に磨きをかけ、一歩でも二歩でも打って出ましょう。そのことにより、日本の官邸・国会・マスコミ・国民の下水道インフラを見る目は、大きく変化すると思います。それによる副次的な効果も、非常に大きいと考えます」 従来、海外展開のリスクを考え、各企業も、今一つ、前に進めませんでした。しかし、現在の水インフラ技術の持つポテンシャルに磨きをかけ、生産性が10倍といったオーダー(桁)の違う圧倒的なイノベーション技術を創出すれば、世界で十分戦えると思います。これが、日本の成長戦略の一角を担うこととなる可能性は小さくないと考えます。こうした動きが一歩二歩と実現していけば、必ず、我が国の官邸・国会・財政当局・マスコミ・国民も皆、下水道インフ「我が国の下水道インフラよ、 世界ナンバーワンを目指せ」―下水道界から日本の成長戦略の一角を提示・実現しよう―

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