3.下水道界挙げての今後の対応 今後、下水道界挙げて、次のような対応を考えるべきと思います。(1)国の下水道施策を議論する委員会の中で、内輪だけで取りまとめ、国として何の公式のオーソライズもない中、提言を出しても効果は薄いと考えます。議論の提言は貴重です。しかし、その内容を、社会資本整備審議会等、国に設置された公式の審議会でさらに議論し、オーソライズすることが重要です。今後の下水道法改正等を考えると、非常に大事な視点です。4.おわりに 「骨太の方針2019」の発表と時を同じくして、その2日前の6月19日に、財務省の「財政制度等審議会・財政制度分科会」から、「令和時代の財政の在り方に関する建議」が出されました。今年の59頁に亘る建議の中の下水道インフラの記述は、「下水道の今後は更新が課題。その際、個別処理のコストが集合処理より低くなる過疎地域では、集合処理から個別処理への切り替えの検討が重要」「上下水道など民間資金活用の重点分野ではコンセッションの事例の拡大に向けての対応が重要」と出てくるだけで、ここでも、他の記述はありません。先述した下水道インフラの重要性のアピールを、下水道界挙げて、組織的・戦略的に進めていく必要があります。それがなければ、近い将来、下水道インフラへの国費の支出は、一気に縮小する可能性があると心から懸念しています。石田 真敏総務大臣世耕 弘成経済産業大臣黒田 東彦日本銀行総裁竹森 俊平慶應義塾大学経済学部中西 宏明株式会社日立製作所取締役会長兼執行役(民間議員)新浪 剛史サントリーホールディングス株式会社代表取締役社長(民間議員)柳川 範之東京大学大学院経済学研究科教授(民間議員)表 経済財政諮問会議 議員名簿安倍 晋三(議長)麻生 太郎副総理兼財務大臣菅 義偉内閣官房長官茂木 敏充内閣府特命担当大臣(経済財政政策)兼経済再生担当大臣内閣総理大臣教授(民間議員)第3種郵便物認可 第1897号 令和元年7月16日(火)発行(39)2. 「骨太の方針2019」の記述から、読み取れるもの 先に述べたように、「骨太の方針2019」は、来年度予算に向けて非常に大切なものです。この中の「下水道インフラ」の記述は、以上のように、本当にさみしいものです。現在の「骨太の方針」は、75頁に及んでおり、以前と比べ、倍のページ数になっています。その中で、下水道インフラの記述は、上記、4箇所のみです。それも、環境インフラの例として、浄化槽が載っているのに、下水道という言葉はありません。第3章も、「水道・下水道」が並びです。 今年、3月に国土交通省下水道部でまとめられた「社会情勢の変化等を踏まえた下水道事業の持続性向上に関する検討会報告書」の中で、下水道インフラの現下の課題として、①未普及対策の推進、②浸水対策の推進、③地震対策の推進、④水質改善の推進、⑤省エネルギー化・資源利用の推進、⑥老朽化対策の推進、⑦PPP/PFIの推進、⑧広域化・共同化の推進、⑨技術開発の推進、⑩国民への発信、の10点が述べられています。このように、現在の下水道インフラの課題は、山積であり、交付金の継続・拡大の必要性も極めて高いと考えます。しかし、政府の中枢には、全く、下水道インフラの現状・課題・重要性は伝わっていないのです。特に、災害対策としての下水道雨水対策の必要性は、「骨太の方針」の中に一言も出てきません。「下水道インフラの老朽化対応」も全く出てきません。他の社会インフラと違って、一瞬たりとも停止できない下水道インフラの特殊性・環境インフラとしての重要性から考えて下水道インフラの老朽化対策は喫緊の課題であることが全く議論されていません。このことは、非常に深刻なことと受け止めています。ポジティブな面では、「下水道インフラが資源・エネルギーの宝庫である」ことを強くアピールすべきです。前国土交通事務次官の森昌文さんが言っていた「官邸の下水道への関心は、PPPだけですよ」の言葉が思い出されます。(2)経済財政諮問会議の議員(別表)、特に、民間4委員等への積極的な説明が必要です。こうした民間委員の方々に下水道関係の委員会に積極的に参加いただくことも検討する必要があります。(3)現在、民間中心で新しく立ち上げる構想のある「民間主導による新法人」において、政府の中枢部・経済財政諮問会議民間委員等のオピニオンリーダーへのアピールを行えると良いと思います。(4)国土交通省内部の幹部、内閣府、内閣官房、官邸、国会議員等への地道なアピールが重要です。そうした関係者との距離を縮めていく努力を日頃から行う必要があります。(5)国民へのアピールも重要です。国民の関心事とのリンクが大事でしょう。
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