下水道の散歩道 第1-33回
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第3種郵便物認可 第1893号 令和元年5月21日(火)発行(41)⑫エネルギー政策 上記因子を受けて、「令和」の日本は、どのような時代になるのでしょうか。そして、「令和」の下水道インフラ界は、どうなるのでしょうか。 日本の人口の急激な減少は、我が国のあらゆる経済社会問題に影響を与えるでしょう。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口中位推計では、我が国の人口は、2020年の1億2410万人から2050 年には、9707万人になる(22%減)とされています(さらに2060年には8670万人(対2020年比30%減)とされています)。これだけの人口の減少は、かつて経験したことのない事象であり、消費対象の減少、労働力不足と、日本経済に大きな影響を与えるでしょう。同時期(2020年から2060年)、世界平均は35%増、米国は23%増、G7平均が6%増、減少の大きいドイツでさえ、11%減、中国8%減で、日本だけ突出して減少幅が大きいのです。他国との国際間競争を考える時、常に、この差を意識する必要があります。また、他国の制度を参考にしたり、比較したりするとき、人口動態の大きく違う国の例は、まったく参考にならない可能性があります。例えば、PPP/PFIを議論するとき、英国やフランスの例が持ち出されますが、上記の40年間の人口動態推計は、英国16%増、フランス10%増で、日本の置かれている状況とは大きな違いがあり、同列には議論できません。高齢化は、先進国でも日本と同じように進んでいる国も多いですが、人口減少とダブルで急激な進行が予測される国は、世界で日本だけです。このように世界で大きなハンディキャップを持つ日本。この現状を深く認識して、生産性の向上等、対応策を取る必要があります。そうでなければ、日本は、一気に二流国に落ち込むことが想定されます。 高齢化人口の急速な増加も、15歳から64歳までの生産年齢人口の減少となり、日本国内の労働力不足に拍車をかける可能性があります。しかし、これをきっかけに一気に生産性の向上が図れる良い機会ともいえます。 国民の価値観の変化と働き方改革、そして初中等教育の考え方も「令和」の日本の行く末に大きな影響を与えます。しかし、こうしたワークライフバランスの重視は、生産性の向上に大きく寄与するチャンスでもあり、一人当たりGNPの大幅な上昇等、我が国の経済発展と国民生活の満足度の向上に大きく貢献する可能性があります。 社会インフラの老朽化問題も深刻です。高度成長期に短期間で整備された鉄道・道路・港湾・上下水道・公共公益施設等の社会インフラの老朽化が進んでいます。戦後、コンクリート・鋼等で建設された我が国の社会インフラの歴史上初めての本格的改築更新時期が迫っています。コストスリムで効率的な老朽化診断技術・老朽化対応技術が強く求められています。 ここ数年の災害の頻発と激化も大きな懸念材料です。ここ数年だけの話ではなく、今後、「令和」年間を通して、大きな災害の発生が想定されます。事前対応やソフト面での対応等を含めて、抜本的な考え方の変更が必要かもしれません。 デジタル化・ロボット化は、今後も加速度的に進むでしょう。先ほども述べたように、GAFAによるプラットフォーム化には、日本は残念ながら、乗り遅れました。しかし、これから進展するサイバーでないフィジカルな世界での最先端技術の開発は、日本の最も得意なところです。勿論、サイバー部分も含め、できれば、プラットフォーマーの位置取りも併せて、我が国挙げて、力を注ぐべきと考えます。併せて、比較的得意分野である「バイオテクノロジー」「量子コンピュータ」「宇宙工学」等の技術開発・実用化においても、世界をリードしていってほしいところです。デジタル化・ロボット化を含めたこの領域の主導権確保の成否が、我が国の今後の国力を決定すると言っても過言ではないでしょう。 国家政策面で記述している項目は、重要な上記国家政策の打ちだし方によって、将来の日本が大きく左右されると考えられるので、記載しました。今後の超高齢化社会における年金・医療等社会保障のあり方、特に国民負担のあり方は極めて重要です。その判断のもと、決定した優先順位による国家投資の考え方、これにより、日本の将来は大きく変わると思います。政府の打ちだしている「Society5.0(日本政府が2018年、第5期科学技術基本計画の中で我が国が目指すべき未来社会の姿として提唱した日本の未来像)」、この実現こそ、我が国の将来を決める要です。これへの投資は、ある時期、社会保障より、重要です。ただ、この分野は、国家投資を増やしたらよいものではなく、官民の分担、民主導への環境づくりこそ重要だと考えます。また、国としてエネルギー政策にどう舵を取っていくか、これにより、我が国の今後の向かうべき方向が決まるかもしれません。 下水道インフラへの影響についても、12因子ほとんどにおいて、プラス面・マイナス面の両面があるものの、比較的大きな影響があ

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