下水道の散歩道 第1-33回
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下水道の散歩道株式会社NJS 取締役技師長 開発本部長[第2回]第3種郵便物認可 第1856号 平成29年11月21日(火)発行(39)イラスト:PIXTA二種流域下水道の創設にあたっては、福井経一氏・安中德二氏・石川忠男氏の3人の元国交省下水道部長とともに全身全霊を傾けて知恵を出し、動きました。「この機を逃したら後はない」との決意から、都道府県代行制度に反対されていた長野士郎岡山県知事(当時全国知事会会長)を、平成2年の雨の早朝、福井経一下水道部長(当時)と2人で知事の東京自宅の前で待ち伏せ、自宅から出て岡山に戻るために羽田空港に向かう知事公用車に乗り込まれるわずかの時間を狙って説得を試みたのは、本当に懐かしい思い出です。こうしたことも実って、都道府県代行制度は難産の末、創設され、その後、31道府県233箇所で実施され、中小市町村の下水道普及に大きな役割を果たしています。こうした制度創設等の際、私は、我が国国内の「時局・時勢」を読んで、提案してきましたが、いまや、日本国内の時局・時勢のみを読むのでは不十分です。2.「第4次産業革命」と  下水道インフラ 我が国における下水道インフラの将来像・下水道関連ビジネスのあり方を考える時、最も大切なことは、社会システム・ビジネスシステムにおける「世界の大きな流れ」を読むことです。「世界の大きな流れ」とは、「第4次産業革命」とも呼べるデジタル革命を中心と「世界の大きな流れ」を読み、「啐そったく啄の機き」で動く谷戸 善彦1.「啐そったく啄の機き」 長く仕事をしてきて、最も大切にしていること、それは、「啐そっ啄たくの機き」です。私の座右の銘です。「啐そつ」とは、卵から鳥の雛ひなが産まれ出ようとする時、雛が卵の内側からコツコツと卵の殻からを叩いて合図を送ること。「啄たく」とは、そのコツコツという合図の音を聞いて、親鳥が、卵を外からつついて殻を破ることです。卵の殻を破るのが、早くても、遅くても、雛は産まれてこない可能性があります。雛と親鳥の絶妙のタイミングがあって、無事、元気な雛が産まれてきます。「啐啄の機」とは、「物事の絶妙のタイミング」「またとない好機」のことです。「敏に機を見る」「ここぞというタイミングを逃さない」。これが、私の40年来の座右の銘であり、行動の第一指針です。 昭和49年に建設省に入って以降、新しい制度・仕組みやプロジェクトを数多く提案し、実行してきました。第二種流域下水道・都道府県代行制度・雨水流域下水道・基本計画策定費補助制度の創設、11プロジェクトの実施、JS再構築、「スマート下水道」・「下水道インフラ」という言葉の提案。それぞれの提案は、タイミングを見定め、機を捉えて、行ってきました。「時間軸」を最大限、意識しました。どんなすばらしいアイデアでも、時機を失すると、「愚策」になります。都道府県代行制度、第した大変革の流れです。その中には、AI・IoT・ビッグデータの活用を中心としたICT革命の他、ロボティクス革命、ゲノム革命、ブロックチェーン等も含まれます。こうした革命のもと、下水道インフラの「構想・計画・設計・施工・維持管理・改築更新・経営・評価」というライフサイクルのあらゆるステージで、劇的な効率化・高度化が達成されましょう。 第4次産業革命により下水道界を取り巻く世界は大きく変化します。その主たるものは以下です。 ①下水道BIM/CIMの普及・発展。下水道インフラの計画・設計・施工・維持管理はすべて三次元情報をベースに実施。三次元情報の属性情報と併せて数量計算等も自動化。維持管理履歴も三次元情報上に累積保管、②下水道インフラに設置したIoTセンサー等からの継続的自動的情報収集、AIによるビッグデータ解析、シミュレーションモデルによる解析等による処理場・管路の無人・自動・遠隔最適管理、③AIによる下水道インフラ自動設計、④AIによる各種報告書・提案書自動作成、⑤ドローン等も含めロボティクスとAIによる自動施工管理・自動維持管理・最適更新判断、⑥ゲノム編集による、汚水・汚泥処理におけるバイオテクノロジーの効率化・高度化、⑦AI活用による下水道経営の最適化・効率化、⑧官・コンサルタント・メーカー・メンテナンス企業における仕事の仕方の抜本的革命(AI・ロボティクス等で効率化できるものは徹底的にAI等を活用し、その先の知的創造部分で人間の価値を生む) 我々は今、かつて経験したことのない大きな変革期に直面しています。この先に来る「世界の大きな流れ」を読んで、「啐啄の機」で動く。このことがかつてないほど強く求められています。

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