昭和44年のターニングポイントのあと、今日までの50年、我が国の下水道インフラは、世界に類を見ない劇的なスピードで進展しました。過去50年、下水道インフラが劇的に進展した理由は、前述の下水道法の改正を含め、私は、次の6点と考えています。ⅰ 昭和44年の都市計画法改正、そのあとに続く下水道法改正、水質汚濁防止法・公害対策基本法等の水質環境保全法制の整備(40)第1885号 平成31年1月29日(火)発行 第3種郵便物認可2.過去50年下水道インフラが劇的に発展した理由3.下水道インフラ新ステージへ。新ステージに向かう現時点で、今やらねばならないこと明記。② 公共下水道は、処理場を有するか、流域下水道に接続することが要件となった。下水処理場の義務付けである。③ 流域別下水道整備総合計画の策定規定新設。④ 「流域下水道」の規定新設。 50年前まで、日本の下水道インフラは、処理場を持たず、管路のみを有したものでも可とされてきました。すなわち、下水を都市内から集め、未処理で川・海に放流してもよかったのです。これでは、川・海などの公の水域の水質汚濁を改善する使命は果たせませんでした。この下水道法改正で、処理場設置が義務付けられ、すべての汚水は、処理場できれいに浄化処理されてから、川・海に放流されることとなりました。そして、下水道法の「目的」に、「公共用水域の水質保全」が明記されたのです。それまでは、汚水対策としての下水道整備の受益は、トイレの水洗化、蚊やハエが身の回りからいなくなるといった居住環境の改善、家の周りの水路のドブ状態の改善など、下水道インフラ利用者に特定されるという観点から、その整備と維持管理の費用は、国や地方公共団体の税金による公費負担ではなく、個人負担(私費負担)でよいのではないかとの議論がありました。それが「川・海という公の物(公物)の水質環境を改善する事業であれば、事業の受益は広く国民すべてに行きわたる。そうであれば、国民の税金を投入して、堂々と公共事業として実施すべき」と認知されたのです。下水道インフラの「都市の後始末施設・個人受益施設」から、「水質環境保全対応社会資本」への脱皮でした。 上記三点以外に、50年前の特筆すべき動きとして、昭和43年8月21日に、自由民主党政務調査会の中に、「下水道小委員会」が初めて設置され、初代の小委員長に当時下水道事業の理解者として、孤軍奮闘されていた田村元衆議院議員が就任されたことが挙げられます。翌昭和44年10月21日には、「流域下水道促進議員連盟」が結成されました。政界から応援の動きが始まったのもこの時期です。ⅱ 5次にわたる「下水道財政研究委員会」提言等に基づく、下水道インフラ財政負担論の確立ⅲ 下水道整備緊急措置法と多次にわたる下水道の中長期計画(五箇年計画)に基づく着実な事業執行ⅳ 流域下水道・都道府県代行制度等による都道府県の的確・タイムリーな事業執行・支援ⅴ 政令指定都市・中核都市による下水道インフラに係る先導的マネジメントⅵ 下水道関連の幅広い民間企業による着実な下水道インフラ整備・維持管理・技術開発 新しい元号とともに、下水道インフラも「新ステージ」に入ろうとしています。過去50年のonstruction」&「Mメンテナンス「Cコンストラクションaintenance」の時代から「Rレインノベーションeinnovation」&「Mマネジメントanagement」の時代への遷移です。レインノベーション(reinnovation)とは、リノベーション(renovation 改築更新)とイノベーション(innovation 技術革新)を合わせて、私が考えた造語です。下水道インフラの本格的大規模リノベーションは、下水道界にとって初めての経験です。イノベーションとセットで最適解を求めていきたいものです。劇的に進展した過去50年と先述したその発展理由を振り返った上で、今後の「新ステージ」における下水道インフラのさらなる進展のために、現時点で、我々はどのような視点を持って、何をやらなければならないか。私は、次のように考えています。
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