エコ(環境)モデル都市」に―下水道の散歩道㈱NJS 取締役 技師長 開発本部長(公社)全国上下水道コンサルタント協会 企画委員長谷戸 善彦[第15回]第3種郵便物認可 第1883号 平成30年12月18日(火)発行(29)イラスト:PIXTAを目指すという国家目標とも一致します。第四の「スーパーシティー」は、前回提案した「スーパーシティー・スーパー下水道構想」のもと、日本の国家戦略「Society5.0」を実現するものです。「水」・「エネルギー再生・自立」・「AI・IoT等先進的デジタル化」です。このコンセプトのもと、「2025年大阪万博」の会場において、下水道インフラの資源・エネルギーポテンシャルを徹底的に活用し、ITをフル活用した「スーパー下水道」を具現し、万博会場を「下水道インフラの多様なポテンシャルのショーケース」とすることを提案したいと思います。 具体的には、①会場内にディスポーザ排水や他の廃棄物も受け入れる下水道超高度処理施設を設置し、そこで製造した下水道バイオガス燃料を使った自動車を会場内公用車に、②下水道バイオガスにより発電した電気で会場内電気全量を賄う、③下水管路内から取り出した下水熱による地域冷暖房、④超高度下水処理水の飲用等再利用、⑤超高度下水処理水により会場内の上水需要を全量賄う水の完全自立型地区形成、⑥会場の下水管路内を飛行するテロ防止対策用ドローンによる地下部監視、⑦下水管路を活用した管路内飛行ドローンによる物資運搬―等を実現させ、下水道インフラのスーパーマンぶりをアピールしたいものです。2. 「サステイナブル・エコ都市―ハンマルビー・ショースタッド」と「2025年大阪万博」 「2025年大阪万博」の会場計画1. 「2025年大阪万博」決定と「コンセプト」 平成30年11月23日、パリの博覧会国際事務局(BIE)総会において、2025年の国際博覧会予定地として、大阪市が選定されました。大規模な万博としては、2005年の愛知万博以来であり、大阪では、1970年以来、55年ぶりの開催となります。その6年前には、東京五輪があり、東海道新幹線が開通しました。今回も、2020年東京五輪、2027年リニア新幹線開業と、50年前と酷似しています。50年前は、高度成長の真っただ中で、70年大阪万博が、関西のインフラ整備の大きな引き金となりました。遅れていた下水道インフラも、70年大阪万博と関連して、大阪府の流域下水道、万博会場に近い大阪北部地域の公共下水道等の普及が急速に進みました。それから55年、これから全容が決められていくと思いますが、「2025年大阪万博」の「コンセプト・売り」は何になるのでしょうか。 私は、「2025年大阪万博」では、「水」・「エネルギー再生・自立」・「サステイナブルエコタウン」・「スーパーシティー」をコンセプトにするのはどうかと考えています。第一の「水」は、大阪が古来、八百八橋を有する「水の都」であること、新元号とともに即位される新天皇が「水」に大変造詣が深いことより、テーマの一つとすべきと考えます。第二の「エネルギー再生・自立」と第三の「エコタウン」は、国連が掲げる持続可能な開発目標SDGsが達成される社会「大阪万博」と下水道インフラ―「夢ゆめ洲しま」を「サステイナブル・ と開催地夢ゆめ洲しまの万博後のマスタープランを考える時、参考となる「サステイナブル・エコモデル都市」が、スウェーデン・ストックホルムにあります。「ハンマルビー・ショースタッド(Hammarby Sjostad)地区」です。ストックホルムの中心より4km、面積200ha、計画人口25000人の地区で、1990年代初頭から2020年度代を目標年度として、「環境に優しい徹底した循環型社会を目指した都市づくり」が行われています。契機は、2004年夏季五輪への立候補です。開催にストックホルムが名乗りをあげ、その際、「他都市にはないアピールポイントを打ちだそう」として考案されたのが、「五輪の競技・選手村予定地をエコタウンとして開発し、開催後も、世界に誇る徹底した循環エコ都市にする」という案でした。五輪は、開催には至りませんでしたが、この「エコモデル都市」計画は、実行に移されました。 当地区の具体的目標は次の3点です。①住民が使う水・資源・エネルギーの量を1990年代初頭の半分に削減する、②総廃棄物量は40%削減、③住民が出した廃棄物と排水は100%リサイクル。この目標達成のため、具体的施策として、ⅰ 太陽光発電・可燃廃棄物発電、ⅱ 下水処理水からヒートポンプで熱回収、ⅲ 下水汚泥からバイオガス回収、ⅳ 下水汚泥肥料化、ⅴ 真空式ゴミ収集、ⅵ 浄水場・下水処理場・地域熱供給施設・廃棄物発電プラントを地区内に設置し、輸送コストを徹底的に削減―が実行されました。計画は順調に進み、地価が高いにもかかわらず、当地区に住むことがステイタスとなり、人々が移り住んできています。 夢洲地区における万博開催時及びその後の都市づくりにあたり、「サステイナブル・エコモデル都市」を目指し、下水道インフラ等からの資源・エネルギーの創出、先端的なITの徹底活用を図り、世界に、日本の技術力・創造力を示したいものです。
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