イラスト:PIXTA下水道の散歩道㈱NJS 取締役 技師長 開発本部長(公社)全国上下水道コンサルタント協会 企画委員長谷戸 善彦[第14回](38)第1881号 平成30年11月20日(火)発行 第3種郵便物認可「スーパーシティー」と「スーパー下水道」―AI・IoT・ビッグデータの徹底活用―するミニ独立政府が運営主体。⑤規制設定の権限はミニ独立政府と住民に委ね、一方、インフラ整備は国主導。 この五原則は、ハードルが高いですが、技術だけでなく、「スーパーシティー」内では制度等も大きく変え、世界をリードし、未来を先取りした都市を作ろうという意気込みは伝わってきます。 この「スーパーシティー」構想の中に、「下水道インフラの資源・エネルギー創出」等を是非、盛り込んで、議論を進めてもらいたいものです。2. 下水道インフラの未来―「スーパー下水道」 下水道インフラの分野でも、AI、IoT、ビッグデータ等、第4次産業革命の要素をフルに活用した「スーパー下水道」構想をまとめることを提唱したいと思います。7年前に、拙著「21世紀の水インフラ戦略-『スマート下水道』20の提言-」を出版しましたが、この中で、「スーパー下水道」に繋がるようなスケールの提言をいくつかしています。一つは「全国の下水処理プラントを『地域のバイオマスエネルギー基地』にせよ」との提言です。二つ目は、「下水管路の途中やポンプ施設から水を引き出す『Sewer Mining・サテライト下水道』を制度化し、技術的にも進化させよ」という提言です。三つ目は「下水道インフラの持つ資源・エネルギーを徹底的に活用した『サステイナブルエコモデル都市』を1.「スーパーシティー構想」 10月29日、片山さつき大臣の下、最先端ICT都市「スーパーシティー」構想を検討する政府の有識者懇談会の初会合が開催されました。「スーパーシティー」構想とは、竹中平蔵東洋大学教授が提唱している「AI(人工知能)、IoT、ビッグデータなど第4次産業革命の要素を凝縮した都市空間」で、具体的には、たとえば、都市全体の主要道路の自動車運行状況をリアルタイムで把握し、蓄積したビッグデータにAIを活用し、都市全体での交通信号の最適化を行い、渋滞を大幅に低減するといった政策を含んだ構想です。従来の「スマートシティー」といったICT活用による省エネなどの部分的取り組みではなく、自動車自動運転システムやキャッシュレス社会・遠隔医療・遠隔教育・自立型エネルギー供給等を盛り込んだ、都市環境全体を抜本的に作り変える構想です。 第一回会合では、今後の検討にあたって、次の五原則が竹中平蔵座長から提出されました。①世界最先端の技術を実証するだけでなく、第4次産業革命後の未来の社会、生活を包括的に先行実現するショーケースとする。②基本構成要素は、ⅰ 自動走行・キャッシュレス・医療・介護・教育・エネルギー等を含めた未来像の提示、ⅱ 住民の参画、ⅲ 強い首長、ⅳ 技術を実装できる企業―の4点。③少数のエリアを透明なプロセスで選定。④国・自治体・企業で構成日本に建設せよ」との提言で、海外のすでにスタートしているモデル都市として、スウェーデン・ストックホルムの「ハンマルビー・ショースタッド」という「サステイナブルエコ都市」を紹介しています(拙著は書きおろしで、提言はすべて私のオリジナルです)。 「スーパー下水道」として、未来の下水道インフラを俯瞰する時、他に、次のようなシステム・姿があろうかと考えています。 ①都市内のすべての雨水系管路・マンホール等に水位センサー・カメラ等を設置し、雨水制御のリアルタイムコントロールを実施、雨水ポンプの最適運転・雨水貯留施設の最適管理を行う。また、マンホールからの溢水の危険が迫っている時には、道路管理者だけでなく、近傍で自動車を運転している人のナビ・スマホ等へ自動的に溢水の危険を連絡。特に、アンダーパスの道路手前で有効。②AI等を活用した下水処理施設の最小コスト・最小エネルギーとなる最適運転。時間ごと・季節ごとの放流水質制御運転。こうした最適解を求めるに当たっては、各戸のリアルタイムの水道使用量の変化・天候、等からビッグデータを蓄積し、システムシミュレータとAIを活用する。③日本中の下水道インフラ施設(管路・処理施設等)を全国1箇所ですべて現状把握・コントロール・遠隔点検。④日本中の下水道インフラ施設の健全度を全国1箇所ですべてリアルタイムに把握、最適改築更新プログラムに沿って、改築更新を計画的に実施。⑤管路内水処理。⑥材質として200年耐用ヒューム管等。 平成から新元号にうつるこのタイミングで、下水道インフラの未来像をしっかりと描き、その方向に向け、技術開発・制度設計等を官民挙げて、進めていきたいものです。下水道界挙げて、内向きの発想から脱し、将来をしっかり見つめて、前向きにスピーディーに対応していかねばなりません。
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