下水道の散歩道 第1-33回
14/60

下水道の散歩道㈱NJS 取締役 技師長 開発本部長(公社)全国上下水道コンサルタント協会 企画委員長谷戸 善彦[第11回](34)第1875号 平成30年8月28日(火)発行 第3種郵便物認可イラスト:PIXTA道インフラの整備が進んでこなかった理由として、下水道インフラ整備の財源確保難と併せて、下水道インフラの建設・維持管理財源の費用負担のあり方が確立されていなかったことがありました。この費用負担論に真正面から立ち向かい、真剣に検討し、結論を得たのが、第1次から第3次までの「下水道財研」でした。この「下水道財研」の提言が単なる一報告でなく、高い有効性を十分に発揮したのは次の理由によります。①委員会の設置主体を特定の中央省庁とせず、全国市長会・日本都市センターとした、②委員として、学識経験者・マスコミ・市長・大蔵省・自治省・建設省と幅広く関係者が結集した、③昭和35年の第1次下水道財研提言、昭和41年の第2次提言、昭和48年の第3次提言と、下水道行政を取り巻く状況の変化に合わせて、的確にタイムリーに提言をまとめた。 第1次下水道財研提言では、「雨水分は原則公費負担。但し、土地の利用価値の増進に係る部分は受益者の負担。汚水分は原則私費負担。但し、公共用水域の水質保全・公衆衛生部分は公費負担。費用負担区分を算定する場合は、雨水投資総額と汚水投資総額が日本全国でおおむね50対50なので相殺し、雨水分は公費、汚水分は私費とする」とされました。また、国費負担については、「公共下水道建設事業は、国の経済、文化の発展の基本となる1. 下水道財政負担論の系譜(第1次~第5次下水道財政研究委員会提言) 私は、「我が国の下水道インフラがこの50年間に劇的に進展した理由」は、次の4点であると考えています。①昭和45年の公害国会と下水道法改正・財政制度確立、②下水道整備緊急措置法と多次にわたる下水道の中長期計画(五箇年計画)に基づく着実な事業執行、③流域下水道・都道府県代行制度等による都道府県の的確・タイムリーな支援、役割強化、④日本下水道事業団の設立・貢献。 この中で、最も大きく影響を与えたものは、①であり、特に「財政制度の確立」が最大と考えています。その中核を担ったのが、昭和35年から昭和60年まで5次にわたって熱心な議論が行われた「下水道財政研究委員会(下水道財研)」という諮問機関によりオーソライズされた「下水道インフラの建設財源・維持管理財源のあるべき姿・負担のあり方」に関する提言でした。我が国の下水道インフラの今日までの劇的な進展・下水道行財政理論確立の礎を築いたのは、間違いなく、この「下水道財政研究委員会(下水道財研)」であると断言できると思います。前回、第10回で私が提起したのは、この「下水道財研」のニューバージョンの復活・設立です。 昭和40年代まで、我が国で下水今こそ、「骨太の政策」の打ちだしを。「下水道財研」の復活・設置を。施設として、国が重大な関心を払うべき公共事業であり、かつ、道路、港湾、河川等と同様、多額の経費を必要とする大規模な事業である。したがって、公費をもって負担すべき経費は、事業主体である地方団体の公費だけの負担とせず、一定の割合を国費で負担することが適当である」としています。 第2次提言では、「雨水汚水の費用負担の基本的考え方は同様なものの雨水投資総額が増加してきていること、汚水のうち『公共用水域の水質保全』という公費負担分が増加していることより、結果として、全体として公費で負担すべき部分は建設費の70%以上(私費で負担すべき部分は建設費の30%以下)であるべき」としています。国費負担については、「基本的には、公費をもって負担すべき経費は、地方公共団体と国とで負担するという前回(第1次提言)の考え方による。しかし、公費の負担すべき部分が著しく増大しており、しかも都市における基本的施設である公共下水道を国家的見地に立って推進しなければならない時期にあること及び公共下水道を設置する市町村の区域に必要な施設にとどまらずその市町村の区域を超えて広い地域に必要な施設になっていることのため、国の負担すべき要素の比重が高まっているので、公費の負担すべき経費については、国が積極的に負担することが適当である」とされました。 そして、画期的な提言である第3次提言では、次のような建設的な提言がなされました。ア 下水道はナショナルミニマムであり、また、水管理システムにおける水循環サイクルの重要な構成要素であり、公共性の強い施設である。よって、その費用負担については、公費で負担すべき部分を増大させるべき。したがって、建設費については、汚染原因者の負担を除き、公

元のページ  ../index.html#14

このブックを見る