第3種郵便物認可 第1873号 平成30年7月31日(火)発行(39)いました。また、昨年12月22日に財務省から発表された「平成30年度国土交通省・公共事業関係予算のポイント」の中では、「下水道事業における受益者負担の原則と民間活用の推進」が特記され、「下水道の公共的役割・性格を勘案し、国による財政支援を未普及の解消及び雨水対策に重点化する」と記されました。この財務省の発表は、極めて深刻に捉える必要があります。 一方、平成30年6月27日に自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長ら若手議員の勉強会「2020年以降の経済社会構想会議」が取りまとめた提言が注目を集めています。3月1日から、30名の若手議員が勉強を重ねてきたもので、今回の中間提言では、「国会改革」を柱に提言がなされています。提言では、「首相主導」の意義を再確認し、修正と改革を加えて、「首相主導のバージョンアップ」を目指すべきとしています。「バージョンアップされた首相主導」の下、「国会の行政監視機能の強化」と、「内閣の説明責任の徹底」を謳っています(具体的な国会改革としては、行政の公平性に疑義が生じた場合(今回の森友問題・加計問題等)、国会に「特別調査会」を設けて、事実究明を行い、一定の結論を出す仕組みの構築を提案しています。説明責任の強化へ、党首討論の毎週の開催や夜の開催も求めています)。 今回の提言は、若手有力議員による「ポスト平成時代」の「国会と行政の在り方」の方向性を示唆するものと言えます。「首相主導」、「国会の行政監視機能の強化」、「内閣の説明責任の徹底」という三つの「方向性」(特に「首相主導」と「内閣の説明責任」)を読み解くとき、現在、厳しい財政措置の方向性を財政審から突き付けられている「下水道インフラ」の将来に向け、我々が今何をすべきかが、おのずから明らかになってくるように思います。 第一にやらねばならぬことは、「人口減少・ストック量増大・老朽化進行・財政逼迫時代の下水道インフラの新たな財政負担論」をきちんと、エビデンスを付けて、理論構築し提示することでしょう。第一次から第五次まで真剣な議論が戦わされた「下水道財政研究委員会(財研)」の現在時点における理論解の提示です。過去の一次・二次・三次のように、日本政府を挙げた骨太のメンバーによる深くて多面的な議論を期待したいと思います。この「新しい下水道財政研究委員会」のメンバーや議論が、世の中の注目を浴びる内容となれば、そのアピール効果は、とても大きいものがあります。 財政審の議論は、受益者が特定できる「上水道」と公共用水域の水環境を広く保全し受益の範囲が幅広い国民に及ぶ「下水道」について、その役割の差を考慮せず、単純に財源構成を比較するなど、かなり無理な議論を進めています。しかし、小泉勉強会提言の通り、きちんとした証明・理論構築をする説明責任は「行政」にあります。かつての過去の財研のときとは、社会情勢・下水道インフラを巡る状況・国の財政状況も大きく変わっています。もちろん、不変の考え方も少なくありませんが、やはり、「現在版の、ポスト平成時代の下水道インフラ財政論」が必須です。これを避けて通るべきではないと確信します。 特に、第三次財研は、「下水道インフラはナショナルミニマム」であるという大きな考え方の下、「下水道インフラの公共事業性」・「国による高い補助の意義」を強く打ちだしています。その後の第四次・第五次で、汚水の受益者負担(使用料の充当範囲)について、一部、ゆり戻しがありました。しかし、「広域的で不特定多数の受益を生む、公共用水域の水質保全」という「下水道インフラの環境インフラとしての役割」を評価しての汚水整備費に対する「国による補助の意義」については、いささかの変化もありませんでした。こうした系譜も認識した上、現在の諸情勢を踏まえ、新たな「ポスト平成時代」の考え方をまとめるべきと考えます。3.下水道インフラの環境貢献を世界へ、日本国内へ発信 第二は、「下水道インフラ」が今日の「世界に誇れる日本」の形成に与えてきた素晴らしい効果を定量的・具体的に提示し、今後その継続を図っていく「必要性」と「手段」を明示することです。わが日本が、世界に誇れる素晴らしい特性は、「清潔で美しい環境の国土」だと思います。昭和30~40年代、日本中がドブ川・汚れた真っ黒な海になっていた状況からの劇的な変化、この我が国の水環境の改善は、間違いなく、「下水道インフラ」の整備によるものです。「下水道インフラ」の最大の特性は「環境インフラ」であることです。この評価をきちんとすること、そして、世界に、官邸に、国民に発信して、自らのものとして理解してもらうこと、これが重要だと考えます。この「環境」というキーワードは、「下水道インフラ」を理解してもらう際の最大のキーワードだと思います。 「新たなポスト平成時代の財政負担論」そして「下水道インフラの環境インフラとしての大きな貢献」、以上二点について、下水道界を挙げて、早急に議論をスタートし、取りまとめ、幅広く世界に、日本国内に発信することが期待されるところです。
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