下水道の散歩道株式会社NJS 取締役技師長 開発本部長[第9回]第3種郵便物認可 第1870号 平成30年6月19日(火)発行(41)イラスト:PIXTAるとき、私は、「イノベーション(革新)」によって達成を目指すべき目標は、次の5点と考えています。①省コスト化、②生産性・効率性向上、③安全性、④安定性・確実性、⑤精度・質の向上―。 こうしたイノベーションを目指すとき、下水道関係者が強く意識すべき姿勢・スタンスとして、「アントレプレナーシップ」が挙げられます。「起業家精神」です。「アントレプレナーシップ」とは、事業創造や新商品開発等に高い創造意欲を持ち、リスクに対しても積極的にチャレンジしていく姿勢や能力のことで、達成動機・独創的な発想力が中核となって形成されると言われています。米ハーバードビジネススクールのハワード・スチーブンソン教授は、「アントレプレナーシップ」を「コントロールできる経営資源を超越して機会を追求する姿勢」と定義づけています。また、スタンフォード大学のティナ・シーリグ教授は、「アントレプレナーシップは一部の限定された人のみに与えられた才能ではなく、想像力を働かせ、創造性を熟させ、モチベーションを保ち、逃げずに粘り強く取り組み、周囲の人間を巻き込めば、誰でも後天的に学び得るものだ」と語っています。 「アントレプレナーシップ」を持って、「イノベーション」を指向するとき、今日では、すべて自前でとはなかなかいきません。下水道インフラのイノベーションにおいても、今や、「異業種連携」が必須です。下水道インフラの世界だけでの最適解を目指すのではな「アントレプレナーシップ」を持って「異業種連携」手法で「イノベーション」を谷戸 善彦1.アントレプレナーシップ (起業家精神) 昨年12月22日に財務省から発表された「平成30年度国土交通省・公共事業関係予算のポイント」の中に、「ICT、AI、IoTの活用による下水道施設管理の低コスト化・省力化」と「下水道事業における受益者負担の原則と民間活用の推進」が特記されています。特に、後者の詳述では「下水道の公共的役割・性格を勘案し、国による財政支援を未普及の解消及び雨水対策に重点化する」と記されています。この「ポイント」の内容として、「高速道路整備の加速」・「整備新幹線の着実な整備」・「観光施策の推進」などポジティブな新規施策等が主として掲げられている中、下水道インフラに対してはかなり厳しいスタンスが感じられます。この「国土交通省・公共事業関係予算のポイント」の上位に位置付けられ、同日付で財務省が公表している「平成30年度予算のポイント」の中では、平成30年度予算の重点課題として、「生産性革命」と「省コスト化等による財政健全化」が謳われています。 このように、下水道インフラに対して厳しい視線が向けられている中、官民挙げて、下水道インフラ関係者は、「国民第一・市民第一」のもと、下水道インフラのすべての分野において、「イノベーション(経営革新・技術革新)」による「生産性革命」・「省コスト化」を徹底的に追求すべきと思います。「国民第一・市民第一」を意識すく、異業種・異分野の人を巻き込んでの最適化を指向する、異業種・異分野の人の技術・知恵を活用する。これが、今の時代のワークの進め方だと思います。2.イノベーションの実践 ㈱NJSでは、デジタル化時代のコンサルタントの在り方として、「コンサルティング&ソフトウェア」を謳い、新たな「Next Gesuidow」に挑戦しています。そのラインナップは、a.下水道管路等の閉鎖性空間点検調査用ドローン「Air Slider(エアスライダー)」の開発、b.クラウド台帳システム「SkyScraper(スカイスクレーパー)」の展開、c.システムシミュレータ「BioWin(バイオウィン)」の導入・普及、d.官民連携関連業務の推進―等です。「アントレプレナーシップ」を強く持って、ドローンと官民連携は異業種の会社との連携により、台帳システムは自前で、システムシミュレータはカナダからの導入でと、多様な対応で、展開を進めています。ドローンは、先日、共同研究を実施させていただいている横須賀市で実証のデモ飛行を実施し、非GPS空間である下水道の地下空間における完全自律飛行に日本で初めて成功しました。昨秋、青森でデモ飛行した電波操縦で飛行する小中口径用ドローン(AS400)とは全く違う新たな中大口径用完全自律飛行ドローン(AS800)で、2つのラインナップを有したことになります。今後、実用化に向けて、「アントレプレナーシップ」を前面にチャレンジし、「生産性の向上」・「省コスト化」に繋がる「イノベーション」の実現に力を注ぐ所存です。 下水道インフラ関係者挙げて、「アントレプレナーシップ」を強く持ちつつ、下水道の世界だけに閉じこもらず、「異業種との連携」を強く押し進め、下水道インフラの世界で画期的な「イノベーション」を次々と生み出していかねばならないと痛感します。
元のページ ../index.html#11