下水道の散歩道株式会社NJS 取締役技師長 開発本部長[第8回]第3種郵便物認可 第1868号 平成30年5月22日(火)発行(45)イラスト:PIXTAを回収したりすることができる。都市の基盤施設で、このようなダイナミックな役割を果たせるものはなく、このことは、極めて幸いであり、しかし、また、そのポテンシャルを実現化する責務も下水道事業にはある」。 数ある社会インフラの中で、このようにインフラそのものが資源エネルギーをこれほどコンスタントにかつ全国で大量に自ら生み出す社会インフラは他にはありません。 下水道インフラは、一言で言うなら、「多機能資源エネルギー創出型環境安全社会資本」といったところでしょうか。 こうした下水道インフラの持つ「資源エネルギー創出ポテンシャル」は、以前から、認識されていましたが、「下水道普及率の大幅向上」と「技術革新」により、大きくクローズアップされてきました。全国いたるところでコンスタントに得られること、人間が生存する限り永久にサステイナブルに確保できること、これが大きいと考えます。2.「広域化計画」×「資源化 計画」×「官民連携計画」 私は、日頃から、下水道インフラは、「3つの宝庫である、それは、『内需・外需の宝庫』・『技術の宝庫』・『資源エネルギーの宝庫』だ」、と言っています。この「資源エネルギーの宝庫」という他の社会インフラにはない独特の特徴を生かさない手はありません。下水道の普及が全国に広まった今日、この分野の技術開発への注力、そ1.下水道インフラは特殊なインフラ 道路・河川・港湾・公園等、数ある社会インフラの中で、下水道インフラは、独特の特徴を有する特殊なインフラです。それは、①汚水の排除処理による公共用水域の水質保全・疫病蔓延防除・住宅都市の清潔化、雨水の排除貯留による都市浸水防除、資源エネルギー創出という多くの機能を有すること、②地球環境・水環境を守る環境対応インフラであること、③都市浸水・疫病から国民を守る安全対応インフラであること、④自ら資源エネルギーを生み出す宝の山であること―です。 下水道インフラは、社会インフラの中で、「資源エネルギーを消費したり、環境を改変したり」するのではなく、「資源エネルギーを生み出し、地球環境を守り、サステイナブルな社会を保持していく」人と地球に優しい社会インフラなのです。 現東洋大学(元東京大学)の花木啓祐教授は、次のように話しています。「都市にあるインフラのうち、物質循環やエネルギーなど多方面で環境に貢献できる事業は下水道しかない」。 また、花木教授は、次のようにも言っています。「そもそも下水道は、人間社会の物質循環の鍵を担うポテンシャルを秘めている。下水道には、大量の水が集められ、そこで、水を再生し、また、汚泥を資源化したり、熱やエネルギー下水道インフラは「多機能資源エネルギー創出型環境安全社会資本」谷戸 善彦して全国すべての管路施設・処理施設での「下水道資源エネルギー創出計画」の策定が望まれます。 国で下水道インフラの「広域化・共同化」を推進する動きがあります。平成34年度までに全都道府県での計画策定を求めています。下水道インフラ経営の効率化のために、的確な素晴らしい施策だと思います。また、コンセッション等「官民連携」の推進も動いています。この官民連携についても全国的な計画策定が求められるところです。先に述べた「資源エネルギー創出計画」と合わせ、「『広域化・共同化計画』×『資源エネルギー化計画』×『官民連携計画』」のセットでの全国策定が下水道インフラの生産性・経済性・効率性の向上に劇的な効果を発揮するのではないでしょうか。資源エネルギー化計画と広域化・共同化計画は密接に関連します。また、官民連携計画も現在のように、一都市内での検討でなく、広域化を踏まえての検討となると選択肢が大きく膨らみます。 こうした総合的検討の中で、私として個別にいくつか考えていることがあります。一例を述べますと、①都道府県の役割の拡大の中で、雨水流域下水道の積極的検討、都道府県代行制度の活用、②都道府県を超えての広域化・共同化の観点より、地方整備局による下水道直轄での計画策定・場合によっては事業化―です。 下水道経営・運営を取り巻く情勢がかつてないほど厳しくなっている現在、従来の発想に拘らず、あらゆる可能性を考えるべきと思います。その中で、国・都道府県・市町村・あらゆる業種の民間企業等、下水道インフラ関係のすべてのプレーヤーの参加による、かつ、的確な役割分担による施策及び具体的な計画が求められましょう。その計画は、決して一律ではなく、すべてのケースで最適解が異なるケースバイケースの計画だと思います。
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