オランダは水管理の世界的なリーダーアムステルダムは糞尿からリン資源を回収中27名の国際的な科学者、33の政府関係者、その他水環境グループ)の報告書では、世界に迫りくる危機をくい止めるためには、水資源の使用を経済成長から切り離す取り組みを強化する必要があると述べている。その分離を達成する費用対効果の最も高い方法は、政府が水源から配水、経済的な水利用、治水、水処理、再生水、水環境への配慮など、つまり水循環全体を考慮した水管理政策を計画し、実行に移すことである。具体的な方策としてIRPは次のことを推奨している。◦ 水の無駄を減らす研究開発に投資する◦ 水利用の効率を改善し、持続可能なインフラの構築◦ 水に脆弱なグループを保護しつつ、水需要全体を抑制し、社会に最も有益な商品やサービスを生産するセクターに水の再配分を行う◦ 人間の福祉と経済的な発展に対応する生態系サービスと水の価値向上に関する研究の強化◦ 仮想水およびウォーターフットプリントなどを評価し国際貿易パターンを使用して、最も水が必要な場所をサポートすること4.食料・エネルギー・水の相互作用……パネルディスカッション 政府代表者、企業、市民グルー第3種郵便物認可 サイドイベントで放映されたオランダの水管理(出所:World Economic Forum Official Site)国土の1/3は海面下であるプが参画し「食料・エネルギー・水の相互作用」に関し白熱した論議が交わされた。国連食糧農業機関(FAO)のデータによると世界は、現代史上最大の食糧危機に直面しており、世界中で約8億人が飢餓を経験しており、これは世界人口の9.8%に相当し、さらに増加傾向であると警告を発している。パネリストによると、公共部門と民間部門の両者の連携により食料システムの回復力を復元させ、効率的な農業生産の推進を提言している。その提言のなかで、注目されたのが、「小規模農家を支援する戦略」である。今日、飢餓の被害に遭っている人々の多くは小規模の食料生産者である厳しい現実が存在する。世界の農場のほとんど(84%)は、低所得で飢えた農民が所有する小規模農場(2ha以下)である。特にこれから人口爆発が予想されるアフリカ諸国は大変で、世界の農林漁業労働力のほぼ半数(49.7%)を占めるアフリカ諸国の飢餓人口は57.9%である。 2000年以来、世界で最も農業生産成長率を記録しているのにもかかわらず、アフリカは依然として主要な食料輸入国であり、2016年から2018年の統計をみても、必要な食料の85%は輸入に頼っている。ノルウェーの国際開発大臣のアンネ・ベアテ・トヴィンネライム氏は、「小規模農家に投資すべき」と述べ、具体的に小規模農家、 第1987号 令和5年2月21日(火)発行(43)特に発展途上国には、農学にもとづく栽培技術や気候変動に対処するノウハウ等を拡げるための投資の必要性を強調している。5.オランダ……世界の水管理のリーダー サイドイベントで放映されたオランダの水管理の取り組み紹介ビデオでは、国土の1/3は海面下にある国を守るための高潮などの水害防止施策や、農業を支える下水道からリン回収まで幅広くPRしている。ウクライナ侵攻後、世界中の肥料価格が高騰する中、リン回収は国の重要な施策と位置付けられているのだろう。九州と同じ面積のオランダの農産物輸出額は約1000億米ドル(約12兆円、2020年)を超えている(日本の21年度農林水産物輸出額は約1兆2385億円、農水省発表)。さいごに ダボス会議は経済人の集まりであり、目の前の経済対策が重要視されるのは、理解できるが、経済を支えている水の役割(食料、エネルギー、水とのつながり)についての言及が少ないのが気になるところである。来る3月には47年振りに国連ニューヨーク本部で大規模な「国連2023年水会議」(3月23日~24日)が開催される。筆者も参加予定であり、世界各国の水への取り組み策に注目している。
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