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SEWグローバル・ウォーター・ナビ 「分断された世界における協力の姿」をテーマにスイスのダボスで開催された世界経済フォーラム年次総会2023(通称「ダボス会議」)が1月20日に閉幕した。世界経済フォーラム総裁のボルゲ・ブレンデは閉会の辞で「今回のダボス会議では、特に食料、エネルギー、気候変動という最も緊急的な危機への認識と取り組みに進展が見られた」と強調した。 3年振りに開催されたダボス会議では、世界各国から政府代表、産業界の指導者や市民団体など約2700人の参画の下で、50以上の特別セッションが展開された。日本から西村経済産業大臣、後藤経済財政担当大臣や河野デジタル大臣、産業界のVIPらが、日本のビジョンや取り組みを発信した。 会議では当然のことながらロシアのウクライナ侵攻と、急激に上昇するインフレ、世界同時不況への懸念などが地政学的な対立を引き起こす、主要な新たな懸念事項とみなされ、それに伴うリスク認識と回避について多くの論議が交わされた。ダボス会議に先立ち恒例の「年次グローバルリスク報告書」が開示され、今後10年間に人類が直面する最悪のリスクが述べられている。1.グローバルリスク トップ10 このグローバルリスク報告書は、(42)第1987号 令和5年2月21日(火)発行 1200人を超えるその道の専門家、政策立案者、業界のリーダーが、今後起こるべきリスクを評価したものである。トップ10のリスクは、①気候変動の緩和策の失敗、②気候変動適応策の失敗、③自然災害および異常気象、④生物多様性の喪失と生態系の崩壊、⑤大規模な非自発的移住、⑥天然資源の危機、⑦社会的結束と二極化の侵食、⑧サイバー犯罪とサイバー不安の蔓延、⑨地経学的な緊張、⑩大規模な環境被害事件――である。いずれの項目も今後10年間で起こりうるリスクの大部分が水管理に関することを示している。 しかし、気候変動における水資源の役割への低い評価、水管理への投資の低さ、水管理の早期警戒システムの未達、国境を超える水紛争の頻発、水の再生利用の低さなどの課題が列挙されている。ではどうするのか。国際的な取り組みネットワーク作りや水関連の投資問題に言及が少ないのが気にか2023年次 ダボス会議が開幕(出所:World Economic Forum Official Site)河野デジタル大臣(左から二人目)が世界経済フォーラム・セッションに登壇(出所:デジタル庁Webサイト)かることである。本会議の公式ホームページやサイドイベントで取り上げられた水問題を探ってみた。2.水管理改善への影響……世界銀行2030水資源グループ 2030年水資源グループ(2030 WRG)は、ダボス2008年次総会で発足し、世界の水需要と、そのギャップを埋める提案を支援してきた。2030WRGフォーラムは、設立以来、民間部門、政府、市民団体からの1000を超えるパートナーのネットワークを構築し、14の国/州で運営されている。また1億米ドルの資金調達を促進し、次のような分野で大きな成果を上げている。◦農業用水の効率化◦都市の生活用水および工業用水◦下水処理や排水処理◦水質管理の改善 これらにより、約1億m3の水資源を節約することができた。2030WRGは現在、バングラデシュ、ブラジル、エチオピア、インド、ケニア、メキシコ、ペルー、南アフリカ、タンザニア、ベトナム、モンゴル、ルワンダ、パキスタンの13ヵ国でプロジェクトを実施している。3.国連環境計画(UNEP)……IRPレポート UNEPが主催するIRP(International Resource Panel:第3種郵便物認可ダボス会議で語られた水の危機吉村 和就[グローバルウォータ・ジャパン代表 国連環境アドバイザー]92

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