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第3種郵便物認可 ている(Renub Research調査)。 主要な市場は中近東、アフリカ、北米、アジア太平洋地域であり、主要EPC企業はアキシオナSA、ヴェオリア、バイウォーター、デグレモン、IDEテクノロジーなどである。日本企業は膜素材の提供に留まっている。2)水リサイクル市場予測 米国CMI(Custom Market Insight)社の調査によると、「世界の水のリサイクルと再利用需要の市場規模」は、2022年は171億6千万米ドルで、2030年までの年間成長率(CAGR)は約14%、2030年には約305億米ドル(約4兆1千億円)に達する。地域別市場ではアジア太平洋地域が驚異的な成長を遂げると予測され、今までに着実に市場を伸ばしたのは、豪州、台湾、シンガポールなどで、今後は中国、インド、アフリカ(サハラ砂漠以南の国)の水インフラ整備で急速な発展が期待されている。またCOP27(エジプト)で宣言された「損失と損害」に対する基金(先進国が途上国の水災害を補償)では資金援助とともに技術的な支援が求められており、これらも持続可能な水ビジネスの進展を支えることになるだろう。3)水処理薬品市場予測 2023年は411億米ドルと推定され、その後3.4%(CAGR)の成長で2028年には502億米ドル(約6兆7770万円)に成長すると予測されている(英国Market Growth Report調査)。大きな市場は米国、中国、欧州、東南アジアと推定されている。4.2023年 国内の水ビジネス展望 2年以上も続いたコロナ禍で上下水道の料金収入も減少している中、官需向けビジネスは劇的な変化は望めないが、変革を目指した動きが活発になることを期待したい。民需では半導体関連水ビジネスには期待ができるだろう。1)水道事業関係 昨年9月に昭和33年から65年間続いていた厚生労働省の水道行政が令和6年度をめどに国土交通省に業務移管されることが閣議決定された。国交省は、水資源管理、河川行政、下水道、道路、港湾整備など幅広い水インフラ関連を所管している。業務移管後は、水利権の許認可、ダムの多目的活用の促進など、水道行政の効率化に大きく貢献することが予想されている。例えば、浄水場で大きなコストがかかっている「汚泥処理」も、上流取水で、濁度や汚染度の低い綺麗な原水を取水し汚泥処理コストを削減、また流域治水により水道原水を自然流下で配水するなど、電力コスト削減に大きく寄与するだろう。ビジネス的には流域全体の水循環をまとめ上げるために総合的な水循環コンサル業務が拡大し、従来の水道コンサルタント(NJS、日水コン、東京設計、日本水工設計など)は、今後国交省の河川系コンサルタント(建設技術研究所、日本工営、パシフィックコンサルタンツ、八千代エンジニアリング、河川情報センターなど)と協調するか、または激しい鍔迫り合いが予想される。2)下水道事業関係 令和5年度の下水道予算(社会資本総合整備として約1兆4千億円)では、さらなる防災・国土強靭化に下水道による浸水被害軽減総合事業の拡充や、DX戦略とともに下水道温室効果ガス削減推進事業の創設が織り込まれている。特に昨年9月頃から注目されている下水汚泥の農業利用が、ウクライナ侵攻後、急激な肥料価格の高 第1985号 令和5年1月24日(火)発行(29)騰に対処するために、大きなビジネス(コンポスト化、リン回収など)になることが予測されている。下水汚泥に含まれるリン資源量は、農業で使用されるリン肥料(約50万t/年、全量輸入)の1割を占めると試算され、農業関係者からも大きな期待が寄せられている。下水汚泥や焼却灰からのリン回収では、大手の水ingや日立造船、メタウォーターなどが先行しているが、中堅の共和化工㈱の動きも注目されている。佐賀市の下水汚泥コンポストセンターの指定管理者を含め、全国15ヵ所で展開、さらに自社保有のコンポストセンター4ヵ所で積極的な営業を行っている。同社のモットーは「微生物はうそをつかない®」である。3)半導体向け水ビジネスの進展 2021年から2023年までの3年間における世界中の半導体工場への投資額は約67兆円(135円/ドル換算)であり、日本国内でも、新聞報道によるとTSMC熊本(8000億円)、ソニー(数千億円)、キオクシア(1兆円規模)、キャノン(380億円)など建設が目白押しである。ここで使われる超純水関連(膜、イオン交換樹脂、高純度水処理薬品など)が大きなビジネスになるだろう。“水なくして、半導体なし”である。さいごに コロナ禍が収束しない中、ロシアのウクライナ侵攻により、あらゆる原材料の高騰や不安定な世界経済に直面する日本だが、国民の命を守る上下水道インフラを持続可能にすることは我々の使命である。時代の変化に対応したグローバルな視点を持ち、今、置かれている立場でなにができるのか、アイデアと智慧を絞り、実行に移す年でありたい。

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