SEW動きを振り返るグローバル・ウォーター・ナビ1.2022年 海外の水ビジネスの動きを振り返る 昨年の海外での大きな動きは、水関連デジタル化の加速と世界的な水メジャーの動きである。1)水関連デジタル化の波 世界的に上下水道ユーティリティ・システムにデジタル化の波が押し寄せてきた。水のデジタルソリューション化は経営環境の改善、地球温暖化による水災害の防止、減少する労働力の補完、タイトなサプライチェーンを大きく改善する力が徐々に認識された。米国では約950のデジタルウォーターベンダーが活躍し、さらに水のデジタルソリューション化が加速している。10年遅れと言われている日本市場においても、上下水道分野のDXソリューション(ビックデータ活用、薬品注入の最適化、衛星による漏水検知、通信会社との協調など)が発展途上である。 そのような状況下で、小規模であるが愛知県豊橋市のIoT活用モデル事業が注目されている。水道、電気、ガスの共同検針で、検針業務の効率化だけでなく、維持管理の見える化、見守りサービスなど、地域に根差したインフラの安全保障に貢献するものと期待されている。2)ヴェオリアとスエズの合併…… 欧州委員会(EU)は、水ビジネ(28)第1985号 令和5年1月24日(火)発行 世界最大の水企業に①大型コンセッション、DBO 宮城県が運営していた上・工・下水9事業を対象とした「みやぎ型管理運営方式」が昨年4月、メタウォーター㈱が代表企業となり、日本初の大型コンセッションとして正式にスタートした。ス世界最大手の仏ヴェオリア社による同業仏スエズの合併(買収)を認める決定をした。ただしスエズが仏国内の水道事業を売却しないことなど、欧州の競争環境に悪影響を与えないことを条件とした。各政府当局の承認を得てからのスタートとなるが、例えば英国の競争・市場庁は2022年8月、ヴェオリアに対し、次の3事業の売却を命じている。①スエズの英国での廃棄物処理サービス事業、②工業用水運用サービス事業、③ヴェオリアの欧州における移動式水処理サービス事業――などである。2023年は、それぞれのブランド名で積極的な営業展開を図っており、その世界戦略は、水部門は勿論のこと、有害廃棄物処理、固形廃棄物(プラスチック)リサイクリング、エネルギー効率化、エコロジーなど幅広く展開し、当期税引き前利益(EBITDA)は4.7~4.9ビリオンユーロ(約7千億円)を目指している。2.2022年の国内水ビジネスの また昨年は、浄水場向け大型DBOプロジェクトが数多く見られた。①2月、栃木県小山市・若木浄水場DBO、代表企業は東芝インフラシステムズ㈱で115.6億円(維持管理含め)、②4月、神奈川県小田原市高田浄水場DBO、代表企業は水ingエンジニアリング㈱で189億円(維持管理含め)、③9月、山口県下関市長府浄水場DBO、代表企業は㈱神鋼環境ソリューションで279億円(維持管理含め)、④12月、秋田市仁井田浄水場DBO、代表企業は鹿島建設㈱(ほか水ingエンジニアリングなど)で232.4億円などである。今後とも中核都市向けにDBOビジネスは大きく進展することが予想されている。②水処理会社の経営統合の動き 昨年12月5日、月島機械㈱とJFEエンジニアリング㈱の水エンジニアリング事業の統合の動きが報じられた。統合新会社名は「月島JFEアクアソリューション㈱」で資本金は50億円、従業員は約800名で、本年10月から正式にスタートし、2035年度までに事業拡大、M&A等により売上高1500~2000億円を目指す。汚泥処理に強い月島機械と、EPCに強いJFEエンジの事業統合による相乗効果が期待されている。3.2023年 海外水ビジネスの展望 世界人口が80億人を超え、世界的に水ストレスが顕著になってきている。水資源の確保として海水淡水化や水のリサイクルビジネスの進展が予想されている。1)海水淡水化市場予測 海水淡水化市場は、2021年の190億米ドルから2027年に320億米ドル(約4兆3200億円、135円/ドル換算)に達し、その期間内で8.8%(CAGR)の加速が予想され第3種郵便物認可2023年 国内外の水ビジネス展望吉村 和就[グローバルウォータ・ジャパン代表 国連環境アドバイザー]91
元のページ ../index.html#89