SEWと損害に対する基金設立グローバル・ウォーター・ナビCOP27 エジプトで2022年11月6日から開催されていた、「国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)」は11月20日、「シャルム・エル・シェイク実行計画」に合意して閉幕した。COP27の大きな論点の一つとなったのが、気候変動による「損失と損害(Loss and Damage)」に対する補償であり、具体的には気候変動の悪影響を受ける途上国に対し、先進国が支援するための基金の設立が盛り込まれたことである。 議長国であるエジプト政府は基金設立について「初めてCOPの中心議題になった“損失と損害に関する資金調達”に進展があったことは、COP27の成果の中でも、極めて重要な歴史的な決定だ」として、その成果を強調している。事実、この基金設立のコンセンサスを得るために会期が2日間も延長された。COP会議は、本来は気候変動に対するエネルギー問題が主役であったが、今回、多くの国家元首が緊急課題として、特に水問題を取り上げ、「水不足、干ばつ、国境を越えた協力の欠如、早期警報システムの改善の必要性など」に関する演説や文書を提出した。 SDG6(SDGsの目標6)では、水不足が世界人口の40%以上に影響を及ぼし、排水の80%が未処理のまま、河川や海に排出されてい(42)第1983号 令和4年12月13日(火)発行 ることを憂慮すべきこと、また自然災害の90%以上が水関連であり、今後数年間で水循環が激化することを、既に警告している。議長国エジプトは、適応型水管理システムを、気候変動適応アジェンダの中心に置くための政治的な努力、実践的行動、知識の共有、能力開発を促進することを目的とした「水適応と回復力のための行動指針」(AWARe:Action for Water Adaptation and Resilience)を宣言、国際社会が力を合わせ行動することを成果に織り込んだ。COP27には約200ヵ国の代表をはじめ4万5000人以上の参加者が集まり、アイデアや解決策を共有し今後の気候変動にどのように対処するかが話し合われた。1.COP27の主な成果……損失 各国政府は、開発途上国(特に脆弱な国々)への損失と被害への対応を支援するために、新しい資金調達の取り決めと専用基金を設立するという画期的な決定を下した。この背景には、2020年までに年間1千億米ドルを共同で拠出するという先進国締結国の目▲COP27 損失と損害に対する基金設立に合意 (出所:国連気候変動枠組条約(UNFCCC)Web サイト)標が達成されていないことに、途上国から深刻な懸念が表明されたことがある。COP27では、合計2億3千万米ドルを超える新たな誓約が行われ、2030年までに具体的な解決策を通じ、脆弱な途上国に住む人々の回復力を強化する「適応アジェンダ(30目標項目)」が採択された。その中では、低炭素社会への世界的な変革には、少なくとも年間4~6兆米ドルの投資が必要となる予想が強調されている。 各国政府は来年のCOP28(UAE・ドバイ開催予定)で、資金調達と基金の運用方法について勧告を行う「移行委員会」を設立することにも合意した。その他の主要な成果は次の事項である。1)テクノロジーCOP27 開発途上国で「気候変動技術ソリューション」を促進する5年間プログラムの開始宣言。2)気候変動の緩和策 緩和作業プログラムが開始され、そのレビューが2026年まで継続される。3)国連からのメッセージ アントニオ・グテーレス国連事務総長は、今後5年以内に地球上のすべての人々が早期警戒システムによって保護されるために31億米ドルの計画を発表。4)各国の支援体制 G7各国とV20(脆弱な20ヵ国)は「気候変動に対するグローバルシールド」を立ち上げ、初期資金として2億米ドルを超えるコミッ第3種郵便物認可~気候変動の危機は水危機である~吉村 和就[グローバルウォータ・ジャパン代表 国連環境アドバイザー]90
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