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震に強い構造となっている。3)ダムの堤体となるCSG打設の流れ 製造されたCSGはダンプトラック(最大積載量55t)により打設場所まで運搬され、1層あたり25cmの厚さになるように、自動制御ブルドーザで均し、これを3層まで積み重ねている。 その後、自動化された転圧振動ローラで締め固めを行い、1回当たりの打設を終了。ピーク時には、月間30万m3のCSG材を打設している。4)自動化重機を見守る……ITパ ITパイロット(作業指示、作業監視)は、常時4人が勤務。3人がそれぞれブルドーザ、転圧振動ローラ、ダンプトラックを管理し、残る1人が作業全体を監視する。昼と夜の2交代制で、計8人が24時間体制で管制している。 クワッドアクセル(A4CSEL)は鹿島建設が開発した世界初の自動化システムであり、既に28時間20分の連続稼働を達成している。すべての自動化重機が稼働すれば、その効果は、人員8割削減、工期イロット第3種郵便物認可 ■ダムおよび貯水池の諸元ダムの型式ダムの高さ堤頂長(ダムの長さ)堤体積(ダムの大きさ)湛水面積(貯水表面積)総貯水容量発電最大出力台形型CSGダム114.5m755.0m485万m32.26km27850万m35800kW和3年に基本計画の見直しが行われ、事業費約2230億円、工事完成は令和8(2026)年をめざし建設中である(22年11月時点の進捗率は45%程度)。1)成瀬ダムの概要 最大の特徴は、環境保全と地球温暖化防止を主眼とした、国内最大級の台形CSGダムということである。建設現場付近の岩石や砂礫、セメント、水を混合した台形型の堤体(水を堰き止める堤)造りと、工事に使用するCSGプラント(岩山から材料採取、材料破砕、均一化、CSG製造)やCSG運搬、打設工事(ダンプトラック、転圧振動ローラ、ブルドーザなど)が完全自動化で制御されていることで、工期短縮、安全管理の徹底、生産性の向上に寄与している。 堤体工事を担当している鹿島建設・前田建設工業・竹中土木JVは、常に国交省・東北地方整備局・成瀬ダム工事事務所と連携し、世界で初めての多くのICTプロセスを導入している。過酷な現場からの作業員の安全確保、またいかなる山岳地帯でもダム建設が可能になるなど、次世代ダム造りの先端技術工法を牽引している。2)ダムおよび貯水池の諸元 通常のコンクリートダムは、堤体の上流側は底盤地面に対し直角が多いが、CSG工法のダムは強度面から台形型を採用し、水圧や地▲成瀬ダム 完成予想図(全景)  (出所:成瀬ダム堤体打設工事Webサイト https://www.narusedam.jp/)▲CSGプラント 総合管理室(筆者撮影) 第1981号 令和4年11月15日(火)発行(39)▲成瀬ダム 完成予想図(断面)  (出所:国土交通省成瀬ダム工事事務所Webサイト/数値は筆者加筆)※ YouTubeには、成瀬ダム建設中のドローン映像や多くの動画が公開されている。▲重機による転圧ローラ作業(筆者撮影)が3割短縮と予想され、しかも災害リスクも大幅に縮減される。5)開かれたダム造り見学コース 成瀬ダム工事事務所は、見学・視察担当者を置き、積極的に見学会の開催や視察の受け入れ体制を整えている。特に圧巻なのは、鹿島の「KAJIMA DX LABO」で、ここでは、ダム工事の概要は勿論、最先端の施工技術などがシアター映像で学べる。最後は見学者各々にタブレットが渡され、AR(拡張現実)技術によって、完成後の姿が展望デッキから現場確認できる人気のコースである。さいごに 今回、エクスカーションに参加した女子大学生から、「頭首工とダムとの関係が良く理解できた、将来的には建設関係の職に就きたい」との言葉もあった。是非、読者諸君にも世界に誇れるCSG工法による成瀬ダムの視察を推奨したい。

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