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第3種郵便物認可 水温が熱波で上昇したことで、一部、出力を落として運転している。また水量が確保できても、加熱された原発の冷却水を流せば、さらに河川水の温度が通常5~7℃上昇し、生態系に大きな影響を与える恐れがあるが、背に腹は代えられないために「一時的に河川水の上限温度の規制を緩め」、発電量を確保している。水道への影響も大きく、既に100以上の自治体でパイプ輸送が不可能になり、給水車で飲料水を配っている。フランス北西部や南東部では、農地への給水が禁止され、農作物の収穫が激減することが予想されている。フランスのベシュ環境相は、「今までの記録にない、深刻な干ばつ被害」と説明している。3)フィンランド フィンランドでは、国内の水力発電ダムの水位が、一定以下になった場合、近隣各国への電力輸出を制限する方針を打ち出している。フィンランド南部の水力発電ダムの通年・貯水量は74%であるが、既に49%近くまで低下している。水力発電王国ノルウェー(水力発電95%)も同様に水不足による電力輸出制限を検討している。4)英国 英環境庁は全国14地区のうち、8区域が干ばつ状態にあると報告している。また英国のBBCによると、英国内では少なくとも100万人以上の市民に影響が及び、特に干ばつがひどいケント州やサセックス州では、庭への散水禁止、ホースを用いた洗車を禁止し、仮に違反した場合は1000ポンド(約16万円)の罰金が科せられることになっている。最大野党の労働党は、政府の渇水対策の不備を非難、特に英国全土の漏水が毎日、供給量の20~24%に当たることを指摘し、▲ドイツの干ばつ、ライン川の低水位(出所:iStock/AL-Travelpicture)政府の無策を追求している。農業にも深刻な影響が出ており、このままでは、ジャガイモや玉ねぎなどの野菜収穫量は50%近く減収する予測が出されている。5)オランダ ライン川の最下流で、しかも国土面積の四分の一が海面より低いオランダも、長引く干ばつ被害を受けている。あまり知られていないがオランダで生産されるジャガイモの75%は輸出されている。購入者は、世界的な多国籍企業(マクドナルドやKFCなど)で、毎年2月に収穫見積もりの80%の固定価格(1kg当たり、約9セント)で購入契約が事前に結ばれている。 しかし近年は、異常な干ばつ被害で、ジャガイモのサイズが小さく、収穫量も確保できない見込みで、多国籍企業との契約の破棄も含め交渉中であるが、当然のことながら多国籍企業は、契約破棄はありえないとしている。農家は灌漑システムの費用上乗せを要求している。自由市場では、収穫量が少ないために、既に1kg当たり30セントを超えており、農家は多国籍企業との契約を破棄し、自由市場で売りたいが、契約先企業から法外な違約金を要求される可能性 第1977号 令和4年9月20日(火)発行(33)も出てきている。6)スペイン スペインでは、干ばつが深刻化している。特に南部アンダルシア州の盆地は、砂漠と呼ばれるほど乾燥がひどく、川底は干上がっている。 イベリア半島の一部は、過去1200年間で最も乾燥しており、およそ7000年前の墓とみられる巨大な石が、湖底から出現した。山火事によるスペイン国内の消失面積は、既に平年の4倍(東京23区の4倍の面積)に達している。落雷による大規模な山火事が発生し、走行中の列車が巻き込まれ10人以上が負傷したことが報じられている。農業被害もひどく、地中海沿岸ではアーモンド、ヘーゼルナッツ、イチジク、南部ではトウモロコシ、綿花、コムギ、オリーブ、ブドウの栽培が激減している。さいごに 欧州で起こっている、過去500年で最悪の干ばつは、本年11月頃には解消される見込みであるが、これまでの「水不足による損害を埋め合わせることは不可能」であると欧州委員会は分析している。

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