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(38)第1972号 令和4年7月12日(火)発行 ▲南アルプストンネルの状況 静岡工区は8.9km(出所:同)後の最小水量は示されていない。「なにも対策をしなければ、最大毎秒2m3の減水」がすべての論議の中心となっている。毎秒2m3の出水、日量に直すと17万2800m3/日であり、トンネル工事不可能な数値である。3.JR東海によるトンネル湧水を大井川に戻す提案 リニア新幹線の建設に伴い懸案事項となっていた「大井川へ水を戻す」方策についてJR東海は、最終的に次の2案を公表(2022年4月26日)した。A案は、単純に、山梨県側で湧出した水をポンプでくみ上げ、大井川に流す。具体的には先進坑(工事準備のために最初に掘られるトンネル)が貫通するまで、不可抗力で山梨県側に流出する300~500万m3を貫通後に静岡県の大井川に「水量を戻し、埋め合わせ」する。 B案は近くにある東京電力の発電用・田代ダムから、山梨県側に流出する水量を大井川に還元する。具体的にはトンネル工事で減水する分だけ、発電用水を減らせば、工事による減水影響はない、という提案である。既にJR東海と東京電力とは協議に入っているとも伝えられている。この2案について川勝知事は6月の県議会定例会で、「どちらの方策も流域の健全なる水循環を維持すべきとする水循環基本法の基本理念に反する」と述べ「全量戻しにはならない」との見解を改めて示した。 その一方で、「全量戻しに当たらない代替策であるから、提案を退けるという必要はない」とも述べ、「具体策について検討に値する」とし、今後、県の専門部会で検討する考えを示した。4.不都合な真実……田代ダム 「トンネルの湧水、一滴たりとも県外に渡さない」と主張する川勝知事への「不都合な真実」がある、それは田代ダムである。 2019年12月の県議会で桜井勝郎県議(大井川の半分以上は桜井県議の選挙区)は次のような質問をした。「最近、知事はトンネル工事で発生する湧水を全量戻す件で、JR東海を糾弾し、関連する地域住民、企業、静岡市を絡め、一部報道機関まで、知事の言い分に乗っかって世間の関心を呼んでおります。まさしく劇場型のパフォーマンスだ」。 さらに桜井県議は、大井川の源流部にある田代ダム問題を取り上げた。田代ダムは1928年、大井川源流部の標高1380m地点に建設され、ダムに蓄えられた水は毎秒約 5m3、静岡県から山梨県へ流出している。「知事が『県民の命の水』という大井川の水を、『一滴たりとも渡さない』と言いながら、あの田代ダムから山梨県側に流れている水も、あなたの言葉を借りれば、『我々の命の水』ではないでしょうか?」。 桜井県議が質ただした内容は次の6点である。①トンネル工事により、本当に大井川の水が減るのか、②トンネル工事の湧水は、その全量がトンネル工事をする前に、大井川に流れていたのか、③県の資料によると「南アルプスからの地下水が毎秒10m3も駿河湾に流れている」とあるが、その水量の根拠は、④トンネル工事によって「毎秒2m3」の地下水が、前述の毎秒10m3から減水するのか、⑤トンネル工事により「生態系が壊滅的な打撃を受ける」と指摘するが、そう断言できるのか、⑥静岡県が設置した「中央新幹線環境保全連絡会議」は知事の賛成派ばかりで、構成が偏っているのでは――。桜井県議は各々の質問について「科学的な根拠をお示しいただきたい」と知事に答弁を求めた。 極めて正鵠を射た桜井県議の質問であったが、しかし川勝知事から明快な答弁はなされなかった。第3種郵便物認可

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